視て、計算して、撃って、撃って、撃って。魚を避けて"的"に当てる。

トーマも奈良坂くんも古寺くんも凄い。実力だけであんな遠いところから"的"に命中させるんだから、ちょっと変態超えてキモイレベルで怖い。因みにそんなキモ怖い人たちについていけてるB級フリーの私もめっちゃ凄い。私も天才。

天才の私たちと天才の出水。その近くには馬鹿の天才の米屋がいる。うはは、こりゃ勝った。ざまあみやがれ人型近界民。そのご立派な角、羊さんみたいに巻き巻きしてさっさと逃げな。

なんて、そう思ってたのに。


「なんでぇぇ?!!!」


なんで私、ライトニング抱えて基地の屋上を逃げ回っているんだろう。


「叫ぶ暇あんなら視ろよ」
「視るだけなら私いらないじゃん!さっきの家からでも視れたもん!私視力めっちゃいいもんだってお布団入ったら携帯見ないしブルーベリーも食べるしたまに高いとこに登って大いなる自然を味わってみたりす、」
「うるせぇっつってんだよクソガキ!あのままあそこに一人でいたらお前またキューブになんだろーが!」
「怒んないでよ普段優しい人が怒るのってギャップですっごい怖いんだから!!」

『2人ともうるせーから黙りなさい』


何故こんなことになったのか。全てはあのワープ女のせいだ。あのワープ女が屋上にウサゴリラ放ってトーマ達の狙撃場所を奪ったせいだ。
そのせいで出水の援護を十分にできなかったし、あのお魚近界民は傷塞ぐとかずるい事するし、出水は緊急脱出しちゃったし、京介も緊急脱出しちゃったし、あの時の京介の顔は、本当に見てられなかった。


「あの穴だらけビッチ絶対許さん!」
「お前いいセンスしてんじゃねぇか」
『頼むよ女子高生。そんな事言わないで』


ワープ女が連れてきたウサゴリラは、さっき見たヤツとは色も数字も違った。多分こいつが雷蔵の言ってた"モッド体"ってやつだろう。中々厄介な能力を持ってる。


「で、視えたのかよ」
「視えたよ」


プレーン体に比べたら速度も遅いしパワーも弱い。でも両腕がキモイ。なんか溶けるから無駄撃ちになるし、攻撃する時は固まるからプレーン体より硬いよ。あれなんかこれ知ってる気がすんな。あっ分かった、泥団子だ。


『風間隊と戦った黒トリガーの能力だな』
「ま、色々複雑なのは分かった。要は目ん玉ぶち抜けって事だろ?」
「そういうこと!」
「よっしゃ。3分で片付けようぜ」


ワープ女が消えてウサゴリラが再び暴れだす。私の腕じゃ絶対にウサゴリラは倒せない。それなら私はトーマと奈良坂くん達 どっちもの援護に入れる場所に移動しよう。
一応ワープ女の奇襲を警戒しなきゃ。あの女が来るのを一番に気付けるのはサイドエフェクトを持ってる私だ。あの女は今どこに、


「……みくもくん?」


ちょっと待ってよ、なんで三雲くんがいるの。なんで三雲くん基地に向かってんの。嫌な予感がする。もしかして三雲くん、


「今から?!」


私めっちゃ先回りしちゃった感じ?!どうしよう未来と過去で三雲くんとすれ違いしちゃった!こんなことってある?!ないよ!あるわけねぇだろ!


「冬島さんお願い!連れてって!」
『ん?どこに?』
「下に!三雲くんがワープ女と魚野郎に」
『あー。ミクモクンってのは知らねーが、それなら大丈夫だよ』
「いや三雲くん吹っ飛ばされてますけど?!全然大丈夫じゃなさそうなんですけど?!」


どこが大丈夫なの!あぁほら足も魚野郎の攻撃くらってウネウネしてるし!どうしよう、ライトニングでここから届く?イーグレットを起動して、いやでも私の腕じゃただの無駄撃ちに…おいやる前から何言ってんだ、無駄打ちでも隙が作れりゃそれでいいだろ!


