会話文・短文(GO) (タイトル一覧)
節操ありませんので注意

余剰回想(12/11/02)
 低い机を挟んで、ふたり。僕たちに課されたもの。夏が終わる日はそう遠くない。
「ねー、俺偉い?」
「何で」
「ほらぁ、課題自分でやってる! な!」
「うん……偉いね……」
 当たり前だからね、なんて言う必要はない。歯の隙間から笑い声を漏らす彼には分かっていることだ。去年の夏からずっと言い続けていること。
「髪邪魔じゃないの?」
「あー……うーん。くくる」
 そう言って影浦はクッキーの袋を留めていた輪ゴムで手早く髪をまとめ、また課題に向き直る。去年はどうだったか。
 そうだ、髪はまだ長くなかった。
「暑苦しいからね」
「もうくくりましたー」
 じきに夏が終わる。最後の夏が来るまで、君を嫌う理由を一つくらい残しておけばよかった。
(三重内と影浦)

間違い探し(12/11/01)
 ポケットに入れた携帯が震える。バイブのパターンで分かった。着信。
 グラスから目を逸らさずに携帯を開き耳にあてる。
『観月、私だ』
「何よ。日食の話? 見てるわ。もうすぐピークみたいね」
『そっちが少し早いか』
「ええ」
 影が重なった。まるで、言いかけて口をつぐんだ。
 環から光がこぼれる。
「……指輪みたいねえ」
『こちらはまだだ』
「知ってるわ」
 電話がぶちりと切れた。
 ポケットに入れ直した携帯をまた取り出して握る。きっとまた、かかってくる。
(観月と栄西)

結果は先で待つ(12/10/30)
 知らないだろう。お前が俺を見ている時間の何倍も俺はお前を見てる。
 自陣に攻め込まれる度に空気がぴんと張り詰めて、そこに身を置いたままお前は走り出す。そんな後ろ姿を見ていることしかできない。
 あ、抜かれた。
「影浦!!」
 振り向いた。なびいた髪が美しかった。
 手のひらが熱を持つ。足の裏がどくりと疼く。こんな瞬間のくだらない歓喜。お前はずっと知らなくていい。
(影浦と三重内)

不可思議呼吸(12/10/30)
※影浦×三重内 ちょっと注意

ナイトライト(12/07/10)
「受け入れるかどうかは別問題として、そう思われてるってことについては少し興味深いね」
 だろ? と無理に昂らせた声がそのまま顎を伝って落ちた。だめだ。始末におえない手汗をズボンで拭う。
 三重内がすっと顔を上げた。プリントに名前を記入し終えたのだろう。
「それで?」
 そう、それで? なのだ。真っ直ぐに射抜くような目、という表現が使えないのが惜しいくらいの視線にとらわれた。
 思わず真下のプリントに目をやる。三、重、内、光、太。
 光太。
「……光あるところに影はできる」
「はあ」
「お前は俺の光だ!」
「おしゃべりな影だね……」
(影浦と三重内)


揮発性愛撫(12/07/06)
「暑苦しい」
「?」
「それ」
「マフラー?」
「外せ」
「でもお前掴むだろ」
「……」
「見ろよこれ、こんな伸びちま痛っ!」
(ハッカーとマフラー)

ビタースウィート(12/07/05)
*喫煙描写あります

仲良しをあげるよ(12/03/23)
「今日こそは!」
「?」
「覚悟せよ真田っ!」
「んっ……」
「う」
「……?」
「奪ってやったわあっ! どどどうだ悔しいであろうっ!」
「覚悟せよ、烏丸?」
「むっ!?」
「……取り返したぞ」
「み、見事……」
(烏丸と真田)


右手(12/03/03)
「ちょっと」
「?」
「手、しもやけになってない?」
「……」
「そこ」
「……あー……ああ」
「気付かなかったのか?」
「気付いてたけど」
「は?」
「別にいいかなって」
「よくない」
「……」
「なに?」
「……で、これしもやけなの?」
「だからそう言ってるだろ!」
(氷里と洞爺)


へ へ もへじ(12/03/02)
 歩くの遅い。そう辛辣に飛ばした言葉をバネにするようにして三重内は足を早めた。俺は少しあとをついていく。
 足元に黒い影が見える。ちょうど正面から夕日が射していて、影の根元をぽつぽつとあいつが歩いていた。
 三重内。
 無視される。
 思い付きでノートを取り出し、そこに見開きで大きく2文字を書いた。
 すうっと息を吸って勢い良く前に掲げる。反応はない。こっちを見ていないのだから。
「ですよねー」
 答えない。足元には影がいた。
 信号待ちをする彼の頭が微かに揺れていた。頭のところを踏んづけて、それだけで俺は彼を捕まえてしまえたような気持ちになる。
「スキ!!」
 影が大きく歪んだ。
(影浦と三重内)

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