2. 大キライ、また明日風呂から出たら実姉と義兄がケンカしていた。
「カイト兄のばか!大キライっ!」
訂正、リンがカイトに怒鳴ってた。
どしたの?と小声で訊くとカイトは肩を竦めて苦笑いだけ返してくる。
風呂上がりに食べるミカンの買い置きを忘れられたのか、それとも見たいドラマの録画を消されたのか、カイトの態度からして大した事じゃなさそうだ。
勿論そんな事は口に出さないし、リンの口撃に巻き込まれないように、極力存在感を消す事に徹する。
冷蔵庫の前で風呂上がりの一杯(バナナ味)を呷っていると、もうカイト兄なんて知らない!と捨て台詞を吐いて、リンがリビングを出ていこうとした。
「おやすみ。また明日」
意訳すれば『この話はおしまい、頭冷やして出直して来なさい』だ。
穏やかな声でトドメを刺されたリンは、バカイト!と叫んでドアを思い切り叩きつけて閉めた。
「レンは?」
「んー」
今部屋に戻ったらリンの愚痴に付き合わされてしまう。そうしたら試験勉強なんか出来やしないし、それならまだ返事をしなくていいテレビの方がマシな気がする。
「テレビ見ながらするわー」
「ほんとに君ら、双子だね」
ああ、そういうこと。
カイトが呆れた声で言う。リンが逆ギレしてた理由がやっと解った。
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「テレビ見ながら勉強できる訳ないでしょ!」「できるよ!うっさいなァ!」 的な。
3. おはよう、がんばって「…おはよう」
ドアの隙間からリンが、あからさまに寝不足な顔を半分だけ出して言った。
何してんだと訊く前に、朝御飯あるよとカイトが返す。途端にリンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「何でいるの…。いつももっと遅いのに」
「一限目あるからね」
それでも二人よりは遅く出るよと、カイトはオレンジジュースを注いでテーブルに置く。リンは黙ってジュースの前に座って、カイトが朝飯を並べるといただきますと呟いてもそもそ食べ始めた。
食わないという選択肢はないらしい。オレならケンカ中の相手の悉くを無視すると思うけど。まぁオレには関係無いし。
「行ってきまーす」
「あっ、待ってあたしもっ。行ってきます!」
リンが慌てて朝食の残りを口に押し込み鞄を掴んで走ってきた。…歯ァ磨いたか?
玄関先で、靴を履くリンを待っているとカイトが見送りに出てきた。逃げるように玄関から飛び出したリンにも聞こえるように、でも顔はオレの方を見ながら、カイトが言う。
「行ってらっしゃい。テストがんばって」
「え? ………………!!!」
バタン、とリンの顔の前で玄関が閉められる。
わかってる。寝不足なのはカイトとケンカしたのを気にしてたせいってのも、今の今まで今日が試験なのを忘れてたってことも。
でも、そんな顔で俺を睨んだってどーしようもないだろ…。
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歯は?