#formInput_#

#formStart#




  さにわになりました2




このこんのすけさんは、以前の審神者さんから酷い虐待にあっていたらしい。

以前の審神者さんが摘発された時に見つかったこんのすけさん。真っ暗な厨の小さな小さな人が入れるくらいの地下室に、縄でぐるぐる巻きにされて、声も出せないようにお札を貼られて閉じ込められていたのを発見され、一度政府で修理を受け、今この場に立っている。と担当さんは言っていた。
そんな仕打ちを受けて尚、審神者のサポート役という自分の役目を全うしようとするこの小さな狐さんは、なんて恰好良いんだろうと。わたしは話を聞いた時に彼を小さく尊敬していた。

「こんのすけさん。もし良ければ、私に抱かれて本丸へと向かいませんか?」

「えっ!…そ、そのような恐れ多いこと…」

「穢れが酷いこの場所の地面は、小さなあなたには辛いでしょう?幸い、どうやらわたしは浄化の力は強いようです。触れていれば、少しは楽になるのではないでしょうか?」

「そ、それはそうなのですが、こんのすけめといえど体重はございます。さにわのときのなまえ様にこんのすけを持たせるなど…」


うふふよいしょー、と、アワアワしているこんのすけさんを問答無用で抱っこする。嫌がっているようなら止めようと思ったが、どうやらそうでもないらしいので遠慮はしない。このくらいで体重を気にするだなんて乙女さんだろうか。私重いからいいよぉ!なんて少女漫画ですら最近見ない展開だ。

さにわさまっ!と焦っていたこんのすけさんも、わたしが降ろす気は無いと分かったのか落ち着いたように身を任せた。
うんうんいいことだ。初対面の女に抱かれるなんて嫌だろうけど我慢して頂きたい。

こんのすけさんの頭をナデナデしつつ歩みを進めると見えてきたのはとんでもなくおっまえんちーおっばけやーしきー!と近所の少年に言われても仕方がないような出で立ちのボロボロな日本家屋だった。禍々しい、真っ黒い何かが家全体を覆っている。鼻を掠める匂いにはなにか良くないものも混じっているような気さえする。
樹木は枯れ、花も雑草も生えないこの地は、本当に神様が住んでいるのだろうか。



「さて、こんのすけさん。なんだかお眠りになりそうなところ申し訳ないのですが、わたしはどちらに向かえばよろしいのでしょう?

目の前はたしかにわたしが想像していたよりお化け屋敷なのですが…こちらは入っても?」

「ッハ!し、しつれい致しました!さにわのときのなまえ様の霊力があまりにも心地良く…
こちらが、審神者様の受け持って頂く本丸の母屋になります。刀剣男士様方は本日審神者様が着任されるのをご存知で、広間にてお集まりとのことですのでそちらでご挨拶をお願い致します!
本丸自体、前任者の穢れがまだ残っているために、未だにこのような有り様ではございますが、さにわのときのなまえ様がこれから生活をしていくにつれて浄化されていく、とのことでございます!」


だから諦めないでね?辞めないでね?と目で訴えるこんのすけさんの頭を再度撫でる。
なるほど、担当さんが言っていたのはこういうことか。

涙ながらに担当さんが教えてくれたのを思い出す。
基本的にブラック本丸化して穢れた本丸は、政府が浄化してから引き継ぎの審神者に譲渡するのが普通らしい。でも今回のわたしの引き継ぐ本丸は、前任者の霊力が高かったために浄化しきれない、と匙を投げられ解体寸前となった本丸である。と。だが刀剣男士の練度も高く、解体するにはもったいないんだ。と。ただ、なまじ練度が高いせいで手入れを受けてもらえない。八方塞がり。
そこに、わたしを見つけた政府の役人が、Sランク浄化ならなんとかなるんじゃね?とこの本丸に放り投げた。と。

…果たしてわたしに本当にそんな力があるのかは甚だ疑問ではあるが、やってみないことには始まらない。意を決して、こんのすけさんの案内でお家に入っていくと禍々しさと血生臭さがどんどんと増していく。
前任者はどんな仕打ちをしていたんだろうか。とにかくお掃除がしたい。床にはべったりと誰のか分からない血が染み込み、変色している。壁も何かの傷跡でボロボロだ。障子も破けていないところがない。…政府の方は、本当にここに立ち入ったのかなぁ。


prev next

[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -