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  ばーさす和泉守 その3




次郎太刀さんは、あれから少しだけお酒を追加で飲み、またね〜〜とひらひら手を振って去っていった。
なんだか、逆に励まされてしまった。

そうだ。わたしは落ち込んでいる暇なんてない。皆さんと和解して、少しでも早く幸せになって貰わなければならない。

…ウジウジしている時間があるのなら、その分行動をしないと、だよね。


改めて整理をしよう。

和泉守兼定さん。審神者嫌いが激しく、最初から私を殺そうとしていた。
会ったのは3回。最初と、手入れの謝罪の時とこの間。

でも実は何故だか違和感が拭えないでいた。
最初の方は、一期さんたちと同じく前任者からのトラウマで私を信じられないようだった。

…でも、最初は面談は受け入れてくれていた。いつか、面談をしてやっても良いとこんのすけさんを通して言っていた。
五虎退さんの手入れをした後もそうだ。酷く怒り、殺すとまで言っていたけれど、それは私が約束を破ったから。それに対しての怒りだけで、この間みたいに間髪入れずに斬りかかっては来なかった。


でも突然、突然だ。面会すらも謝絶し、私を殺すことを目的としている。

堀川国広

彼の怒りの沸点はここだ。それは確信している。でも、会いたいものではないのだろうか。
刀剣男士は性格の違いはない。本霊からの分身体が審神者の力によって降ろされる。
ならば、喜ぶべきではないのだろうか。私なら居なくなってしまった大切な人とまた出会うことができるのなら、それは嬉しいことだと思う。

堀川国広さんを顕現することが、そんなに怒ることだろうか。
それとも、…2回目と3回目の間に、彼の身に、何かが起きたのか。

やはり、考えても想像の域を出ない。加州さんたちの帰りを待つしかない。
でも、次郎太刀さんのおかげで頭は冷え、和泉守さんとの対峙の時に聞くことの整理がついた。

次郎太刀さんに心の中でお礼を言いつつ、私はおにぎりがたくさん乗ったトレーを皆さんのいる私の自室へと運ぶ。


兎に角ごはん、それからだ。



「うわー!!すげー大量のおにぎり!昼飯かー?うまそー!!」

「お運びするんですか?僕たちが運びます!」

タオルで顔をぬぐいながらやって来たのは畑部隊の愛染さんと平野さんだった。

遠く後ろからは粟田口の皆さんと来派の皆さんが続いてやって来ていた。

丁度いいタイミングだったらしい。


「あっつあつの豚汁もお作り致しましたよ。皆さん手を洗って、ゆっくりしていて下さい。直ぐに運びます…の、で


愛染さん、平野さん。やっぱりお願いしてもよろしいですか?」

「…あるじ?」


愛染さんにそっとトレーを渡す。

少し重いので、平野さんと2人で待ってください。と付け加えた後に、2人の頭をそっと撫でた。2人はぽかん、とした表情だが何故だかわたしはすごくのんびりとした気持ちである。

少し猫っ毛の愛染さんの髪に、平野さんのサラサラな髪。2人とも少しだけ汗をかいていて、畑仕事頑張ってくれたんだなあ、と微笑ましくなれるくらいには心に余裕がある。

2人を撫でた後、その2人がやってきた方向とは逆に、歩みを進める。三角巾を取りながら。



やっとわたしの出番のようだ。




「主、ごめん、」

「いえいえ、お怪我はありませんか?お守り、お役に立ちましたでしょうか」

「俺は大丈夫。かすり傷だよ。三日月もお守りのおかげでなんとかね。後で手入れしてやって。
それと、和泉守、今も興奮はしてるけど、やっぱり主に話をしてもらった方がいいみたい。
三日月と俺でなんとか話をつけて、一応少しの間拘束もさせてもらってる。
…今、いいかな」

「勿論です。お待ちしておりました。本当にありがとう、お疲れ様です。加州さん」


加州さんは少し疲れたようすで、その頬にそっと手を当てた。加州さんはそれに少し驚いたみたいだったけれど、ふう、と一息ついた後にその手に自分の手を重ねてわたしの手を握る。
おつかれさま。そんな気持ちを込める。

和解していない和泉守さんと話せるのは、きっとこれきりな気がする。これで全てが決まる。もう後にも先にも今だけだ。
加州さんとともに、歩みを始める。


…終わったら、みんなで豚汁を食べるのだ。勿論、和泉守さんも一緒に。






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