変な女がいやがる。そう思った。
「東さん。ちょっといいか」
あの女いるだろ?そう、あのC級の顔面が派手なヤツ…なんかすげぇ気味が悪ぃんだよ。何がって聞かれたら上手く言えねぇんだけど、とにかくなんかすげぇ気味が悪いんだ。東さんもそう思わねぇか?
ーー"気味が悪い"。女に対して使っていい言葉では無いのは分かっているが、それでも言わずにいられない。隔靴?痒の感。もどかしく、歯痒い。あの女は、何かが変。
「…あー成程。はは。確かに変だ」
東さんが親指と人差し指で輪っかを作る。輪っかの隙間から女を覗き見る横顔は、その穏やかな口調とは掛け離れた鋭さを持っていて
「うーん。これは灯台下暗しって言うのか?」
「は?」
「アレで当たるんだから、確かに気味が悪い」
灯台下暗し。近くにありすぎて照らされない、当たり前すぎて見逃した "アレ"とは、一体。
女がライトニングを構えた。泊一つ分の間を置いて引き金を引く。的の端に掠れた弾丸。何もおかしくないが、何かがおかしい。灯台下暗し。アレで当たるのは気味が悪い…
「ーー、そうか。」
東さん、アンタの言った通りだよ。当たり前過ぎて気付かなかった。どうして"アレ"で当たるんだ。
あの女は一体、スコープも覗かずに何を"視て"撃っている?
「面白ぇな」
あの女は物を知らないだけだ。誰かが教えてやれば必ず強くなる。その誰かとは絶対に、最初に見つけたこの俺だ。
そうだな、まずはスコープを覗くことから教えてやるよ。麻姑掻痒の高揚感。本能に任せて足を進める。
「お前、何隠してやがる」
お前の視ている世界を俺に教えろ
師匠(仮)と弟子(仮)