アフィリエイトの文具評論家ブログ
付録:選挙と鉛筆 - 懐疑論者のために
2010/07/11 19:30


 鉛筆は耐熱耐圧耐水耐光性に優れ、筆圧や筆記角度も意に介さず長期保管も可能で、投票用紙に使われる耐水紙にも書ける筆記具です。消しゴムにはめっぽう弱いんですけどね。そして日本の消しゴムは世界最高水準にあると思われます。



 ときに、日本の公職選挙では投票所に鉛筆が備えつけられているのですが、それで投票することに不安を抱く選挙人(有権者)は少なくありません。
理由はもちろん鉛筆が消しゴムで消せること──改竄のおそれにあります。
これに疑問を持たないのは教条主義者くらいなものでしょう。

 このことがにわかに注目されたのは政権交替後の国政選挙からですが、選挙管理委員や開票作業にあたる公務員が政権交替後ごそっと入れ替わったわけではなく、以前から不安視されており、1960年代まで遡れます。
→「大事な選挙に鉛筆書きとは思い乍らその人に「鉛筆でなく、筆と墨はありませんか」ときくと「鉛筆書きでよろしい」といいますから用紙に書き入れて封筒に入れて糊ではり記名をしてから「封に割印は」とたづねますと「割印は捺さなくてもよい」と言われ」衆議院会議録情報 第039回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号昭和三十六年十二月一日(携帯/PC)
 そこで、各都道府県に加え中央選管を擁する総務省自治局選挙課を合わせた47選管+1部署にボールペンと青インクの使用可否を尋ねてみました。

 6割以上は可としながらも即答したのは10件ほどで多くは難色を示し、不可なりやと結論求めれば可と答える、という具合でした。その場合でも鉛筆使用を勧められ、また最終的な判断は投票及び開票管理者個々が行う、と但書きをつける回答も多かったのです。
 難色を示し、また不可とした理由は主にインク汚れと、ボールペンでは特定されるということでした。

 インク汚れが問題となるのはそれが原因で読み違いを起こし、無効票(公選法68条2項8号(携帯/PC))にされるため。汚れと意図的な点は区別できると思いますが、文字がゲシュタルト崩壊することもあるんでしょうね。

 特定される、というのは同法52条「投票の秘密保持」違反にあたるようです。
しかし特定するには投票管理者や立会人が選挙人の手元を注視しそのことを開票管理者へ報告、となるため(同法226条から228条違反)、責めを負うのは管理者や立会人になります。

とはいえ特定されると選管が言うからにはそんな時代や地域があったのかもしれないですね。
けれど不正は無い、と選管は言うので特定もないと思います。

 なので誰が青インクで書いたかなどわかるはずがありません。
 そのほか、票に線や点を書き足せば無効票にできるのですが、青インクは想定外だったりするんじゃないでしょうか。
 しかしこれもまた、ちまちま書き加える改竄よりは投票用紙を丸ごとすげ替えるほうが当選を左右しやすいと考えられるため杞憂でしょう。



 そんなこんなで投票所に鉛筆が備えられるのは予算などの面から私は理解するんですが、かといってそれ以外の筆記具を拒む理由にはならんでしょう。
 ただ鉛筆以外を用いる場合、候補者の名入りは×とか、黒以外で書く場合、集団的に行うのは控えてほしい、だそうです。



 さて、この選挙事情は文具屋、とくに都市部の文具屋にとっては好機と思われます。
当地の選管に筆記具選択が原則自由であることを確認したうえで、耐水紙(投票用紙)に合う鉛筆以外の筆記具を、試し書きできる状態で展示すれば、興味を示す選挙人もいるんじゃないでしょうか。
もう選挙終わってますけどね!

 耐水紙には水性インクは不適で、油性ボールペン(低粘度油性除く)や油性/アルコールマーカーが適し、とくに近年売上が落ちている油性ミリペンは5秒と経たずに乾きます。また水性でもパイロットマルチボールは例外、15秒ほどで乾きます。
役所の不備をついて商売するとはけしからん! と怒る役人もいそうですが。



 以下参考に。
公選法では筆記具の定めなく原則自由選択です。
ボールペン青インク
使用可
やや難色を示した選管含む
323932
不可5
強く難色を示す7不明2
不可59
回答を避け、各市町村へ問合わせるよう促す4
選挙期間中、電話で問い合わせました。ご回答ありがとうございました。
不可と答え、また強く難色を示した選管の担当者には、当人が使っている筆記具についても尋ねました。
鉛筆:4、ボールペン:2、回答拒否:1、訊き忘れ:5
 ちなみに、投票所では投票録を作成していて、投票管理者や立会人がそれに署名するのですが、その際に使う筆記具を当地の管理者らに尋ねると、油性ボールペンとのこと。鉛筆は庶務に止められていました。


comment (0)


prev | next

ブログTOPへ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -