Rachel

topmainmemolinkclapmail

あのね、だいすき [1/3]


※夢主が喋れます。


いつも朝一番に起床するのはサンジだった。
そして朝食の準備をする前に、不寝番にお疲れ様と飲み物を差し入れるのが日課になっていた。
今日はフランキーだった。

「おらよ」
「おう、さんきゅー!」

これから仮眠をとるというフランキーにコーラを渡してから見張り台を降りると、甲板にはいつの間にかブルックがいた。

「ヨホホホホ!おはようございまーす!いつも御早いですねー!」
「おめーもな」

一人ギターを奏でるブルックを横目にダイニングルームへ戻ると、今日も麗しいロビンがテーブルで新聞を読んでいた。

「おはよう、いつもご苦労様」
「ロビンちゃん!すぐに朝メシ作るから!」

ハートを飛ばしながらも、いそいそとキッチンに入ると、サンジは朝食の準備に取り掛かる。
下ごしらえしておいた食材を鍋やフライパンに投入する頃には、今日も美しいナミがやってきた。

「おはよ、いい匂い〜」
「ナミさ〜ん!今日の朝食はクロワッサンです〜!」

オーブンのタイマーが鳴り響いた頃には、おかずも出来上がり、食卓に並べているとブルックもようやくお目覚めロックを止めたようだ。

(さて、今日も寝坊助どもを起こしにかかるか…)

ギターの音色ぐらいで起きる連中だったら、誰も苦労はしていない。
ため息を付きながらダイニングルームを出ると、今日も可愛らしいリルと出会った。

「あ!リルちゃん、おはよう!」
「うん…」

眠そうに目を擦ったリルは、まだ半分夢の中なのか、前髪を跳ねさせたまま小さく頷いた。
おでこを撫でるように寝癖を直してやると、突然、覚醒したようにリルが顔を上げた。

「サンジ…」
「ん?どうした?」

サンジの袖をちょんちょんと引いたリルは、何かを訴えるように口元に手を添えた。
これはリルの耳を貸しての合図。
別名「愛の囁きタイム」

サンジが屈むと、リルは嬉しそうに耳元に唇を寄せてきた。

「あのね、サンジ…」
「うん?」

耳に掛かる吐息がくすぐったい。
そんな、じれったい感覚を楽しみながら、次の言葉を待つ。

「私ね、サンジのこと…」
「うん」

しかし、そんな甘い空気もここまでだった。

「キライなの」
「うん…んん?」

耳元で小さく小さく囁かれた言葉が理解できなくて顔を上げると、言葉の意味とは裏腹に満面の笑みのリルがいた。
脳の処理速度が追い付かず、左から右へ流れてしまった言葉に、サンジは再び耳を澄ませた。

「な、なんだって?」
「だから、キライなの」
「えっ?よ、よく聞こえなかったんだけど…」
「もう!サンジのことキライって言ったの!」

自分は幻聴でも聞いているのだろうか。
しつこく何度も聞き返すと、リルはウンザリしたようにダイニングルームへ逃げ込んだ。
後には立ち尽くすサンジだけが残った。

およそ現実が受け入れられなくて、サンジはフラフラと男子部屋に行き、フラフラと寝坊助どもを叩き起こした。
そのままダイニングルームに戻ると、そこにはいつもの席について朝食を待つ楽しそうなリルがいた。

程なくして背後から騒がしい一団がやってきて、一斉に朝食が開始された。
それは、いつもと同じ光景だった。
まるで変わらない日常に、先ほどの出来事は夢だったのかと疑いたくなった。

(もしかして、おれは立ったまま寝てたのか?)

気付けば食事は終わり、いつの間にか皿も洗われていた。
無意識のうちに後片付けを終えたサンジは、心を落ち着けるために新しい煙草に手を伸ばした。

(そうだ、きっと悪い夢だったんだ)

だってほら、甲板からお子ちゃまチームの楽しそうな声が聞こえる。
キャッキャウフフとまた鬼ごっこでもしているに違いない。

(大丈夫、これは日常だ…そして、あれは夢だ…)
←prev * back * next→
/top/index
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -