妄想集やら没集
続いたり続かなかったり中途半端だった意味なしオチなしだったり好き放題にやってます
没集なので名前を固定させて頂いてます
男装主について




男装主/SN*セイバー√2 03月15日

「…う、…そ…」

そう言って立ち竦む白い少女。

「――…あちゃー。ちょっとやり過ぎたかなあ」

そう言う黒い少女に覇気はない。半壊された白のホールに立ってはいるが一歩とも動かずにただ"立って"いた。ちらりと白い少女を見やる。

「嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!バーサーカーが負ける筈ないもん!バーサーカーは最強なんだもん!!貴方は誰!?私貴方なんか知らない!私の知らないサーヴァントなんて居ちゃ駄目なんだから!!」

そう言ってイリヤスフィールは立っている黒に突進する。すとん、と意図も容易く倒れ込む。

「ばかばかばかばかばかばかばかっ!!」
「い、や…たいむ、無理、しぬ……うぇっ」

ぽかぽかと胸元を叩くイリヤスフィールに静止を促すが止まるわけがない。ただふ、と重みが消えた。

「離して!」
「落ち着きたまえ」

駆け寄ってきた衛宮士郎にイリヤスフィールを預け、シークレットに手を差し出す。だが差し出された手を掴むことはない。

「シークレット…?どうしたんだね」
「――…、ん。燃費良いんだよな、これ。魔力、空っぽになっちった」

けたけたと笑う声が聞こえるが今一覇気がない。アーチャーはハッとする。自らをマスターとし自らをサーヴァントとするシークレットは魔力の供給源が"無い"のだ。

「…は、は…まあ、いっか…」
「シークレット…貴様…」
「いやあアーチャーじゃ、駄目だった、じゃん?」

体が持ち上がる感覚にシークレットは閉じかけていた瞼を開けた。

「……あ、ちゃー…?」
「黙りたまえ。消えられたら目覚めが悪い」

シークレットはほくそ笑む。

「なあ、アーチャー」
「……」
「俺の願い、聞いて」
「……なんだね」

そっと抱えられていた腕の中からその手をアーチャーの頬に伸ばす。

「魔力、ちょうだい」

アーチャーの唇を塞いだ。


――理想、構成、現実、完了。
魔力を現実に。この身に。


唇が離れたと同時に意識が途切れた。




男装主/SN*セイバー√ 03月15日

「別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」

そういった男の背を見る四人。ああだから、だから、と。シークレットは手を強く握る。勝てない、勝てる訳がない。ならば何故どうして助けを求めない。

「行くわよ!」

遠坂凛の言葉にすら反応しない。ただその背中を見つめていた。

「シークレット!」

嫌だ、と。
それは多分、少女の心が叫んでいる。この男をここに置いていきたくないと。殺したくないと。消えて、ほしくないと。

気付けば、その大きな背中にしがみついていた。ぽつりと呟いた言葉は謝罪の意味を持つ。



「――"空想現実(イマージネーション・リアライズ)"」



振り向いた男の瞳と目が合った。
シークレットの髪をとめていたカチューシャが落ちる。ふわりと、髪の毛が垂れた。

「――…おま、えは」
「わたしは、判ってたよ。アーチャーが過去の自分を憎む気持ち。けど、けど貴方は選んだ。自らを生かす道を」

――想像、構成、敵、英雄ヘラクレス。

「だから生きて。だいじょーぶ!だって、俺」

―――理想、最強、己、反英雄××××。


「最強だから!!」


不自然に舞い起こった風から黒のコートを翻しシークレットは巨体に踏み込む。だが負けない、負ける訳がない。

「"天の鎖(エルキドゥ)"!!」
「■■■■■――!!」
「……は、?」

現実、継続、理想、構成、実現。

「"十二の試練(ゴッド・ハンド)"かァ!?ならお望み通りにきっちり十二回分殺してやるよ!!!」

意識をフル動員。
ここは××××の世界。

「良いか!よぉく聴け!!」

理想は現実に。現実は理想に。空想は現実に。現実は空想に。


「"お前は十二回死ぬ"!!」


運命を捩じ込め―――!
(少女が護りたかったもの)




