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  閑話 手入れを終えて 左文字








左文字は悩んでいた。
はぁ、と溜息をつくのは宗三左文字だ。持ち前の色気を出しながら三角巾を被り、エプロンをして箒で部屋の埃を払う様はなんともアンバランスで、それを見た岩融がぶっと思わず吹き出す。

「ブァッハッハッ!!宗三よ、お前のように掃除が似合わない奴が大人しく掃除をするとは!審神者殿は偉大だなぁ!!」

「…貴方も同じ格好をして掃除をしているでしょう。バカにするのなら、審神者様が起きる前に貴方と手合わせでも致しましょうか?岩融。」

ぎろり、と宗三左文字は岩融を睨みつけた。
それでも岩融は愉快そうに豪胆に笑っている。

「…お辞めなさい。彼の方は、争いが…嫌いだと伺いました…。眠っている最中に…我らが怪我を増やしてどうするのですか…」
「…兄様、どうかした?掃除、嫌?」

同じく三角巾とエプロンをつけた江雪左文字と、小夜左文字は布団とタオルを運んでいた。審神者は、刀剣男士全員の分の日用品を初日に頼んでいたらしい。
審神者の部屋に置いて置く訳にはいかない。それでも数があるその物資達を片付けのされた部屋にまず置くべく、2人は少しずつ持って行っていた。
小夜は綺麗な部屋にタオルを置くと、宗三左文字に駆け寄る。掃除が嫌なら運ぶのと変わる…?と、すこし不安げだった。

「ああ、お小夜。お気になさらないで下さい。僕は掃除が嫌だったわけではありません。
…審神者様の、今後を考え憂いていたのです」
「…宗三兄様…。」
「ほう!審神者殿の今後か!まあそれはきっと大変だろうなぁ!」

相変わらず茶々を入れる岩融に少し憤りを感じながら、その感情を消すように箒を動かす。血や汚れのない床は、埃を取り除けば随分と綺麗になるものだ。

「まったく。貴方の適当さを彼女に分けてあげなさい。
…この本丸は、未だ審神者様をよく思っていない男子も多くいることでしょう。布団や物資を受け取らない事がその証拠です。…私たちはあの方に触れ、あの方にご恩があります。籠の鳥をあの方が望むのなら、受け入れる覚悟もあります。

これから、まだあの方が辛い思いをすると思うと…」


ほう、とまた溜息を吐く。

宗三左文字も岩融も江雪左文字も、審神者に触れて穢れを落とした。元の気持ちが戻り、憎しみが失せた。そして何より、あんなに望んでも叶わなかった折れかけの大切な弟を救ってくれた審神者に感謝をしていた。
だからこそ、審神者がこの本丸の審神者になったことを憂いていた。

本来なら、もっと楽な本丸があった筈なのだ。こんな死にそうな思いなんてしなくても構わないような本丸が。


「あの審神者殿じゃなきゃ、駄目だった。と考えよ。」


その宗三左文字の考えを見抜いたかのように、岩融がにっ、と笑いながら言う。


「オレは少なくともそうだ。あの審神者殿だから今剣を任せた。あの審神者殿じゃなかったら、渡さずずっと三条の部屋に今剣を囲って居ただろうよ。今剣が苦しんでいる、ということを忘れてな。

なに、有難い縁じゃないか。それに、オレ達が止めたとして、あの審神者殿が1人で苦しんでいるものを放って置くとは思えんなぁ。」


「…確かに、そうですね…あの方となら、和睦の道が…あるのでしょうか…」
「…僕はあの人が誰かに復讐がしたいのなら、僕が代わりにやってあげることに決めてるよ。」


続けて兄弟が口を開き、審神者の部屋を見上げた。釣られて宗三左文字も審神者の部屋を見る。

…確かに、岩融の言う通りかもしれない。手入れをするだけなら、あの、無機質な政府に頼めば良かったのだ。
それをしなかったのは、政府を信用が出来なかったから。
お小夜が傷ついているのを知って居ても尚、兎に角嫌だった。

突然走ってきて襖を叩いた彼女は、とても必死な様子で、自分達に手入れをさせてくれと頼んできた。政府と言ってることは変わらない。関係も変わらない。初対面だ。
それでも政府と違い手入れを受け入れた。それはもしかしたらあの審神者だったから、なのかもしれない。


…早く起きて下さい。
お小夜も、兄様も、私も。これから貴女と共にありたいと願っているんですよ。


そう願って、また箒を動かした。






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