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  ばーさす和泉守 その2





和泉守兼定。
彼の審神者嫌いは筋金入り。

そんなこと、ずっと見てきた俺が一番知っている。俺だけじゃ無くてもそれはこの本丸の中でも有名で、正直こんなことでもなきゃあんまり関わり合いたくなかった。

本丸の仲間。いつから道が違えてしまったのか。それがいつからだったかももう思い出すことは難しい。
和泉守と堀川の自室だった部屋の襖を、問答無用で開ける。
ぶわぁ、と、寒気を感じるのは、俺たちが主によって浄化され、穢れを取り込む事を身体が本能で拒否しているからだった。

目の前には俺たちが来る事を知っていたかのような和泉守が正面に胡座を欠き、刀を抱えて待っていた。

鋭い眼光で俺たちを睨みつけ、俺たちからも自然と表情が消える。
そんな一触即発の状況に和泉守は何故かふ、と嘲笑った。その笑みは、あの頃の和泉守のものではない。からっとした太陽のように笑う彼は、今は何処かにいってしまっていた。


「よぉ、まさかお前らが来るとはな。
あの審神者は俺に臆して安全な場所で高みの見物か?いい御身分だ。

…反吐が出るぜ」

「ちゃんと話すのなんていつぶりだろうね。久しぶり、和泉守」

「お前らに手出しする気はねェよ。あの審神者側に付いたからって、俺らは同じ刀剣男士だ。」


ま、座れ。と言われるがままに、俺たちは目の前に座る。刀は帯刀したままだ。

…だって、手出しする気はないって言っておきながら刀は全く離す気ないんだもん。

座ってからは沈黙が続く。
気まずい。正直なところ、思ってたより和泉守が冷静だった。
いつも通りに斬りかかってきたら俺と三日月、二人掛かりで返討ちにして、縛ってでも主の元に連れて行こうとしていたから、こんなちゃんとした話し合いが出来るだなんて思わなかった。

予想外の反応に言葉を選ぶ。
主の元へ話しにきて欲しい。その際は絶対に斬りかからないこと。その状況を作ることが、俺たちの勝利条件だ。

でも、どうしたって主を殺したい和泉守にそれをするメリットがない。相手が斬りかかって来ないのなら、乱暴な方法はこちらからは使うことが出来ない。挑発でもするか?…そんなことしたら、火に油。和解すら遠のいてしまう。

色々な考えが俺の頭の中を巡っている最中、
その沈黙を破ったのは、俺でも三日月でも和泉守でもなく、五虎退だった。


「…い、和泉守さん。僕、和泉守さんにお願いがあります。…主さまと、お話をしては頂けないでしょうか…?」


五虎退は怯えながらも、和泉守と目を合わせ必死に訴える。…きっと。すごく怖いだろうに。
俺は黙って五虎退に任せることにした。


「あ、あるじさまは、僕をたすけてくれました。
ぼく、すごくこわくて、暗くて、痛かったんですけど、ある日突然治って、兄弟たちとも遊べるようになったんです。

和泉守さんも、い、痛い所があるならきっと、な、治してもらえます!
辛いことが今まで沢山あって、信じられないかもしれませんが、ど、どうか、信じて欲しいです!

和泉守さんと仲良しの、ほ、堀川さんだって、あるじさまがきっと、会わせてくれ…っ!!」


ーーダンッ!!

五虎退の話を黙って聞いていた和泉守は、堀川の名前が出た瞬間、思いっきり畳を殴った。

鈍い音が部屋に響く。和泉守がゆっくりと拳をあげると、パラパラと畳の破片が辺りを汚した。仲間にするような目付きじゃない。
その様子を見た五虎退は、ひっ、と小さく声を上げ、怯えて震える。


「…俺は、あの審神者側に付く気は一切無い。国広に会う気も、無い。
審神者と話し合う気もなければ、お前らと幸せな生活をする気もない。

お前らは無駄足だったんだ。審神者は殺す。あの審神者がどうこうじゃねえ。審神者が憎いんだ。」


…だから、放っておいてくれ。

そう続くはずの言葉を和泉守は飲み込んで、手についたままの畳の破片を払う。


「なぁ、和泉守よ。
何がそんなにお前を苛立たせる?何を嫌がって癇癪を起こしているのだ?」


ずっと黙ったままだった三日月は、漸く口を開いた。


「俺には、お前のそれが一時の感情であるようには思えんのだ。
…お前は、何に困っている?」


穏やかな笑みを浮かべながら和泉守にした質問はとても確信を得ているかのようだ。

その証拠に、和泉守は目を見開き、顔を歪める。その表情は、取り乱しているような、何故、といったような。

はくはくと口を開けて何かを反論しようとしている。
それが出来ないのは、きっと何も言い返すことができないから。


「…な、にを、知ったような事を言いやがる…っ!!もういい!!出て行け!!こっちが下手に出てりゃァいい気になりやがって…っ!!

それ以上続けるのなら、お前らなんか仲間じゃねェ!!この場で斬り殺すぞ!!」


突然、突然だった。
和泉守はなにも言い返せない代わりに、その抱えていた刀身を抜刀して声を荒げた。
酷く動揺していて、油汗も流れているようだ。

俺は怯える五虎退を自分の背にやり、同じく抜刀しようと刀に手をかける。それを制止したのは、三日月だ。
座ったまま、刀にも手を掛けず、のんびりといつもの口調で、


「…お前に何か悩みがあり、困っていることがあるのなら、我が主は必ずそれを取り除くことができる。」

「………っ!!!
五月蝿ェ五月蝿ェ五月蝿ェ五月蝿ェ!!悩み、困っている事!?そんなもの…っ!!」

「我らには話すことが出来るのならば、もうとっくに話しているだろう?
このじじいの顔を立て、一回だけ我が主にそれを告げてみないか?」



三日月はその表情を崩さない。
和泉守は、言葉を詰まらせた。





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