男装主/その他*教会に世話になろう 03月14日

「んな訳で、よろしくなコトミネ」
「どういう風の吹き回しか、シークレット」

教会の椅子に踏ん反り返っている少年、否、青年、が正しいのかもしれない。カチューシャで前髪をあげており全体的にはオールバックとなっている。しかし、華奢である。

「いやねぇ、シロウん家も人数増えたし?んじゃあ俺はコッチ行くわ〜みたいな?」

青年、シークレットも大した考えもなくこの教会にやってきていたようだ。

「いいじゃねえか別に。ホラ、俺が居る間はお前とお前のサーヴァント死なせねえからさ」
「聖杯戦争などもう終わっているぞ」
「こまけえこたあ気にすんなって!」

シークレットはケラケラと笑いその華奢な身体に合ってない服の余った袖を振り回す。言峰はふむ、とわざとらしく考える素振りを見せ平然と呟いた。

「まあ、余っている部屋はいくらでもあるが、何分"女性"が満足できるような綺麗な部屋ではないのだが…」
「ってめッ!!」

ガタリとシークレットは立ち上がり言峰を睨みあげる。その顔は怒りと羞恥を混ぜ、数倍真っ赤だ。口をパクパクとさせ怒声とはいいがたいなんとも言えぬ声をあげた。

「コトミネてめぇっっぜってーゆるさねぇ!!」
「まったく、」

はぁと額に手を当てあからさまにため息を吐く言峰。それがさらにシークレットの気を悪くさせた。

「大体なぁ――――」「おー、何やってんだ」

ピタリと動きと言葉をとめるシークレット。振り返るとそこには青髪の青年が立っていた。シークレットは何事もなかったかのように小さく咳払いをし青髪に向き直る。

「よおランサー、」

ニヤリと先ほどの羞恥の表情など一切なく厭味な笑顔を浮かべる。

「今日から此処に世話になることになったからヨロシクな」
「…はぁ?」

ランサーは意味が分からないと言いたげな怪訝そうな顔をした。その顔が気に入ったのか、シークレットは笑う。

「空いてる部屋に案内しろよ、ランサー」

*

「ほう…そうか」
「なんだ久々の共棲じゃないか、もっと素直に喜んだって良いんだぞギルガメッシュ」
「抜かせ雑種」

フンッと人を馬鹿にしたように鼻を鳴らすギルガメッシュにシークレットはむしろ嬉しそうに笑った。

「そんなことより我は空腹だ。飯の献上を許す」
「許すじゃなくて作れ、だろ。言葉をちゃんと使えよ王様」
「……なんだかなぁ」

ランサーは頭をかき回し頭が痛いと言わんばかりにため息をついた。シークレットはヤレヤレと肩を落とす。

「早くせぬか駄犬共」
「んー。ランサーじゃあなんか作るぞー」
「あ?」

良いから早くとシークレットはランサーの腕を引っ張りキッチンへ向かった。

「変わらないなあギルガメッシュ」
「お前、知り合いか?」

んーとシークレットは手を動かしながら言葉を発した。ジューと肉の焼ける音が響く。実に美味そうな匂いがキッチンに広がる。

「まあ、色々あんだよ。良いから早くサラダ作れよ」

その表情は男性と呼ぶにはあまりにも似合わなかった。




夢見た乙女*苛々2 03月14日

嗚呼、最悪だ、最低だ。
自己嫌悪に陥るのは簡単だった。イライラするのは自分のモノが人に語られるからか、それを横取りした自覚があるからか。

床に寝転がってその体勢のままずりずり這い蹲ってテーブルの上にあったお茶請けに手を伸ばす。

「お茶飲みますか?」
「うんおねがい」
「お、俺も頼むぜ」

這い蹲っていたあたしの上にかかる重力。死ぬ、しぬ、重いわボケ!背骨がイってしまいそうだ。肺が、胃が…!あたしの背に跨って普通に乗っかってくるランサーは確か体重70kg。死んでしまう。
手と足をバタバタさせ意思表示をする。苦しいから、割とマジで!

「おー、がんばれがんばれ」
「…っ………ッ、せいっ…んばあー…ッ…!!」

お茶を飲んでいるセイバーに助けを乞う。でなければ死んでしまう、本気で。

「…ランサー、海南が死んでしまいますよ。顔が真っ赤になっています」

その声に反応したのか、やっとあたしの上からどいてくれたので引っ繰り返って仰向けになり息を吸う。ニヤニヤ笑っているランサーは無視して寝転がってた体勢から座る体制にする。

――と思わせて、

「こんにゃろ…!」
「なっ、」

ランサーの方に向かって突進。押し倒して腹に跨って体重をかける。

「…ぐえ、重」
「うざ!女の子に重いとかうぜっ!」
「おーおーそれは失礼」
「…!?」

余裕な表情でニヤリと笑ったと思ったら手を絡めとられてバランスを崩す。そして流石俊敏A、足の裏に腹を乗せられ、そのまま――、

「おーら、ニホンではこうやるんだろ?」

まさしく、それは、俗にいう、「高い高い」で知られる、子供と遊ぶときにされる、それである。

「やめっ、」
「落ちるぞー」

ケタケタ笑っているランサーとは裏腹にあたしはハラハラである。バランスを崩せば落ちるし、意外と、高い。ムカツク、手足が長いということだ。流石外人。

「――なっ、なにをしているのですか!」

いきなり聞こえた声にあたしがびくってバランスを崩すがランサーは上手くバランスをとってあたしをゆっくりと抱きとめる形で受け止めた。あたしはほっとして手を床に付き声の主を見る。

「おはようバゼット、仕事は見つかった?」
「おはようございますミス海南――ではなく、何をしているのですか?」
「知らん。ランサーが構ってほしいらしい」
「俺は海南に押し倒されてるだけだがな」

黙れと頭を軽く叩いて桜が煎れてくれた茶を啜る。
今日はそんな気分ではないというのにこの槍兵は自棄に絡んでくる。

「つっまんねー」
「そういう気分じゃない」
「どっかに出かけっか?」
「えー…めんどくさい」

ぐたぐたお茶を啜りながら雑談しているとバゼットが目の前に座りだした。それは構わないんだけど目が据わってますよお姉さん。うりうりしてくるランサーに無視を決め込む。

「あの、よろしいですか」
「「ん?」」

二人して声が重なる。目の前のバゼットは少し照れたようにして、一つ咳払い。

「――随分と、仲が宜しいのですね」
「…そりゃあ、ねえ」
「まあ」
「何回助けたか…」
「おー、何回か助けられたな」
「何回ランサーに殺されかけたか…」
「おー、何回か殺しに行ったな」

ぶほぉと茶を吹いたのは桜。
バゼット以外はなんとなく微妙な空気を醸し出している。

「いやでもゲイボルク外した時のランサーの顔一生忘れないわー」
「俺も海南がどや顔してた時の顔忘れねえわ」
「え、そんな顔してた?」
「嗚呼。あと俺の服全身タイツとか言って笑ったこともぜってえ忘れねえ」
「いやあ印象が強すぎて」

くくっと笑って適当に流す。

「まあいろいろあったので仲よくならざる得ない感じですね」
「おー」

それを言うとバゼットの表情が曇った。あー、うん。まあ。

「まあ、ランサーはあたしのモノですがね」

純粋な気持ちでした。

「お、どこ行くんだよ」
「部屋。寝る、かもしれない」
「夜寝れなくなるぞ」
「………」

分かってます。けど眠たい、かもしれない。から。

(きっとあたしは、ランサーのこと、)




夢見た乙女*主人公苛々 03月14日

彼女は基本イライラしない人間である。

否、あからさまに不機嫌になったりは良くある。しかし人間に対して、"イラつく"などという感情はあまり持たない。どこぞかの天上天下唯我独尊我様の言葉にさえイラつきなど表さない。適当に煽ててかわすかスルーするか、まあとにかく海南という人間は人
に対しあまりそのような感情を露にしないのだ。

「「バゼット?」」

テレビゲームに夢中になっていたランサーと彼女の声が重なる。士郎はかなり遠まわしに尚且つ慎重に丁寧に言葉を選んだのだがさして意味無く。用件はバゼットが諸事情で衛宮宅に一週間居候するという内容であった。
過去のこととはいえ、ランサーとバゼットの関係や色々居合わせては不味いような気もしたのだが人の頼みとあれば断れないのが衛宮士郎。バゼットはランサーの元マスター。彼女はランサーの現マスター。さらに彼女はあまりバゼットを良しとしてはいない…ような気がする。

「え?別に良いよ。此処士郎ん家だし」

なんて軽く、別に気にも留めないと言い放った海南。
勿論それは彼女一人の意見であれど"ランサーは自分の物"という彼女の意思からそれは同時にランサーの意思であるのだ。
つまるところ、彼女達は許可をした。士郎は安堵の息を零した。
まあ自由気ままな彼女らが過去の事を引きずってるとも思い難かったが、あれほどのことだ。何か引きずることがあったのでは…とは思っていたが。

「…いやあ良かった」

そう思い士郎の肩の荷が降ろされた。
―――それが、三日前の話である。


「――ですから、」
「………」
「そもそも貴女のような未熟者がマスターになど…」

胃の辺りがキリキリする。それ以上は言うなと思ってはいるもののバゼットは言葉を止めない。狙ったのか不幸中の幸いなのか、ランサーは不在である。
海南は完全にスルー。というよりも無駄な口論だと割り切っているのか。

「私の話をきいているのですか!!」

バンッ!!と机が悲鳴をあげる。周りはゴクリ、と唾を呑みその光景を見守る。
海南がどうでるかでこの衛宮家の運命は――――決まる。

「……はあ。関係ないじゃないですか」

至極簡単な言葉で済ませる。無駄な争いを好まない海南は兎に角バゼットの気が済むまで受身でいるのだろう。

「アイルランドの英雄が貴女などの魔術どころか戦闘もできない人は相応しくありません」
「で」
「で、ですから――」
「契約を切れ、そういいたいの?」

しかし受身だったはずの彼女が反撃にでた。というより、イラつきを露にしていた。珍しい。
しかしそのイラつきも静かなもので、黙っていた彼女がようやく口を開く。

「あたしがマスターである限りランサーはあたしのモノ。それが気に食わないってんならあたしを殺してその左手に令呪でも宿したらどう?――そう、」

言って、彼女は立ち上がった。

「―――まあ、そういう事だから」

居間をあとにする。
どことなくその声は切なげであった。



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