『大丈夫だって、オジサンを信じなさい』
「、でも」
『待ちに待った舞台だ。邪魔してやるなよ』
「なにそれどういう意味…あ、」


三雲くんの後ろ、半壊した家の影から人が出てくる。見覚えのある紫の隊服に、弧月


「三輪」


…なんで三輪、あんな怖い顔してんの?えっやだ あれ本当に三輪?三輪ってもっとぽやっとしてて可愛くなかった?なんであんな近界民絶許!みたいな顔してんの?親の仇でもとるの?…あ。


「待ちに待った舞台って、そーいう…」


別に三門じゃ珍しくないことだ。四年前に家族を失った人を何人も知ってる。ただ、知ってるだけで その人たちが今どんな思いで生きているのかは分からないけど。

三輪は戦うことを選んだのか。そうか。辛かっただろうなぁ。辛いなぁ。そんな顔にもなるよなぁ。でもだからって三雲くんを蹴っちゃいかんよ三輪。三雲くんが何をしたって言うんだい。みんなびっくりしてるよ三輪。


「…上から援護に入りますか?」
『いや 大丈夫だろ。あいつ風刃持ってるし』
「…風刃、って、迅悠一の」
『迅が本部に返したからな。本部所属の適合者が使うことになってる』
「…そっか」


魚野郎とワープ女は強いけど、もしかしたら、風刃があれば、なんとかなるのかもしれない。私は風刃の威力も能力も知らないけど、三輪みたいに強ければ、絶対に負けないって強い意志があれば


『それに、三輪の援護は名字ちゃんの役目じゃない』
「…うん。そうだね、そうだった。
三輪"隊長"を守るのは私じゃないね」


冬島さん うるさくしてごめんね。いいってことよ、援護頼むぜ、ウチのエースは削れるとこから削ってくなんて地道な作業は出来ねぇ奴だからな。プライドの高いリーゼントですなぁ。困っちまうよなぁ。

冬島さんのだるっとした声が珍しくて面白くて、うはは、と声を出して笑ったらトーマに睨まれた。えっもしかして聞こえてた?うわ聞こえてたっぽい!ヤダ銃口こっちに向けないで!


『名字先輩』
「…古寺くん?」
『突然すいません、会話が聞こえてしまって。三輪先輩の援護は三輪隊に任せてください』
「うん」
『その時は、おれ達の援護をお願いします』
「うん任せて。援護だけは得意だよ」
『頼もしいです』


古寺くんの笑い声は初めて聞いたな。今まで関わりが無かったもんね。意外と柔らかく笑うんだね。いいね、可愛い。今度名字先輩がジュースを買ってあげようね。


『名字』
「なんだい奈良坂くん」
『新型の通信は聞こえていた』
「うん」
『穴だらけビッチはいいセンスだと思う』
「新型全く関係なくない?」


あと奈良坂くんの口からビッチって言葉は聞きたくなかった気がするよ。ほらなんかトーマも微妙な顔してるもん。古寺くんなんてショック受けちゃってんじゃん可哀想に。奈良坂くんたら本当にもう、私が空気を変えてやるか


「ワープ女、今三雲くん刺したじゃん」
『あぁ』
「つまりビッチじゃなくて、痛い!!」
「いい加減にしろやクソガキ」
「イーグレットは人を殴るものじゃないよ!リーゼントなんだからリーゼントらしく拳で勝負をぁいだ!!」
「知らねぇなら教えてやるよ。イーグレットはおマセなクソガキを殴るもんだ」


なにそれ初耳なんだけと。そーかよ、賢くなれてよかったな。ええどうもありがとうでございますよ!
びしり、背の高いトーマの目線に合うように腕を伸ばして中指を立てる。辻みたいにへし折ろうとしてきたらどうしよう、まあ大丈夫か、トーマ優しいし、


「ハァイ命中」
「な、中指ぃぃ!!」


私の中指が緊急脱出した!!嘘だろ!へし折るの方がマシじゃねえか!骨も無くなってんだけど!!


「トーマすごい!!イーグレットで中指だけ飛ばすなんてよく出来るね!天才!!」
「もっと言えよ」
『おーいお前ら、風間隊と諏訪隊くるぞ。菊地原に怒られたくないならちゃんとしろ』
「「はーい」」


いかんいかん。トーマの凄技にテンション上がりすぎて今が戦争中ってこと一瞬忘れてた。キクチハラに怒られたくないからちゃんとしよう。

三輪 頑張って。弱い私はここから応援することしか出来ないけど、三輪なら絶対に大丈夫だって みんながそう思ってるよ。


「…ところでキクチハラって誰?」


貴方が泣いてくれたら嬉しい


マエ モドル ツギ

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -