No pain No gain.
結局その後、2ラウンド付き合わされた。
正常位で一回、それから騎乗位もやらされて、俺はもうクタクタだった。
意識を飛ばしたりすることはなかったが、とにかく眠くて怠くて、バニーの上から降りてベッドの上に伸びてからの記憶がない。
そんなわけで、昨夜はアラームもセットせずに眠りに落ちてしまったわけだが、一人暮らしの長い俺の体内時計は正確なようで、朝が来ると自然と目が覚めた。
朝の眩しさにゆっくり薄目を開くと、目の前にバーナビーの顔があった。
「おはようございます」
「んァ、……おはよ」
バーナビーの表情が、ふわりと柔らかい微笑みへと変わる。
こいつ、こんな顔もできるのか、なんて俺が驚いていると、バニーの顔が近付いてきた。
キスされるのはわかっていたけれど、瞼を閉じてそのまま受け入れた。
だってもう、拒む理由が見当たらない。
「好きですよ」
「うん」
うん、わかってるよ、バニー。
「……うん、じゃなくて」
「はい?」
バニーの眉間にはうっすらと縦皺が入っている。
俺は何か怒らせるようなことをしたんだろうか。
「おじさんはどうなんです?」
「ふぇっ?」
「好きだって、言ってくれないんですか?」
「えぇっ?……いや、それはちょっと」
こーんな朝っぱらから、素面で好きだなんて言えるか、恥ずかしい。
そもそも、エッチはしたけど、俺はバニーのことが好きだなんて一言も言った覚えはない。
虎徹が視線を反らすと、バーナビーは大きな溜息を吐いた。
「まあ、いいです……昨夜のおじさんは可愛かったですし」
「うあァッ?!」
ぐいっと力強く尻の肉を揉まれて、虎徹の口からは情けない悲鳴が漏れる。
割れ目の間へと指先が及んでくると、虎徹は慌ててバーナビーの腕を掴んで制止した。
「コラッ!どこ触ってんだ」
「いえ、怪我させてないか心配で。それに、中に出してしまったので……一応、処理はしたつもりなんですけど」
昨夜の行為を思い出させる生々しい会話に、みるみるうちに虎徹の顔が赤く染まる。
「おまっ……、しょ、処理って」
「指でできるだけ掻き出して、身体も濡れタオルで拭きましたよ。おじさん、起こしても起きなくて」
「……いやー、その、ゴメンな?」
そういえばシャワーも浴びずに寝た割には、身体がすっきりとしていた。
どうやらこのベッドのシーツも換えてくれたらしい。
「いえ、僕の方こそ、無理をさせてしまったようですみません。次からは気をつけます」
「あー、うん。俺、もうおじさんなんだから、もう少し気遣かって……て、つぎィ?」
ついうっかり流されてしまう所だったが、さりげなく提示された次回予告に俺は食いついた。
「はい、僕も気を付けますから、おじさんもストレッチしておいて下さいね。身体硬すぎますよ」
「なっ……、つ、次なんかねぇって」
バニーの目がすっと細くなる。
次の瞬間には両手首をベッドに押し付けられ、バニーにマウントポジションを取られていた。
「どうしてです?」
「どっ……、どうしても、だよっ!」
バーナビーの顔が近付いてきて、虎徹は反射的に顔を背けて避けた。
無防備にバーナビーの前に晒されることになった耳を、ぺろりと舐められる。
虎徹の背筋がぞわぞわと震えた。
「うぁ……」
「……僕とのセックス、気持ち良くなかったですか?」
わざとやっているんだろうが、舐められて濡れた耳にバーナビーの吐息が掛かる。
虎徹は仕方なくバーナビーの方へと顔を向けた。
「だーっ、気持ち良かったよ!」
「なら、いいじゃないですか」
何か言い返そうと思ったが、またふわりと笑ってみせるバニーの笑顔に俺は毒牙を抜かれた。
その笑顔は反則だろ。
くっくっと、虎徹の喉から笑い声が漏れ、バーナビーは虎徹の拘束を解いた。
「おじさん?」
不思議そうに首を傾げるバニーに手を伸ばし、俺はくしゃりと頭を撫でた。
俺もたぶん、お前のこと好きだわ、バニー。
俺は黙って、バニーの頭を抱き寄せて唇を合わせた。
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