4. 笑って、待ってて



「カイト兄?元気ない?大丈夫?」
「うん」
「…どっち?」

大丈夫だけど元気は出ない。お酒の呪いか気力の問題か、玄関の床に吸い込まれて剥がれられない。
酒の席で、この前手を繋いで歩いてたの誰ですかと訊かれたので、妹なんだー可愛かったでしょー、と何故かガッツポーズする後輩に自慢をしていたらメイコさんに殴られた。アンタねぇ、ってひとの頭を撲っておいて隣に座って、誤解させるだけならやめなさいよ大体アンタは誰にもいい顔をしてとか正座の説教酒で絡まれた。顔を褒められたのは珍しいけど、誤解なんてどういう意味だろう。

「カイト兄見て見てっ」
「……………」
「…………せめて笑って……」
「……ああ、ごめん……」

てっきり深夜のテンションで変顔始めたのかと思った。落ち込んでる僕を浮上させようと試みた結果、駄々滑って返って彼女を落ち込ませてしまったらしい。それでも何か次の手を考えているパジャマ姿の妹の足が裸足で寒そうだった。触ったらセクハラかな?でもこの前告白られたしアリかな。うう。いい兄貴になれなくてごめんなさい。

「あっ、そっか!カイト兄、アイス食べる?」
「……もうちょっと、待っててくれる?」
「う?うん。いいよ?」

なんだ。誤解なんてないじゃん。ああよかった。お兄ちゃんかっこいいって言われる夢は諦めるしかないけど。元々他人なんだし。これで姐さんに犯罪者扱いはされないかな。そうだ、めーちゃんと言えば。

「今日ねぇー、ロリ誘拐って言わ」
「リン中学生なのに!!」

打てば響く反応に思わず大声で笑ったらひどいとか怒られてその顔すら可愛いとか重症かも知れない。


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メイコ姐さんは同じ大学という設定です。


2014/11/28 ( 0 )





5. バイバイ、大好き



「あのね、カイト兄」
「ふん?」
「バイバイって、言ってくれる?」

今から真剣な話をしようというのに、スプーン咬わえながら振り向かれた。妹よりアイスの方が大事なのね。

「なんで?今からどっか行くの?」
「兄離れしようと思うの」
「へぇ?」
「ふつう、お兄さんとは一緒に買い物したりしないし、手を繋いで帰ったりしないし、アイス半分こもしないんだって」

むしろ仲良くなんかできないと周りの兄持ちの友達は言う。リンちゃんは生まれた時からレン君と一緒だもんねーとミク姉は気を使ってくれたけど。

「…………今さら?」
「今こそ!だと思うの」

何よりフラレたし。ふつうのきょうだい、っていう距離感がよくわからないけど、今ふつうに慣れておかないと家族になりきれない気がするから。

「だから、バイバイって言ってくれたら、兄離れするから」
「好きなのに?」

な ん だ と ?
そりゃあ空気も読まずに告白なんかして未だに未練タラタラだけどフッた本人に言われたくないしだからこそちゃんと妹になろうって覚悟を何でそんな蒸し返すみたいな、と泣きそうになって、我慢して、カイト兄を見たら、顔が真っ赤だった。

「待って、今の無シで」
「無シなんて無いね!ヒドイよ!」

何でカイト兄が赤くなるの。ムカついたからカイト兄のバニラを奪って一気に半分以上食べてやった。

「リンちゃんのが酷いよ」
「フンッだ!」
「待っててくれるって言ったのに」
「…へ?何が?何のはなし?」
「ほら。リンちゃんがヒドイよ」

ぐったりしちゃった。あたしがヒドイの?アイスじゃなくて?
おかしいな、あたしは今日こそフラレる覚悟をして。なのに何でカイト兄の方が古い話蒸し返して空気も読まずに告白したみたい、な?ん だ と ?

「…カイト兄」
「なに?」
「言って?」

しょんぼりするカイト兄にオレンジ味のアイスを半分こしてあげた。
カイト兄の頬っぺたは赤いままで、あたしは待たなくちゃで、きっとこの答えは間違えてない。

「……、──、……、っ…………」

カイト兄は真っ赤になって、ぱくぱくと口ばかり動いて声が全然小さくて、でも唇は最初のお願いとは違う言葉を言っていた。

「リンもだよ!」

声に出せなくたって伝わる事ってあると思う。
だって、あたしにはちゃんと伝わったから。


「…ナニしてんの、おまえら」

照れるカイト兄の背中にぎゅうってして頭ぐりぐりしてたら、声に出さなくても伝わる事って確かにあると思える目でレンが見下していた。


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時間経過がよくわからない事と親が出てこない理由はちゃんと考えていないからです。


