#formInput_#

#formStart#




  目が覚めました




ーぱちり。

目を開けば眩しく、チカチカとする。
…わたしは、どうなったんだろう?
暖かい、柔らかい。わたしはどこかに横になっているようだ。布団だろうか?それにしても、窓から差し込む光に目が慣れない。
手を誰かが握っている。ぼんやりとしか見えないが、誰だろう。耳も遠く、言葉をうまく聞き取ることができない。
それでも、手を握っている彼が泣いてるのがわかった。


「…!……っ!!…!」


なかないで、どうしたの?


手をあげるのにも一苦労だ。
固まる身体を無理やり動かし、泣いている子の目元に手をやり涙を拭う。声を発しようにも乾いて声が出ない。八方塞がりだ。
泣いてる子がいる。それは嫌だ。訳も分からないこの状況だが、それだけは分かった。
頬に手をやる。涙が止まらないらしいその子は、そっと。わたしの手を包む。

「…じ、…!…ある、じ…!!」


何回か瞬きをして、数分経てば耳も目も慣れてきた。目の前に居たのは、泣いている蛍丸さんと、愛染さんだ。私が頬に手を当てたのは蛍丸さんだったらしい。
そうだ、五虎退さんを見つけて、手入れして、手入れさせてもらえるよう頼みに行って、重傷の子を集めて手入れをして。

…ああ、この子達は、あのひどい怪我をしていた。


「よ、かった、いたいところ、もう、ないで、すか?」

「…っ、

あるじ、あるじ、あるじぃぃ…っ!!」
「ありがとう、ありがとうっ!!蛍も国行も、俺も直してくれて、ありがとう…っ!!」


思っていた以上に掠れた声。彼らに届いただろうか。…更に泣いてしまったから、きっと届いたんだろう。意識が段々とはっきりして来て、記憶も戻って来た。ああそうだ。
彼らを見れば、あんなに沢山あった傷はもう無い。手入れはうまく出来たようだ。
起き上がろうと体に力を入れれば、誰かが背中を支えてくれた。

ゆっくりとした動作で振り向くと、眼鏡の彼。明石国行さんだ。彼は弟たちの前だからか、歯を食いしばり涙を堪えていた。…その姿が少し面白くて、ふふっ、と堪えきれず笑ってしまう。
泣けるようになったのなら、良かった。


「…笑う元気があるんやったら何よりや、…アンタには、助けてもろぉた。おおきになぁ」

明石さんの手助けを借りながら起き上がると、明石さんはそのまま私の前で礼をした。
顔を上げて、息を吸い込み、深呼吸をしている。
先ほどのちょっと面白い顔とは打って変わって真面目な目で私を見る。


「…どうも、すいまっせん。明石国行言います。どうぞ、よろしゅう。まっ、お手柔らかにな?」

ポカン。と、わたしは呆気にとられた。
まさか、あんなに人間を憎んでいた彼が、こんなに早く契約してくれるとは思わなかったからだ。


「あー!!国行ずりぃい〜っ!!
オレは愛染国俊! オレには愛染明王の加護が付いてるんだぜ…っ!!」
「阿蘇神社にあった蛍丸でーす。じゃーん。真打登場ってね。…よろしく、主。助けてくれて、ありがとう。」

次いで愛染国俊さんと蛍丸さんは礼をする明石国行さんを押し退け私の腰に手を回し、抱き着く形で口上を口にした。
ニカっと真っ白い歯を見せながら明るく元気に笑う愛染国俊さんに、鼻と目を赤くしながら悪戯っ子の笑みを浮かべる蛍丸さん。そしてピンクの桜の花がどこからともなくやってくる。
…なんだろう、うれしい。ぽかぽかと心があったかくなるのを感じた。そうか、こんなに可愛く笑う子達だったのか。あの傷だらけの姿からは想像できない。全然知らなかった。


「明石国行さん、愛染国俊さん、蛍丸さん。おはようございます。痛いところは、もうないですか?大丈夫ですか?…それでは、改めて。
これからよろしくお願いしま「あーーーーー!!!らいはのみんな、ずるいです!!!!」

…す?」

ホワホワとした気持ちで彼らの頭を撫でると、気持ちよさそうに2人は目を細める。
その瞬間。挨拶を言い切る前にぽすん、と膝の上になにかが乗ってきた。陽だまりの匂いがするそのなにかは、とても柔らかい。
小さな体を私に寄せて、抱き着く。その勢いでまた後ろに倒れそうになるのを、また明石国行さんが止めてくれた。
にっこり。笑う白銀の髪の彼は、岩融さんと喧嘩しながらも手入れした彼だ。



「ぼくは、今剣! よしつねこうのまもりがたななんですよ! どうだ、すごいでしょう!

ぼくは、あなたのことをあるじさまとよんでもいいですか…?」


先ほどの勢いは何処へやら。きゅっとわたしの胸に顔を埋める彼の体は、すこし震えていた。
勿論。そんな意味を込めて、彼を抱き締め返す。わたしが口を開く前に、もうひらひらと桜の花びらが舞っていた。


「みかづきの、いうとおりでした…!あなたは、とてもあたたかいかたなんですね!ぼく、あなたのことをあるじさまとよびます!

あなたがいやだといっても!ぼくのあるじさまは、あるじさまだけです!!あるじさま、あるじさま!!」

「がははは!!!
今剣よ、審神者殿は病み上がりだ。その辺にしておけ?」


頭上から声が聞こえる。あの、岩融さんがひょいっと今剣さんを片手で摘んで、わたしの膝から下ろした。
あー!いわとおしー!!ぼくはまだあるじさまにまだふれたばかりです!!はなしてくださいーー!!
と今剣さんはご不満そうだ。
岩融さんは私を見ると、今剣さんを解放してザッと跪く。


「此度の今剣の手入れ、誠に感謝致す!!疑った事、申し訳なかった!審神者殿は路を誤る所だった俺を諭し、仲間を救ってくれた!

俺は岩融、武蔵坊弁慶の薙刀よ!これから俺は審神者殿を主、と呼ばせて頂こう!!」


真面目にお礼を言って、その後に豪快に笑う彼は、あの言い合いの時のように冷たい目はもうしていなかった。良かった。本当に。
なんだ、そんな明るいお日様のような笑顔が出来るんじゃないか。


「今剣さん、岩融さんですね。おはようございます、審神者です。今剣さん、勿論わたしのことはお好きに呼んでいただいて構いません。岩融さん、岩融さんあってこそ、今剣さんを救うことが出来ました。感謝致します。」

へらり、そう我ながら情けない気の抜けた笑みを見せながら岩融と今剣を見た。その瞬間。ぶわぁ。桜が舞う。そろそろ部屋全面に桜が敷き詰められてしまった。
片付け大変そうだけど、とても幸せそうに笑う2人がいるからそれだけで良しとしよう。




「…次、僕らだよね。皆、どいてよ」
「愛染、蛍丸、明石。貴方達は審神者様が寝ている間ずっと触れていたでしょう。僕らは掃除という仕事をしていたんです。譲りなさい。」
「…すみません。これもまた、我等と審神者様の和睦への道のため…」

左文字三兄弟はいつのまに部屋に入ったのだろうか。
泣く来派をべりっと引き剥がして、隣にさも当然かのように座る。明石さんに代わりわたしを支える江雪左文字さんに、わたしにもたれかかる宗三左文字さん。そして手を握る小夜左文字さん。
小夜様左文字さんの顔を確認する。殴打痕が綺麗に消えていた。


「……宗三左文字と言います。貴方も、天下人の象徴を侍らせたいのですか……?」
「……江雪左文字と申します。戦いが、この世から消える日はあるのでしょうか……?」
「僕は小夜左文字。あなたは……誰かに復讐を望むのか……?」


3人連続の口上に、すこしびっくりする。だって、あんなに人間を憎んでいた刀達が突然どうしたのか。なにか悪いものでも食べたのではないか。
悪戯で契約する程、彼等はきっと馬鹿じゃない。ということは本気で契約しに掛かっているという事だ。…ええい、ままよ。


「天下人、という方がどなたなのか存じませんが、侍らせたいという趣向はあまりないかもしれません。宗三左文字さん。
戦いが消える日はきっとあります。そう考えないと、やっていけないんじゃないでしょうか?江雪左文字さん。
復讐はあまり望んでません。それより小夜さんが美味しくご飯を食べてくれた方が、わたしは嬉しいです。

…皆さん、元気になって本当に良かった。痛いところは、もうありませんか??お腹は空いていますか?随分、寝ていたようです。ごめんなさい。そうだ、わたし、ご飯、作りましょうか」


左文字兄弟それぞれに声を掛ける。宗三左文字さんはきょとんとしていて、江雪左文字さんはぱちくり。小夜さんはぽーっと頬を染めて。三人一気に桜が舞う。部屋はもう桜で溢れていた。

そういえば、彼等はご飯を食べていないに違いない。
わたしに持たれている宗三左文字さんにごめんなさいね、と一言入れどいてもらうと、よいしょ、と立ち上がろうと足に力を入れる。
その瞬間。Gでもこの場所は掛かってるんだろうかと思うほど強く、三方向から力が加わった。


「…主さんとの食事はそりゃあもう、ぜひに頂きたいとこなんやけど、それは、主がちゃぁんと元気になってからにしよかぁ!?」
「全く、俺らの主は大分無茶をする性格だなぁ!!腹が減ったのなら暫し待たれよ!」
「……療養、それもまた、快方になる為の…一歩です…」

三人のお兄ちゃんに布団に鮮やかに寝かされれば、動く術無し。あまり話してなくて気付かなかったけど、神様というのは心配性の方が多いらしい。確かに身体はまだ怠かったし、実の所まだちょっとだけ眠かったりした。
なら、お言葉に甘えて、と意識をゆっくり落として行く。

ああ、これが夢じゃなければいいなあ。そんなことを思いながら、目を瞑った。



____________


「…眠りましたね」
「宗三兄様。主は、ちゃんと起きるよね…?」
「安心してくださいお小夜。これだけの人数が一気に契約したんです。少し霊力を消耗したんでしょう。寝ればすぐに治りますよ。」


「いわとおしっいわとおしーっ!!
あるじさま、あるじさまはやっぱりとってもあたたかいかたですねっ!!ぼく、だきしめてもらいましたよっ!」
「ハッハッハッ!それは良かったなぁ今剣!!俺も今度主を抱かせてもらうとするか!」
「むー、いわとおしがあるじさまをだきしめたら、あるじさんつぶれちゃいますよぅ…」


「国行、珍しく仕事してるね。エライエライ」
「ンー?蛍丸こそ、俺にもあんな甘えてくれへんのに主さんにはデレッデレやん。妬けるわぁ」
「…へへっ、主って、やっぱあったけぇんだなぁ…」









prev next

[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -