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  かみさまとのたたかいです2







「鶴丸国永様、突然のご訪問、お許しください。開けてもよろしいでしょうか?早急にお話ししたい事がございます。」

「……入って構わない。言いたい事はわかってる」


失礼致します。と襖を開けて、部屋に入り、正座をした。
中には真っ白い髪に、所々真っ赤な血を滴らせた綺麗な神様。
それ以外にも、部屋の中には沢山の神様がズラリと待ち構えていた。
真っ白い髪様の他に、大きな体格の大きな神様。姿勢の正された神様。水色の髪の神様。そして、あの髪の長い神様。


「まず、言い訳を聞こうか。何故約束を反故にした。君が手入れを行なった時、膨大な霊力がこの本丸を包んだ。皆、それで飛び起きたぞ」

「勝手をしたんだ、斬り殺される覚悟は出来たんだよなぁ!?」


淡々とした白い神様こと、鶴丸国永さんの言葉はどこかヒヤリとするものがある。感情的に声を荒げるのは髪の長い神様だ。
6人の冷たい視線が私を射抜く。こんなに分かりやすい敵意は人を震え上がらせるものなのか。
大きな声で今にも刀を抜きそうな髪の長い神様は相当わたしという存在が気に入らないらしい。


「…約束を破った事、先ずは謝罪致します。申し訳ございませんでした。」

深々と頭を下げる。
約束を破ってしまった事は事実だし、彼にはそれを怒る権利もある。どのような罰も、受けるつもりで手入れを行なった。それこそ死を覚悟した上で、


「ですが、皆様は、五虎退さんがどのような状況であったかご存知でしょうか?」


大きな部屋に、わたしの声が響く。
シン、と部屋が静かになった。時が止まったかのように。


「ご、こ、たい?」

白色の神様が口を開く前に、水色の神様が口を開いた。全員、驚いているのが分かる。
その瞬間、私の肩に衝撃が走った
ーーどんっ!
水色の神様が凄い勢いで掴みかかってきたのだ。柱に思いっきり叩き付けられる。
肩に食い込むのは水色の神様の指。凄い力。目を見れば、瞳孔が開いている。相当な興奮状態であるらしい。


「…五虎退、五虎退はっ!!五虎退は折れて居ないのですか!?どこに!!いま、どこに居ますか!!!」


叫ぶように、水色の神様は声を荒げる。…ああ、そうか、そうなのか。


彼が、いちにい≠セ。


笑って居られる状況じゃないのに、五虎退さんを必死の様子で心配する彼は正しくお兄ちゃんで、目を細め、微笑む。肩を掴まれたまま、口を開いた。


「本日、早朝に発見致しました。

顕現や鍛刀を行なった訳ではないという事は、皆様ならお分かりかと思います。
左腕は千切れ真っ白い骨が見えておりました。目はくり抜かれ、髪も引っ張られたのでしょうか。髪が抜けて、頭からは血が流れておりました。複数の殴打した痕、服はボロボロで、それでも虎達は無事か、わたしが審神者だと分かると兄弟を直して欲しい、とお願いされました。

正直、ブラック本丸といえど、そこまではしないだろうと高を括っておりました。
説明を受けず、ここまで来たわたしの認識の甘さが原因です。そんな酷いことを現実世界で、本当にする人間は、今までわたしの短い人生において誰一人として居なかったのです。
何故そこまでにして非道を行えるのか、わたしには理解が出来ませんでした。
皆様は、それを、放置しろと。信頼に足る人間と思えるまで待てと。

わたしは、あの状況を見て見ぬ振りを出来るほど出来た人間ではございません。
あんな、痛いとすら泣けない状況を放っておくことなど。

中傷、軽傷者の皆様の手入れについてはお話し合いさせて頂きます。意思を尊重いたします。出来れば手入れを受けて頂きたいですが、我慢致します。
ですが、重傷者の方はこれから手入れをさせて頂くことを、どうか、どうかお許し下さい。」


お願い致します。と、言う声は震えるものに変わっていた。
これで見て見ぬ振りをしろ、と強要されたら、わたしはきっとこのまま彼らに殺されてでも手入れをしに行くだろう。それは、この本丸に未来永劫、認めてもらう事ができなくなると同意だった。

彼らの意思を無視し、彼らに霊力を注ぐ。
その行為が、どれ程までに重いものなのか。


「……ひとつ、条件を出そう

手入れをするなら、今日中に重傷の刀剣男士全ての手入れを終わらせろ。そうでなくては許さない。手入れが出来たのなら、約束を反故にした事。許そうじゃないか」


白い神様は、ニッコリと笑っていた。

決して目は笑っていない。
その彼の注文の意味が、なんとなく分かる。

審神者の霊力は無限ではない。
使えば使うだけ消耗するし、無くなったら溜まるまで動けなくなる。謂わば人間のガソリンみたいなものだ、と担当者さんは言っていた。
重傷の刀剣男士は、聞いている限りかなりの数居る。それを全て、しかも今日中に直すと言う事は、審神者の霊力を全て持ってしても出来るかどうか分からない芸当だ。

でもね、鶴丸国永さん。


「許可して下さり、ありがとうございます」


その言葉だけです。欲しかったのは。


「一期一振さん、今からあなたの弟さん、全員綺麗に直します。このお約束はわたしの命をかけてもお守りいたしますのでご安心を。
五虎退さんは、粟田口の部屋に向かいました。手入れ部屋に、兄弟といちにいを連れて行くんだとおっしゃって。」

肩を掴む手を握り、未だに興奮状態の一期一振さんの目をしっかりと見て告げた。
彼もよく見ればボロボロで殴られた痕が顔にまである。…本当に、よく、皆さん耐えてくださった。

「…本当に、治してくださるのですか。その約束、違えた時は私が確実に貴女の命を頂きますぞ」

「構いません。これは、しっかりとしたお約束≠ナす。」

ぎろり、と睨まれながら立ち上がる。許可を得た今、わたしは一刻も早く手入れ部屋に向かわなければならない。
それでは、と頭を下げて、走る。





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