2014/11/28 ( 0 )





▼ お返事 ▼

今さらなんですが。

コメントの 良い┃悪い は、使わなくても構いません。

他のSSは興味ないけどこの記事のSSだけは好き又は嫌い、だけど感想なんて書きにくい或いは何て書いたらいいのかよくわからない。
そんな時に、このコピペ。
いいね!の代わりぐらいに思って下さい。

こんな説明どこに置けばいいのかと思っていたので、お返事の窓代わりに置いていこうと思います。
うっとうしいかもしれませんがご寛恕下さい。


では本題。

〜11/16までの
拍手、コメント へのお返事です。

ありがとうございます。

本題は 〒お返事 の 続きから →


▼続きを読む
2014/11/17 ( 0 )





※※ 注意 ※※

・公式情報を確認していません。
 ⇒BSR3、及び4は未プレイ
 ⇒CD、アニメ、漫画等は視聴していない
・筆頭と忍びの出会いを勝手に妄想しています。
・成実さんを捏造しています。(2話目以降)
・才蔵を捏造しています。(4話目)

上記を踏まえて、それでもいいよという心の広い方のみ続きから、どうぞ。
苦情は受け付けておりません。

▼続きを読む
2014/11/15 ( 0 )





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A I love sixpence,
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「政宗様!!」
「shh」

医者と入れ替わりに足音荒く室に来た小十郎に、口許に指を立てて言う。

「大声は怪我に障るぜ?」

床につく男を見て、小十郎が口を噤んだ。

「……何処から連れて来たのですか」
「um…何処と云うか……偶然?」

犬猫とは違いますぞ、と低く唸る様な声で言う。怪我人に配慮して怒りを抑えているようだ。

「I see」

肩を叩いて落ち着くよう言い聞かせる。
そのまま動かずにいると察したのか諦めたのか、小十郎は一人退室して行った。
他人の怪我で小言をthroughできた。luckyだが此処を離れる訳にもいかなくなった。
仕方無く、床に就く男の側に座ってその顔を眺める。
どこかで見た気がする顔だが、こんな派手な頭を忘れるものかと思うと気の所為か。……地毛?

「いてぇ」

髪の毛を掴んで引っ張ると床の中から短く呻いた。

「起きてるなら礼の一つも言えよ」

俯せに寝ていた男は腕の力だけで起き上がり、心底うんざりした顔で淡々と言った。

「これはどうもありがとうございます何のお返しもできませんで」
「…って、出て行くのかよ!」

浴衣一枚掛けただけの恰好で廊下に出ようと障子に手を掛ける。

「怪我は!」
「お陰さまで楽になりましてどーもぁたっ」

言いながら敷居に躓いて、転んだまま蹲って動かなくなった。

「ほら見ろ」

転んだ男に手を差し出すと音を立てて払い除けられた。

「動けるなら帰るべきだろ」

平静な口振りで言う癖に眼光は鋭い。
目が合うと諂うように笑った。

「……動けるならな」
「な…、ぃ…っ!」

四肢をついた背を踏み付ける。手当てしたばかりの傷を探るように踏みながら、廊下へ向けて声を張り上げた。

「成実!」

指を鳴らして暫く待つ。
そのうち足音がして騒がしい声が近付いてきた。
どんだけ耳いいの、と驚いた足下の声は無視した。こっちが知りたい。

「呼んだか政宗!?」

嬉しそうに顔を出した成実に足下で這いつくばるものを指差す。

「これ見張ってろ」
「おっけー!」
「桶?痛…っ」

成実は、呟いた男の声を無視して髪を鷲掴むとその背に腕を回し力任せに引き上げて、脇に抱え上げた。

「っ!!」

乱暴に抱え上げられた衝撃で傷に響いたか開いたかしたのだろう。泣きそうだったが声を出したくないのか必死に口を押さえていた。

「───っっ!!!」
「……成実…」

何を言えばいいのかと迷っている間に、成実は男を抱えたまま足音荒く部屋に入っていって文字通り床に投げ捨てた。
怪我人を、それと知ってその行為だ。故意でも悪意でもないのが成実の凄い所だ。
後の面倒を成実に任せて部屋を後にした時、銭でも落としたのか軽い金属音が聞こえた。


何かが脳裏を掠めた気がした。


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I love sixpence,
jolly little sixpence,
I love sixpence
better than my life;

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2014/11/15 ( 0 )




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