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  全員との対峙です





この本丸に大広間は二つある。

いつもご飯を食べている大広間と、刀剣男士皆さんの手合わせ場の横。元々そこでは主に出陣の打ち合わせや、全体の会議なんかをしていたらしい。

その大広間は淀みが深く、付着した血は真新しい。本丸浄化の際に多くの淀みや血は浄化されたものの、その真新しい血液は、まだ手入れしていない刀剣男士のみなさんから流れ出ているものであった。

私は、その大広間で正座をしていた。
割烹着と三角巾を脱ぎ、きちんとした正装で彼らを待っていた。

私の後ろには、和解した皆さんが座っていて、私の横にはまだ顕現させていない三振の刀。しん、と静かになる大広間には音がない。

こんのすけさんが話し合いの場を設けることを向こう側の刀剣男士の皆さんに通達してくださり、今日という日に会うことになっている。

本来なら審神者が座るべき上座には座らないこと。
あくまで対等に、横並びで座ることを約束し、私はその通りにして彼らを待つ。




「…待たせたようだな。」

ギギィ、と音を立てながら古びた大広間の扉が開いた。
鶴丸国永さんを筆頭に、まだ和解していない刀剣男士の皆さんがそれに続いて入ってくる。
大小様々な怪我を負った彼らは、重症ではないまでも歩くたびにぽたぽたと血で床を濡らす。それを見た私の手入れをしたい欲を、ぐっと下唇を噛んで我慢する。

距離をとって私の正面に座る方々。その表情は眉間に深い皺を刻んでいたり、怯えたように見たり。


「俺らに話があるんだろう?まずその前に、随分と同胞を絆したようだ。賞賛を送ろう。」


ぱちぱち。鶴丸国永さんは軽く拍手を送る。その表情はなんだか小馬鹿にしているような、そんな印象を受ける。


「…さて、ここにいる者たちがこの本丸にいる刀剣男士全てだ。まず俺は鶴丸国永。まぁよろしく頼む」


鶴丸国永さんはちらりと後ろの刀剣男士たちに目を向けると、彼らは各々口を開いた。


「…燭台切、光忠、だよ」

「石切丸と申します。どうぞよろしく」

「歌仙兼定だ。よろしくするつもりはないがね。」

「………や、山姥切、国広。こっちを見るな!!!!!」

「アタシ、次郎太刀!んでこっちのでっかいのが兄貴の太郎太刀ね!」
「………」

「……獅子王」

「蜻蛉切、それが名だ」

「御手杵」

「同田貫正国、やっぱお前、随分と平和ボケしてやがるじゃねえか。」

「拙僧の名は山伏国広、貴様を今すぐ殺してやりたいが、それは出来ぬようだなあ。残念だ。」
「陸奥守吉行じゃ、ほいたら拳銃でばぁん!したらええやいかぁ?」


山伏国広さんと陸奥守吉行さんは軽口を叩きながらも私を目掛けて自分の武器をちらつかせる。笑顔ではあるが、その笑顔がなんだかとても怖くて寒気に襲われた。
その動作に後ろの方々の殺気が多くなったけど、知らないふりをしておこう。

黙ったままの刀剣男士の皆さんは刀帳を確認して見た限り、和泉守兼定さんと、日本号さん、そして髭切さん。
彼らは決して私の方を見ずに固く口を閉ざしたままだ。

決して名前を教えてくれても口上を口にしない彼らは、私を一切受け入れていないことがわかった。
さあ、それで、要件は?と鶴丸国永さんは私に問う。私は、平静を装いながら三振の刀を前に差し出した。




「この三振を顕現する事をお許し頂きたいのです。大和守安定、博多藤四郎、

…堀川国広。他のブラック本丸より譲り受けた刀剣男士です。」



ーーーガキィ!!

突然、重い、刀と刀がぶつかる音が響く。
和泉守兼定さんが、私に思いっきり切り掛かり、それを自分の刀で受け止めたのは加州さんだ。
黙ったままだった和泉守さんの顔はとても恐ろしい顔をしていて、それに、とても怒っていた。


「てめぇ…よりにもよって、国広だと…!?
巫山戯るのも大概にしろ…っ!!やはり今この場で殺してやるよ!!」


大声で怒鳴りながら刀を振り下ろしたままの彼はそのまま加州さんごと押し切ろうと力任せに刀を振るう。加州さんは加州さんで、どいてやるものか、と言わんばかりの形相だ。


「そんなに、堀川国広さんが来るのが嫌ですか…?何故、ですか。」
「てめぇにそれを教える義理はねぇ!!加州!!そこを退け!!そいつ今この場で斬り殺す!!」

「自分の主、殺されそーなのに退く馬鹿いるわけない…でしょっ!!」


加州さんも押し返して、刀と刀の激しいぶつかり合いが続き、一触即発の雰囲気だ。向こうの刀剣男士の皆さんは我関せず。陸奥守さんと山伏さんに至ってはやれやれーっ!と囃し立てる始末。
…なんだ、これ。



本丸の仲間なんじゃないのか。仲間が戦っているのに、何故みんな止めようとしないんだ。何故。



ぱん、手のひらと手のひらを叩く音が聞こえた。


「…と。言うわけだ審神者よ。俺たちは別に顕現してもらって構わない。が、和泉守を説得できたらの話だ。
これにて話し合いの場を終わらせて頂く。俺たちは帰る。和泉守、その辺にしておけ」


鶴丸国永さんが立ち上がる。

それに習ってか皆さんバラバラに立ち上がって、じゃーねー、と手を振る男士もいれば、もっと見たかったのぅ、と残念がる男士。私のことなんか気にしないような素振りの男士に、怯える男士。
反応は様々ながらも、去る彼らを包むのはやはり大きな真っ黒い何かだ。

和泉守さんはちっ、と舌打ちをすると、刀を仕舞い込み私を睨んだ。



「絶対ェ、許さねぇからな。俺は。」

その言葉には、怒りや、憎しみ、沢山の思いが込められていたように思えた。





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