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  加州清光の提案



さあ、どうしよう。
鶴丸さんや他の方々の許可を得たのは良いものの、和泉守兼定さんと話し合いをしなければ堀川さん達をこの本丸に招き入れることは出来なくなってしまった。

ふう、と少し息を吐いて、正座していて少し痺れた足を伸ばす。いつもはあまり痺れることなんてないのに、緊張してやけに力が入ったせいだろうか。ぴりぴりと痺れる足を摩る。
まだこの広い大広間で声を発する刀剣はいない。否、それぞれ思いがあるのだろう。

「加州さん、守ってくださり、ありがとうございます」

沈黙を破り、隣で胡座をかき同じく一息ついていた加州さんに声をかけた。

…そう、加州さんがいなければ、私はあの場で斬り殺されていた。呆気なく、首を切られてわたしの人生は終わっていた。
今、わたしが死んでしまえば、浄化した皆さんと浄化出来ていない皆さんとで対立してしまう事は安易に想像ができる。
彼らは、これまでに足してわたしの死という枷を嵌められることになる。
それこそ最悪な結末じゃないか。

加州さんも少し緊張していたのか、冷や汗のかかれた額を拭うように髪をかきあげ、わたしを見やる。

「…どーいたしまして、で、主。どーすんの?俺、和泉守だけはこっち側に来るとは思えないんだけど」

「うーん、どうしましょうねえ…私一人で行ったら殺されちゃいそうな雰囲気でしたし…

みなさん、何かいい案がある方はいらっしゃいますか?知恵をお貸し頂ければ嬉しいです」


くるり。後ろに控えていたみなさんに向き直る。どうやらみなさんもどっと疲れたらしい。
足を各々崩し、一息ついていた。
お茶のセットでも持って来れば息抜きの温かいお茶を振る舞えたものを。申し訳ない。

私の問いかけにうーんと唸る皆さん。やはり和泉守さんはすごく審神者嫌いらしい。恐る恐る手を挙げたのは、意外なことに五虎退さんだった。


「あ、主さまだけ、いつも大変な思いをされるのは…その、だ、ダメだと思うので…
僕たちが行って、主さまと話し合うよう説得するのは…その、どうでしょう?

元々は同じ本丸の仲間、なんですし、同じ刀剣男士なら、和泉守さんもちょっとは話を聞いてくれるんじゃ……ご、ごめんなさいっ!」

「いや…それ、いい作戦かもしれんぞ。和泉守は恐らく、主を見ただけで警戒して、こちらの話を聞くどころじゃない。だったら俺っち達で落ち着かせてから主の元へ連れて行けばいいんじゃないか?」


五虎退さんはおずおずと怯えながら言葉を紡ぐ。薬研さんがそれもそうだ。と同調する。
…確かに、私が行って話すのでは彼を逆撫でするようなだけな気がする。
ただ。みなさんを危険な目に合わせるのはなあ…

だって彼はあまりに好戦的だった。練度が低い短刀さんたちは行かせないにしても、危険なのが目に見えてわかる。

どうしよう、行ってもらうべきなんだろうか。
せっかく、痛い思いは終わったというのに。

わたしのわがままで受け入れてもらわなければいけなくなったことを、皆さんに片付けてもらうのか?

そんなの都合が良すぎやしないだろうか。

怪我をしたら?ひどいことを言われたら?また、傷付いたら?

頭の中でそんなことがぐるぐる回る。


「…ねえ、三日月。お願いしちゃダメかな」

「あいわかった、では報酬に主手製の茶漬けが食いたいなあ」
「あ、主さまに、一番最初に助けてもらったのはぼくです!ぼくも、主さまの役に立ちたいです!僕も、い、行きます!」

「うん、みんなでは警戒されちゃうから、短刀から1人、打刀から1人、太刀から1人でいーんじゃない?
あ、俺も行くから。
同じ新撰組の刀だったし。長谷部と一期は俺らが和泉守と会ってる間、主の近くにいて守ってよ。

逆上して主斬りに行かれでもしたら守る奴が居ないとダメでしょ?
だから手を上げないで、ダメだから。打刀からは俺、太刀からは三日月だから。」

「か、かしゅうさん?」


わたしが悩んでいる間に、加州さんはポンポンと話を進めていく。ご指名を受けなかった長谷部さんと一期さんは何か言いたげだったけど、加州さんの声に手を渋々と下げ、私はそれを見てぽかんと口を開けることしかできなかった。

加州さんはそんな私を知ってか、呆れたように溜息をつく。


「…ね、主。俺らが危険な目に〜とか考えてるんだろうけど、そうやって1人で悩んで決めないでよね。

俺らは主に助けられた。だから助けたい。だから和泉守を説得して来る。
それに、なんか文句ある?」

あ、でも、戦うことになって怪我したら手入れしてよね。


そう付け加える加州さん。皆さんも、後ろでうんうんと頷いていて。
鼻の奥がツンとする。
これはきっと、嬉し涙ってやつだ。



「みなさん、ほんとうに、ありがとうございます…!」



今日は美味しいものをいっぱい作ろう。

それで、みんなで美味しいねって言いながら、お腹いっぱいご飯を食べて、熱めのお風呂にゆっくり浸かってたっぷり寝よう。


きっと、明日から忙しくなる。

そんな予感が過った。




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