妄想集やら没集
続いたり続かなかったり中途半端だった意味なしオチなしだったり好き放題にやってます
没集なので名前を固定させて頂いてます
男装主について




その他*同盟 03月21日

切嗣妹


衛宮切嗣。
頭を占める疑問、好奇心。あの男を知れば、愉悦のなんたるかを理解できる気がしていた。だから、だから。会いたいとも思ったし殺したいとも思った。

「気になんの?」

ふと掛けられた声にハッとし、声が聞こえた方を向く。だが人は居ない。

「じぁさ、手を組まないかい?神父様」

声からして女。それは、後ろにある柱から発せられた。

「……手を組む?」
「そーそ、今回の聖杯戦争アンタいい感じの手駒にされちゃってんじゃん?勿体ないと思うのよね、アタシ」

何故それを、と思ったが口に出さずに女の言い分に耳を傾ける。くすくすと笑うように、唄うように、呪うように彼女は話した。

「だあれにも言わない、アンタとアタシだけの同盟。衛宮切嗣殺害同盟?……って言ったら勘違いされそうだけど、アタシもあの男嫌いなんだよね」

だから手を組まないか、と。
そんな同盟に一体なんの意味があるのか。理解出来ずにいると女はぺらぺらと勝手に喋る。


「アンタとアイツは似てるようで似てない。根本的なものが違うんだ。アタシはアイツのそれが気に食わない。殺したいとは思わないが気に食わない。アンタはアイツが気になる。じゃあアンタがアタシに協力してくれんなら衛宮切嗣について教えてやるよ。そしてアンタはアタシを聖杯戦争に連れていく。利害一致じゃね?アタシ聖杯戦争には無関係な人間だし」
「――…お前は」

何者だ、と問うて。
彼女の雰囲気が笑った。


「衛宮切嗣の正真正銘血の繋がった妹さ」


柱の影から出てきた女は飴をかじりながら、片手を差し出し愉快そうに私を見た。
(無論、その手をとったのも私)




その他*すれ違い 03月21日

切嗣の妹


その人はどうしようもなかった。

「100人乗っている船と10人乗っている船。どちらか片方を沈めなければ両方助けられない、そんな時どうする?」
「10人の方を沈める」
「両方沈める」

ぱちくり、と。目を見開きその答えを出した人間の方を見る。

「そして自分だけを助ける」





狙うは白い女。
黒い騎士にエスコートされている。スコープを覗いて標準を合わせ、引き金を引こうとした。

「動かないでもらおうか」

その声にスコープから視線を外し、肉眼では見えない二人組を一度見やる。聞こえた足音に彼女は首だけを後ろに向かせた。

「――…」

冷めた視線が交わる。

「どうしてここにいる」
「答える必要が?」

向けられた銃口に怯えることなく言い切った。銃を解体して部品をケースに閉まっていく。何事もないかのように全てをしまい、ケースを持ち歩き出した。

「何故お前が聖杯戦争に」
「アンタと一緒なんじゃない?」
「――!」

目を見開く男を嘲笑うように女性は横を去っていく。去り際、ぽつりと女性は唇に弧を描き言葉をこぼした。


「言峰綺礼」




男装主/zero*2 03月19日

闇夜に紛れてそれは現れた。
遠坂邸のバルコニーの手摺に立っている影。

「なぁなぁ、取り引きしようぜ?」
「…取り引き?」
「ああ、俺のマスターの身柄を確保して欲しい。そうすれば俺はアンタとアンタのサーヴァントを殺させねえように全力を尽くすよ」

にんまりと笑う幼児。
どうする?と時臣に問いかけてはいるものの拒否は許さない、とその赤い瞳が物語っている。何故このような子供が、英霊などに、


「――ほう、面白い事を言うではないか」


その更に上。月明かりに照らされ光る黄金。

「悪い話じゃねえと思うんだがよ。俺、聖杯要らねえし」
「良かろう。呑んでやる」
「お、はっなしわか「だがこの我に勝てたらの話だがな」

そう言うなり光だす男の背後。
瞬間に幼児はバルコニーの手摺から飛び降り庭へと降り立つ。そうして上を見上げた。

「へえ、良いねえ。好きだぜそういうの」
「さあこの我を愉しませてみよ――餓鬼ッ!」

そうして放たれた武器はたったの十廷。それを小さな身体を駆使して全てをかわしきる。

「猪口才な…」
「こんなもんか?」
「戯け」

現れるのは数える事が億劫になる程の武器。幼児は大きな目を更に真ん丸くさせ、舌打ちを打った。

「この程度で死んでくれるなよ?」

放たれる無数の武器。それは地を覆い砂埃を舞わす。
一旦攻撃を辞め、さも無残であろう死体をこの目に映そうとして、目を見開いた。
そこに立っているのは成人はしているだろう男の姿。腕の中にいるのは先程の、幼児。

