「…う、…そ…」
そう言って立ち竦む白い少女。
「――…あちゃー。ちょっとやり過ぎたかなあ」
そう言う黒い少女に覇気はない。半壊された白のホールに立ってはいるが一歩とも動かずにただ"立って"いた。ちらりと白い少女を見やる。
「嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!バーサーカーが負ける筈ないもん!バーサーカーは最強なんだもん!!貴方は誰!?私貴方なんか知らない!私の知らないサーヴァントなんて居ちゃ駄目なんだから!!」
そう言ってイリヤスフィールは立っている黒に突進する。すとん、と意図も容易く倒れ込む。
「ばかばかばかばかばかばかばかっ!!」 「い、や…たいむ、無理、しぬ……うぇっ」
ぽかぽかと胸元を叩くイリヤスフィールに静止を促すが止まるわけがない。ただふ、と重みが消えた。
「離して!」 「落ち着きたまえ」
駆け寄ってきた衛宮士郎にイリヤスフィールを預け、シークレットに手を差し出す。だが差し出された手を掴むことはない。
「シークレット…?どうしたんだね」 「――…、ん。燃費良いんだよな、これ。魔力、空っぽになっちった」
けたけたと笑う声が聞こえるが今一覇気がない。アーチャーはハッとする。自らをマスターとし自らをサーヴァントとするシークレットは魔力の供給源が"無い"のだ。
「…は、は…まあ、いっか…」 「シークレット…貴様…」 「いやあアーチャーじゃ、駄目だった、じゃん?」
体が持ち上がる感覚にシークレットは閉じかけていた瞼を開けた。
「……あ、ちゃー…?」 「黙りたまえ。消えられたら目覚めが悪い」
シークレットはほくそ笑む。
「なあ、アーチャー」 「……」 「俺の願い、聞いて」 「……なんだね」
そっと抱えられていた腕の中からその手をアーチャーの頬に伸ばす。
「魔力、ちょうだい」
アーチャーの唇を塞いだ。
――理想、構成、現実、完了。 魔力を現実に。この身に。
唇が離れたと同時に意識が途切れた。
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