「よーし!うたげ…じゃねぇ、メリークリスマース!!」
そんな船長の掛け声でパーティは始まった。
しかしフタを開けてみればただのドンチャン騒ぎで、いつもの宴となんら変わりなかった。
(ロビン…上手くいったかな…)
サンジ特性のクリスマスケーキを頬張りながらも、どこか緊張していると背後から声をかけられた。
「リルちゃん、ケーキどうだい?」
なんとか笑顔で頷いたが、これが中々難しい。
いつも通りにしなくては、と思えば思うほど、自分が不自然に思えて仕方ない。
何も知らないフリをするのが、こんなにも大変なのかと思い知るリルだった。
「大丈夫?具合わりぃ?」
「!?」
不自然な態度よりも体調を心配されてしまい、リルは後ろめたい気分だった。
そんな憂わしげなサンジの横から悪戯な言葉が飛んできた。
「もうすぐサンタ来るから楽しみんでしょ?」
「えっ!?」
まるで何かを企んでいる時のようなナミの顔に、思わず心臓が跳ねた。
どうしようかとあぐねいていると、少し遠くにロビンの姿が見えた。
彼女はリルを見るとニッコリと笑って、親指と人差し指で丸い形を作った。
どうやら誰にも見つからずに男子部屋へ侵入できたようだ。
「そ、そっか、楽しみだね」
ロビンのOKサインに嬉しくなったリルは、自分以上に挙動不審なサンジにも気付かずに満面の笑みで頷いた。
それから夜が更けるのは早く、床に就いたリルは高鳴る鼓動を抑えるのに必死だった。
だって今日は24日、サンタさんがやってくるのだ。
そう、サンタさんが…
(ホントに、来たら、どうしよう…)
真実を知りたいような、夢を見たいような…
そんなドキドキ、ふわふわした思いに包まれて、目を閉じても気分が高揚していた。
「リル?寝れないの?」
「……っ」
「早く寝ないとサンタ来ないわよ?」
何度も身じろいだのがバレたのだろう、ナミは何でもお見通しと言わんばかりに笑った。
それからは中々寝付けなかったが、何度か寝返りを打った頃にやっと睡魔に襲われた。
「リルちゃん…」
夢の中で誰かに呼ばれて、頭を撫でられたような気がする。
その優しい温もりはどこか覚えがあって、リルが開かない目蓋を必死に上げようとすると視界をふさがれた。
「っ…」
「ダメだよ、良い子は寝なくちゃ」
一瞬だけ見えたのは真っ赤な衣装。
ぼんやりとして顔はよく見えなかったが、大きな髭の向こうに優しい眼差しがあった。
(あぁ、やっぱり…)
リルがゆっくりと目を閉じると、塞がれた手もそっと退いた。
去年のプレゼントをくれたのは、あなただったのね。
わたしに沢山の仲間をくれたのは、あなただったのね。
「メリークリスマス」
額に感じる柔らかい感触と共に、リルは夢の中へと誘われた。
このサンタは、まだ知らない。
自分の枕元に小さな赤い箱があることを。
ヨレヨレになった緑色のリボンを。
しかし、それは音になることもなく喉の奥に消えていった。
飲み込んだ甘い秘密
(あれ?なんだ、この箱…)
(サンジ!見て!サンタさんがプレゼントくれたの!)
(え?あ…、よ、良かったね)
(うんっ!サンジもサンタさんに貰ったの?)
(え?えーっと…)
(良かったね!)
(サンジ!見て!サンタさんがプレゼントくれたの!)
(え?あ…、よ、良かったね)
(うんっ!サンジもサンタさんに貰ったの?)
(え?えーっと…)
(良かったね!)
title by 反転コンタクト
2014/07/03
プレゼントの中身はご想像にお任せします。
ただ単に思いつかなかっただけですが…;
ただ単に思いつかなかっただけですが…;