切嗣妹
衛宮切嗣。 頭を占める疑問、好奇心。あの男を知れば、愉悦のなんたるかを理解できる気がしていた。だから、だから。会いたいとも思ったし殺したいとも思った。
「気になんの?」
ふと掛けられた声にハッとし、声が聞こえた方を向く。だが人は居ない。
「じぁさ、手を組まないかい?神父様」
声からして女。それは、後ろにある柱から発せられた。
「……手を組む?」 「そーそ、今回の聖杯戦争アンタいい感じの手駒にされちゃってんじゃん?勿体ないと思うのよね、アタシ」
何故それを、と思ったが口に出さずに女の言い分に耳を傾ける。くすくすと笑うように、唄うように、呪うように彼女は話した。
「だあれにも言わない、アンタとアタシだけの同盟。衛宮切嗣殺害同盟?……って言ったら勘違いされそうだけど、アタシもあの男嫌いなんだよね」
だから手を組まないか、と。 そんな同盟に一体なんの意味があるのか。理解出来ずにいると女はぺらぺらと勝手に喋る。
「アンタとアイツは似てるようで似てない。根本的なものが違うんだ。アタシはアイツのそれが気に食わない。殺したいとは思わないが気に食わない。アンタはアイツが気になる。じゃあアンタがアタシに協力してくれんなら衛宮切嗣について教えてやるよ。そしてアンタはアタシを聖杯戦争に連れていく。利害一致じゃね?アタシ聖杯戦争には無関係な人間だし」 「――…お前は」
何者だ、と問うて。 彼女の雰囲気が笑った。
「衛宮切嗣の正真正銘血の繋がった妹さ」
柱の影から出てきた女は飴をかじりながら、片手を差し出し愉快そうに私を見た。 (無論、その手をとったのも私)
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