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  ばーさす和泉守 その4



「改めまして、私はこの本丸に新しく就任を致しました。審神者のさにわのときのなまえと申します。
この度は、お話をする機会を設けて下さいまして、本当にありがとうございます。和泉守兼定さん」


和泉守さんは後ろ手に縛られ、物凄い形相で私を見ていた。胡座をかき、その姿は、どこか怒っていた。
一対一。彼がそれを望んだため、部屋の中には私と和泉守さんだけだ。

三日月さんは和泉守さんとの対峙で怪我を負ったため、早急に手入れ部屋に行ってもらっている。
いつものような笑顔だったけど、ばっくりと傷からは血が出ていて、少し卒倒しそうになってしまった。
五虎退さんと加州さんは隣のお部屋で待機していただいた。穢れの酷い和泉守さんの部屋ではなく、加州さんのお部屋をお借りしての対峙を了承してくれた和泉守さんには大感謝だ。

和泉守さんのお部屋は足を踏み入れただけで、とても寒気がして、とても嫌な気持ちが溢れる。
浄化を行うまでは、あそこに居るのは5分も耐えられないだろう。


「和泉守さん、何故、そこまで審神者がお嫌いなんでしょうか」


私は、率直な疑問をぶつける。
正座をして、背筋をしゃんとして。そうして和泉守さんをきちんと見やる。
前任者の行いを知っている私は、前任者を憎む理由は知っていた。仲の良かった堀川さんも刀解され、非道の限りを尽くされたから。

それは分かる。一期さんも岩融さんも、私に手入れをさせてくれない理由は、前任者に対する恨みが大きかった。

でも、やはりいくら考えても和泉守さんはそれとは少しだけ違う。


「あなたは、前任者ではなく、審神者そのものを恨んでいるように感じるのです」


彼は、審神者そのものが嫌いなように感じる。
今まで和解した彼らは、前任者が嫌いで、彼が審神者だったから私を疑っていた。
…でも、なぜか和泉守さんは審神者全てを嫌っていた。


「……てめぇにそれを言って、何になる?」


漸く口を開いた和泉守さんは、少しの沈黙の後吐き捨てるようにそう言った。
低い低い声。それは怒気を一層深める。


「助けたい、なんて大それたことは言いません。でも、怒りや憎しみは疲れます。それがずっと続くのは、辛いと思うんです。

解決ができないかもしれません。でも、教えて欲しい。何故そんなに憎むのか。」


正直を言えばそりゃあわたしだって逃げ出したい。
和泉守さんはそう思わせるほどに怖い。恐ろしい。
きっと彼が本気を出せばあんな拘束なんて容易く直ぐに解けるんだろう。そうしたら私の首の骨なんて彼の手にかかればぽきっと小枝を折るように折られてしまう。

…でも、逃げない。絶対に。

それが何のためなのか、私は未だわかっていない。衝動的と言ったらそうだ。
でもとにかく、逃げないと決めていた。


「教えてください、和泉守さん。」


彼の目を見る。
私の願望かもしれない。だけど少しだけ、揺らいだ気がした。










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