「…チッ、んだよ…」

男は忌まわしそうに髪を掻きあげ空を見る。

「おめえのそれチートだろ」
「やはり人間に憑依していたか」
「うっせぇ。こちとらマスターの身体は同意の上だ。…んで、俺はアンタに勝てばマスターの身柄確保してくれんだろ?」
「無論」

男はニヤリと笑う。
後悔するなよ、とその赤い瞳が言っていた。

「おめえのは大体分かった。宝具を使うまでもねえよ」




その他*大切な片割れ 03月19日

(第四次聖杯戦争で聖杯の中身をギルガメッシュと被り呪いに勝ち受肉をしたがどういう理屈か能力を全て失い更に失明する)


「………、」
「入らないでッ!!放っておけ!!」

教会の一室、闇に包まれ金色の糸が靡いている。白いベットには無数のシミが。

「何故!!こんなことになるのならば死んだ方がまともだ!」

力を失った自分は要らないと彼女は言う。自らの目が見えないのならば消えた方が良いと彼女は叫ぶ。力の無い権力者など無能だと。弱者と同等、若しくはそれ以下であるという事実が彼女のプライドをズタズタに引き裂いていた。


「要らぬ!!こんな余は要らん!殺せギルガメッシュ!!この世に受肉したとして力も無く光すら見えずに何が出来る!雑種共に嘲られるのならば死んだ方が良い!ころ、」


殺せ、と言おうとして頬に痛みが走った。何が起きたのか理解出来ずに自らの頬に手を添える。そこは確かに熱を持っていて、恐らくは赤くなっているのだろう。
何かが己の体を包む。ふわりと香る匂いで、誰に抱きしめられているのかを理解したと同時に自分が叩かれたという事実を理解した。

「戯れ言を並べるのもいい加減にせぬか――!貴様はこの我の妹であるのだぞ!死にたいなどと嘘でも申すな…!」

僅かに震えている体は怒りによってか、哀しみによってか。暗闇にいる彼女に知る術などはない。

「居ない方が良い…!ギルガメッシュとて此の様な出来損ないと血が通ってると知れば良い笑い者だ…!」
「黙れ!その様な輩肉片も残さずに消し去ってくれる!」

骨が軋む程に強く抱きしめ、彼女は唇を噛む。

「瞳が見えぬのならば我がお前の瞳となろう。力が無いのならば我がお前の力となろう」
「……」
「だから我と生きよ。瞳も力も、我が元にように戻してみせる」
(超過保護なギルガメッシュの誕生)




その他*泥に嫉妬 03月18日

獅子に顔を埋め瞳を閉じる。本来ならば寝床に獅子をあげると怒るのだけど、知るものか。


「ギルガメッシュが構わない」
「ぐるる…」
「エルキドゥとかいう泥人形ばかりを構うのだ」


信じられるか?と問えば鼻をくっ付けられた。ああ、その通りだ。巫山戯ておる。



確かにアレは素晴らしい。何せギルガメッシュと対等に闘い合いましてや生きているのだ。それだけで称賛しよう。だが問題はその後のギルガメッシュ。王宮に泥人形を置くのは構わないが自らの王務が終われば直ぐに居なくなっている。その後臣下共に命を下すことを忘れ、出歩くのだ。故に余が命を下すことになる。

それに、ギルガメッシュが丸くなっているような気がする。否、こればかりは気ではなく確かなことだ。それが一番解せない。余が知っているギルガメッシュが消えてゆくのだ。この世に生を受けた時からずっと今まであり得なかった事が、起きている。ギルガメッシュの理解者の余が理解者でなくなって、唐突に現れた泥人形に奪われて、しまう。


「獅子を寝床に乗せるなと何度云えば判るのだ」


入り口に視線だけを向ければ今しがた考えていた己の片割れが。口を開こうとして、美しい姿の後ろに憎らしい姿が現れる。

「へえ。ここがギルガメッシュの部屋?」
「正確には我とあやつの部屋だ」
「ああ、妹さん、だったっけ」


「――…ギルガメッシュ!」


ここは、ここは。
侍女だって付き人だって臣下だって、入らせない部屋なのに。入らせない部屋、なのに。認めた存在しか入れない部屋なのに。

「何故其奴を入れる!」
「何故?我が朋友であるエルキドゥを入れて何の問題があるというのだ」
「所詮泥人形であろう―――!」

同じ紅い瞳が、敵意を持つ。

「――今、何と申した?」
「其奴は泥人形だと言うたのだ。神聖なる我が部屋に入るなど甚だ愚かしい」
「お前とて我の友を穢すこと等赦されぬぞ!!」

怒りに燃えた紅い瞳と冷えきった紅い瞳の視線が交わった。ゆるりとした動作で獅子を連れ天蓋付きの寝床から出る。

「好きにするが良いさ。余は出て行く」
「待て――ッ!」
「貴様の様な男、知らぬ」

横を通りすぎ依然変わらぬ歩調で歩く。さて、どうするか。
(本当はエルキドゥに妹自慢したかったギルガメッシュ)



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