No pain No gain.
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「……じさん、おじさん」

怠くて堪らなかったけど、俺を呼ぶバニーの声が聴こえてきて、しかもその声が迷子の子供みたいな不安に満ちた声で、俺は重い瞼を開けた。

「おじ、さん……」

視界に映るバニーの顔は今にも泣きそうで、俺は思わず笑ってしまった。

「なんて顔してんだよ」
「だって……」

バニーの腕を引っ張って、俺の上に倒れ込んできたバニーの身体を抱き締めた。
ふわふわしたバニーの頭をくしゃくしゃに撫でてやる。

「ちょっ…、何するんですか…」
「だあーって、かわいくってさあ」
「か、かわいいって……、心配したんですよ?なかなか意識が戻らないので」

そうだ、俺はバニーとのセックスが気持ち良すぎて意識がぶっ飛んだんだった。
途端に顔が熱くなる。
赤くなってるであろう顔を見られたくなくて、俺はバニーの肩に顔を埋めた。

「き……気持ち良かったんだよ、心配させて悪かったな」

セックスで意識が飛ぶなんて、勿論初めての経験だった。
顔を隠したまま、照れ隠しにバニーの頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜてやる。

「や、やめて下さいよ」

バニーが俺の手首を掴み、ベッドへと押し付けてきた。
上から見下ろされる体勢になり、途端に気恥ずかしさが込み上げる。
また、顔が熱くなってきた。

「……かわいいのは、おじさんの方ですよ」

ついさっきまで、泣きそうな顔をしていたバニーの表情が、雄のそれへと変化するのを俺は見た。

「バニー……」

バニーの顔が近付いてきて、俺は瞼を閉じた。
ふわりと押し付けられた唇は温かくて柔らかく、けれど押し付けられたまま何も仕掛けては来ない。
そのまま離れていく気配に、俺は自分からバニーの首へと腕を回した。

「おじさん…?」

困惑気味なバニーの声に、俺は唇を開き舌を出してバニーの唇を舐めた。

「もう終わり?足りないんじゃねーの?」

肩膝を立て、太股に当たるバニーの股間を緩く擦ってやるとバニーの目元がたちまち朱に染まった。

「なっ……」
「さっきから当たってんだよ、バニー」

物足りないのは俺も同じだった。
この歳になって、一回り以上下の、しかも男に、意識が飛ぶようなセックスを教えられて、その上自分から誘うような真似をすることになるとは思ってもみなかった。

「……もう、知りませんよ。おじさんが誘ったんですからね」
「うん」

バニーが唇を押し付けてきた。
今度は唇を薄く開いて、少し遠慮がちに俺の唇を舐めてきたので、俺は舌を伸ばしてバニーの舌を舐め返した。
それをきっかけに、遠慮がちなキスは遠慮の無いキスへと変わる。
唇も唇の裏側も、歯茎も、上の歯も下の歯も、上顎や下顎の内側も、舌も舌の付け根も全て、舐め尽くされた。
気が済んだらしいバニーに漸く解放されて、口の中に溢れる唾液を飲み込んでやっと、まともに呼吸ができるようになった。
酸欠のせいか興奮のせいか両方か、頭がくらりとする。

「……すげーな、バニー。クラクラするわ」
「キスくらいで何言ってるんですか。まだまだ、これから、でしょう?」

どうして俺は、こいつのことをかわいいだなんて思ったんだろう。
今は無邪気な、悪魔に見える。

「ははっ、……あのー、一応おじさんだから、手加減してくれよな?」
「手加減しようとした僕を、煽ったのはおじさんですから」

にっこりと微笑みかけられて、俺は引き攣った笑みを返した。



 
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