#formInput_#

#formStart#




  おにいちゃんと相棒です







わたしは先程泣いてすごくスッキリした。



ひとつだけ心に決めたこと。それは、皆さんを頼る、と言うことだ。

お一人お一人にお願いすれば、それこそ個人の作業量は無いよりは多いが、それでもかなり少なくて済む。
皆さんも有り難くそれを望んでくださっている状況にある。

この先、まだまだいらっしゃる刀剣の皆さんと和解をしていくためには、今和解している皆さんに甘えなければならない、それが私は今回はっきりとわかった。



あれから。



和泉守さんの手入れをさせていただいて、お風呂に入っていただき、次の日には和泉守さんと堀川さんのお部屋を掃除して、浄化して。
お世話係に任命された加州さんが当番をお2人分割り振りをして日常は始まった。

ご飯当番、畑当番。お掃除当番に、馬当番。

堀川さんは凄くよく働く。
のんびりでいいですよ、と声をかけても、動いていた方が楽なんです!とキラキラした笑顔を返された。

ご飯作りも私より手際が良くて、覚えも早い。もう今やこの本丸の副菜担当である。
このあいだの金平ごぼうはすごく美味しかった。また作ってもらおう。


和泉守さんはこういった家事はどうやらあまり得意ではないらしいので、主に野菜の収穫などの畑仕事を手伝って頂いていたりする。

「これ、どこに運ぶんだ?」
「わー!!和泉守さんすごいです!僕たち2人がかりでも持ち上がらなかったのに…!」
「そ、そうかぁ?まだまだ持てるぜ!?」
「わーー!!すごーーい!!」


凄く力持ちで、短刀さんたちも最初は怯えていたけれど、もう随分と懐かれている。


和泉守さんと堀川さんのお部屋を掃除したあと、政府からは預かりのお馬さんを本丸へと返すとの通知が来た。

二頭やってきたそのお馬さんは素直な子たちで、誰にでもすり寄っては美味しそうに人参や草なんかをもしゃもしゃとよく食べる。

これから出陣を繰り返していくうちに必要なお馬さんが増えるらしい。
撫でると嬉しそうに目を細める彼らのお世話は少し大変だけれど、アニマルセラピーという言葉もあるくらいだ。

現に短刀さん達や左文字さん達は、楽しそうにお馬さんのお世話を率先してやってくれている。


そんな、お二人が少しずつ慣れてきた頃合いで。


私は鍛刀部屋に居た。



「加州さん、一期さん。心の準備はよろしいですか?」

「なんであっても安定は安定だし、そんな気を使わなくて大丈夫だよ」
「博多が傷付いているのなら、この本丸で癒していきましょう。共に。さあ、主。」



そんなお二人の様子にうなづいて。私は堀川さんの時と同じように依り代を手のひらで包むように願いを込める。


本丸へと譲渡された刀は三振り。堀川国広、大和守安定。博多藤四郎。

大和守安定さんと博多藤四郎さんの状態は、正直なところ分からない。手入れも私がしたわけではなく、政府が行なってから私の元へ刀としてやって来た。
あの生理的に受け付けない方の下にいて、蔑まれ、虐められ。

せめて、少しずつでも楽しい、という思いを思い出して行ってくれるといいなぁ。
そんな甘い事を考えてしまう。


二つの刀身に二つの依り代をそっと乗せた。部屋の中はその瞬間、光で溢れた。





「大和守安定。扱いにくいけど、いい剣のつもり。」
「俺の名前は博多藤四郎!博多で見出された博多の藤四郎たい。短刀ばってん、男らしか!」


「………こんにちは、

大和守さん。博多さん。」



お二人とも、傷一つない綺麗な体で、開口一番に契約を口にした。

その事に驚き、少しだけ声を発するのすら遅れてしまった。
お二人はそんな私になんて意に介さず、目の前で膝をついて頭を下げる。それは、もう決めていたように早かった。



「貴女が、僕たちと堀川を助けてくれた事は聞いてる。…本当に、ありがとう。

貴女が僕たちをここに置いてくれるのなら、僕は君を守るよ。
だからどうか、僕たちを僕たちとして扱って欲しい。」

「お、俺、アンタが良か!!
アンタを主と呼びたか!!帳簿付けも金銭管理も得意やけん、本丸の役には立てると思うとよ!…ここに置いて欲しか!!」






「大歓迎です。いらっしゃいませ、です。お二人とも。」


願いを込めるように。縋るように。

そんな2人の様子に、ああ、まだ怖いんだなあ、と漠然と感じる。無表情で、それでも少しだけ汗ばんで話す大和守さんに、無理矢理笑いながら、泣きそうに大きな声を出す博多さん。

それはそうだ、契約したのもきっと、なにか波風が立ったら怖いからだろう。
二人の前へとずりずりと立ち上がらずに近寄り、肩を叩いて顔を上げて頂く。


2人が想像しているような、怖いことや悲しいこと。そんなことしないよ。

そう思いながら笑みを作り、
ちらり、と後ろを見やると、一期さんはうずうずとしていて、加州さんも少しだけ照れ臭そうだ。



「博多さんは一期さん、大和守さんは加州さん。それぞれにお世話係をお願いしてあります。

この本丸に慣れるまで、お手伝いをしてくださいますので、安心して聞いてください。

なにか欲しいものや、食べたいもののリクエストはすぐに言ってくださいね。
あまり豪華なものは揃えられないかもしれませんが…頑張ります。

だからそんなに緊張しないで。
今まですごくすごく大変だったんです。少しだけゆっくりしたって、バチは当たりません。

お二人とも、本当に、頑張りましたねえ。」



2人の前で座りながら、2人の手を取る。
とても冷たい。堀川さんと同じだ。


人間の手は極限まで緊張すると、こんな風に氷のように固まる。それを私は何回も見てきた。


2人の骨張った手を握れば、ぱちくり、2人はきょとんと、なにが起こっているのか分からない、といった様子だ。



「今日の夜ご飯は、ハンバーグですよ?人気メニューなので、楽しみにしていてくださいね」



あまり私がずっといても居心地が悪いだろう。

そんな2人を加州さんと一期さんに任せ、私は夜ご飯の献立を言いながら立ち上がった。




prev next

[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -