だから早く俺のところに堕ちてきて4*


 突然すぎる私のキスに、松永さんも懸命に応えてくれる。夢中になって彼の唇を追い求め、自らの舌を彼の舌に擦り合わせた。
 松永さんも私を必死に求めてくれて、舌の動きも性急なものに変わっていく。互いの熱を貪り合い、溢れる唾液を喉の奥に流し込んだ。止まないキスが嬉しくて、加速していく欲を止められそうにない。
 それでも時間が経てば、次第に息苦しさに限界を感じてくる。一度勢いを弱めれば、没頭していたキスの余韻を残しながら松永さんの唇も離れていく。でも完全に離れる寸前、一瞬だけ彼は、自らの唇を私の唇に押し付けてきた。

「ンッ、」

 その僅か1秒に、彼の強い想いを感じ取って胸が高鳴る。薄く瞳を開けば、荒い呼吸を整えている松永さんがいた。欲に濡れた瞳に、蕩けた顔で呆けている私の顔が映る。

「……ごめんね、がっつき過ぎた。余裕なくて、つい……」

 俺かっこ悪いね、なんて照れながら呟いている。掠れた低音の囁きに、心がまた掻き乱された。
 憂いを帯びた表情でそんな事を言うんだから本当にズルい。本気で想われているんじゃないかって期待してしまう。
 脳内にこびりついている彼の「好き」が、本気の告白なのか演技なのかはわからないけれど、今となってはどうでもよかったし、深く考えたくもなかった。だって私はもう、戻れないところまできてしまったから。

 ただの先輩と後輩でしかなかった松永さんとの関係は、今日、一夜を共にしたことで全部壊れてしまった。
 きっとこの行為が終われば、明日になれば、冷静に戻った私は今日の出来事を後悔しているんだろう。ただの憧れでよかったのに、見ているだけで満足だったのに、明日からはもう彼の事を、ただのファン目線で見つめることができないのは一抹の寂しさがあった。
 抱かれた相手として認識してしまえば、異性として意識してしまうのは避けようがないから。恋愛に興味がない私にとって、その現実はあまりにも重すぎる。

「松永さん、お願い……いれて」

 だから、もう。どうせ後で後悔するんだから、今だけはこの時間を楽しまないと損だって、後ろ向きな気持ちを無理やり方向転換させた。楽しむという表現もおかしいけれど、この行為を止めなきゃと思う気持ちは、既に私の中から消えてしまっている。きっと一生に一度きりの経験だ、今は何も考えず、この甘い快楽に縋っていたい。

「俺がほしいの?」
「うん……」
「本当に?」
「え……なんで疑うんですか……」
「……早く終わらせたいから挿れてって言ってるなら、嫌だなって……」

 拗ねたような口調に目を丸くする。まさか、そんな疑念を抱いていたなんて思っていなかったから拍子抜け。でも、松永さんがそう思ってしまうのも仕方ないかもしれない。あからさまに「えっちしたくない」空気を出していた私が、急に積極的になった理由がわからなければ訝しむのも当然だ。
 ……それでも、やっぱりそんな風に思われていたなんて意外だ。だって松永さんの言葉は、裏を返せば「セックスを終わらせたくない」という意味に捉えられるから。私相手でも、そんな風に思ってくれていたのなら純粋に嬉しい。相手が憧れの人だから、余計に。

「そんな訳ないじゃないですか……」
「……確かめてもいい?」
「え」

 松永さんの指先がつう、っと太腿を撫でた。

「ひゃ……っ」

 両脚を担がれている体勢で身動きができない私は、際どい場所へ滑り込む松永さんの手を止める術がなかった。
 触れてほしかったから止める気もなかったけれど、感覚神経が鋭くなっている身体は、些細な刺激でも過剰に反応してしまう。それが恥ずかしくて反射的に逃げようとしてしまう衝動を、寸でのところで思い止まった。
 ここで拒んだらまた、松永さんは私に触れてくれなくなる。それだけは嫌だったから。

「あっ、そこ……ッ」

 潤いで満たされている秘裂に彼の手が届く。ぬかるみに指先の感触が伝わって、ピクピクと身体が震えた。
 松永さんの喉仏が上下して、熱い息が降る。粘膜を掬うように、割れ目を指の腹で撫でられた。

「あ、ぅ……ん」
「すごい、こんなに濡れて……」

 指先で割開かれた奥から愛液が溢れ出す。浅い場所でくちくちと動く指に翻弄されて、無意識に腰が揺れてしまった。微弱な快楽では物足りなくて、やらしい動きで男を誘う。

「やっ、だめっ、ナカに……ッ」
「……ん、なに?」
「早く、いれて……奥が疼いて辛いんです……っ」

 未だかつて、こんな直球で大胆な殺し文句を男に向かって告げたことなんてない。かなり恥ずかしいことを言ってる自覚はあるけれど、羞恥心も自制心も吹っ飛んでしまうほど、先走る興奮が抑えきれなかった。
 これだけ必死に訴えれば、松永さんも私の本気を感じ取ってくれたようだ。早く終わってほしいから挿入を望んでる、なんて疑いは晴れたようで安心する。そして彼の長い指が2本、膣の奥深くへ埋まった。


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