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ある日突然なぜか中身だけがスーパー神モテアイドルF6となってしまった、見た目は平々凡々な私の友人、松野家の六つ子達。
彼らがクズニートからいきなりそんな変貌を遂げてしまった時には、有り得なさすぎて爆笑のあまり気絶したりしていたが、現在ではどうにか謎のイケメンオーラに慣れつつある。と言っても未だびっくりさせられることも多々あるけれど。
彼らの中身がF6になってからというもの、それまでただの仲のいい女友達、あるいは財布と思われていた私への態度もがらりと変わった。
やれプリンセスだの子猫ちゃんだの、漫画でしか聞いたことのない呼び名で私を呼ぶのとかいい加減やめてほしい。いや、私も一応女性であるし少女漫画のヒロインのような扱いに憧れていないこともないが、なまじ元の彼らも知っているためにその扱いの差に微妙な気持ちになってしまう。そもそも私自身、そんな扱いをされるような素敵な女性というわけでもないので余計そう思う。
そういった私の気持ちに構わず、元の彼らと同じぐらいの強引さでもって姫扱いをしてくる六つ子と会うのは面白いのと気後れするのと半々だ。これもなぜか分からないけど、急激に私を恋愛対象かのように扱いだした以外はいい奴らなんだよね、基本的には…

今日はそんな彼らに義理のバレンタインチョコを渡そうか渡すまいか、考えながらデパートのバレンタインコーナーをうろついている。
F6化する前は『同年代圧倒的最底辺カーストから一瞬でも抜け出せる唯一の希望の光』という理由でせがまれ、百均で買った一ダース入りのチョコをあげたりしていた。
六人で一パックだというのに嬉し泣きしながら食べていたのを見ていたのも今では良い思い出と…いや良くはなかったかな確実に。
だが今年はそれがない。バレンタインのバの字もチョコのチの字も出してこない。二月に入ったとたんにリア充への恨みを募らせながら私に遠回しなチョコアピールをしてきていたのが嘘のようだ。
さて、どうしようか。お洒落にラッピングされたブランドチョコを眺める。
デザインに凝っているもの、お酒入りのもの、高級な材料を使ったもの、色々ある。
コンビニのお手軽チョコではなくこうしてお高めのチョコを見に来たのは、F6の彼らにあげるならこっちの方がいいと思ったからだ。中身がすっかり変わってから何だかんだ良くはしてもらってるし、日頃の感謝もちょっぴり込めて。
ただ、例年のように直接ねだられたわけじゃないからなあ。買わなくていいなら別に買わないしな。お礼の気持ちなら他の方法でだって表せるし。
現在の彼らは、外見は変わらないのにやたらと女性からアイドル視されるようになっているので、今年は私があげる必要もないかもしれない。
そうだ、きっとファンの子達からたくさんもらえるだろう。むしろチョコには飽き飽きしているかもしれない。
そう考え、六つ子達へのチョコは買わないことにした。しかし見回っているうちに手作りチョコにチャレンジしたくなってしまい、自分用にと材料と道具を買ってしまった。
まんまとデパートのバレンタイン商法に乗せられた。ま、たまにはこういう女の子らしいことも悪くない。
少々華やかな気分になりながらバレンタインコーナーを出る。ついでに他の買い物もしていこうか、と考えていると不意に後ろから声をかけられた。
振り向くと…



「こんなところで君に会えるなんて、ラッキーだな」

「何浮かれた顔してんだ?ブス」

「その荷物、お持ちしましょうか」

「っ…何故、こんなところへ…」

「ぼくのオードリーヘップバーン!」

「わ、今日のコーデすっごく可愛い〜!」