暑くて、息が苦しくて、目が覚めた。

顔を上げると、何故か頭にタケノコを着けた辻が眠っている。時刻は5時前。そういえば昨日の夜は学校の準備もせず辻の部屋に飛び込んで、お風呂にも入らず寝たんだった。
もそもそとベットを抜け出して自分の家に帰る。今度はちゃんと玄関から。トイレの前で辻のお兄ちゃんに会ったら、なんで俺の幼なじみは男なんだろうな〜。と遠い目をして言われたので、遼くんが女になれば問題ないよ。とアドバイスをしておいた。

お風呂に入って学校の準備をして、お母さんと朝ごはんを食べる。お母さんはいつも通りだった。
ボサボサ頭のお兄ちゃんに、遼くんが女の子になるって。と伝えて学校に向かう。お兄ちゃんは顔を真っ青にしてお茶を零していた。


昼休み。お弁当を片付けていたら米屋がいちごオレを飲みながらやってきた。お行儀悪いな


「仁礼んとこ行くんだろ?はよ行こうぜ」


米屋が私の鞄を勝手に漁り、今朝コンビニで『二礼』の為に買った大量のお菓子を取り出す。おいこら、一個盗んだの見えてるからな。


「『ヒカリ』って仁礼って名前なん?」
「仁礼ヒカリ。知らねーの?キャラ濃いぞーアイツ」
「同じクラスになった人しか覚えられん病気」
「あらそう、難病ね」


私は、学校全員と友人な米屋のようにコミュ力お化けじゃないからね。同じクラスになっても話した事ない人は覚えられんのんですよ。そう思いながら、お弁当箱を鞄に直して立ち上がる。


「よし、行くか?」
「行く、案内よろしくお願いします」


ぺこり、頭を下げる。大量のお菓子が入った袋は米屋が持ったままだ。『ヒカリ』に使わないファイルを貰った。お礼がしたいが私は『ヒカリ』を知らん。なので今朝遅刻ギリギリで登校してきた米屋に聞いてみたら『D組のお姉ちゃん』だということが判明した。うむ、益々知らん。
事情を話すとお昼休みに『D組のお姉ちゃん』の元まで案内してくれると言ってくれたのでお言葉に甘える事にした。そんで今。いざ参らん。


「ん?いねえな」
「いないの?」
「いねえ。しゅーじーみうらー仁礼はー?」
「知らん」
「あ、三輪」


D組に辿り着いて、廊下から『仁礼ヒカリ』を探すが不在のようだった。優しそうな男の子と予習をしていた三輪に『仁礼ヒカリ』の居場所を聞いてみたが、どうやら知らんらしい。さて困った。


「ヒカリちゃんなら影浦先輩のクラスに行ったよ」
「あーカゲさんとこか。さんきゅー」


三輪は知らんが優しそうな男の子『みうら』は『ヒカリちゃん』の場所を知っていたらしい。カゲさん。影浦先輩のクラス。仲良しなのか?『みうら』にお礼を言って三輪に手を振ってD組を去る。小さく手を返してくれてやっぱり三輪は可愛いと思った。


「影浦先輩と仲良し?」
「影浦先輩のとこのオペレーター」
「なんと」


なんと『ヒカリちゃん』は影浦隊のオペレーターだったらしい。任務の話とかしてたら諦めて帰ろうな。そうだね。と話しながら影浦先輩のクラスへ向かう。3年生の階はちょっと緊張する。これを気にせず1人で影浦先輩のとこに行った『ヒカリちゃん』は絶対に強い女だ。

廊下で『人見さん』という人とすれ違って、米屋が影浦先輩のクラスを聞く。米屋は本当にコミュ力お化けだ。『人見さん』は影浦先輩のクラスを教えてくれて、去り際には手を振ってくれた。優しくて美人なお姉様だった。


「さっせーん、カゲさんいますか?」
「米屋と名字?どうしたんだ?」
「あ、鋼さん。カゲさんと仁礼います?」


影浦先輩のクラス、C組に辿り着くと村上先輩がわざわざ来てくれた。事情を話して影浦先輩を呼んでもらおうとしたらどうやら『ゾエ』と『仁礼』が拉致して行ったので今は居ない。との事。


「多分屋上じゃないかな。影浦隊の話だったから人が来ないところにいると思う」


村上先輩の推理によると、影浦隊の皆さんは屋上にいる、かもしれないらしい。なるほど。ありがとうございました。米屋とお礼を言って今度は屋上へ向かう。


「なかなか見つかんねーな」
「付き合わせてすまんよ」
「いいよ、楽しいじゃんこういうの」


米屋は良い奴だ。私だったらD組にいなかった時点で後はてめぇで頑張んな。と見捨てている。袋を漁って1口サイズのチョコを上げた。因みにこれは『仁礼』にあげる予定のチョコだが1つくらい無くなってもバレんバレん。


屋上へ向かう階段で『京介』に出会った。死ぬほどイケメンで逆に引いた。どうやら『京介』は屋上に居たらしく事情を話して影浦隊の面々が居たかどうか聞いてみたが、影浦隊は見ていないらしい。なんだと。


「影浦隊なら体育館の裏とかじゃないですか」
「お、京介心当たりあんの?」
「なんかそういうイメージあるだけです」
「わかるわー。じゃ、行ってみっか」


『京介』によると影浦隊は体育館裏にいるイメージらしい。なんだそれ、影浦隊ってヤンキーなのか?とりあえず『京介』に頭を下げて今度は体育館裏へ向かうことにした。米屋曰く『京介』は屋上で告白されていたに違いないらしい。


体育館裏へ向かう為靴に履き替えるとトッキーに出会った。嵐山隊の時枝充くんだ。この人は私でも知っている。どうやらトッキーは体育館裏で猫と戯れていたらしい。なんと可愛い。事情を話して体育館裏に影浦先輩が居たか聞いたが居なかったらしい。


「そういう理由なら、1年の階に使われていない教室があるので賢に見てもらいましょうか?」


優しいトッキーはポケットからスマホを取り出してくれたが断った。行ってみるよありがとう。と言うと見つかるといいですね、と微笑んでくれた。優しい子だ。


1年の階の使われていない教室の前に辿り着くと、中から半崎くんが大口開けながら出てきた。どうやらお昼寝をしていたらしい。事情を話して中に影浦隊居なかった?と聞くと、居たら寝てねぇっすよ。と言われた。確かに。


「人が来ない場所なら詳しいっすよ。図書室の奥に古い本を管理してる書庫があるんすけど、あっこなら静かだし人も来ないし」


お昼寝が大好きな半崎くんにお礼を言って、図書室の奥にある書庫へ向かっていると『若村』くんに出会った。どうやら『若村』くんは図書委員らしく書庫の本を整理していたと。事情を話して影浦隊が居たか聞くと影浦隊は居なかった。らしい。


「そういう事なら、北添先輩のクラスに行ってみろよ」


こういうのは意外と簡単なところにいたりするんだよ。そんな事あるだろうか。でも『若村』くんは頭がとても良さそうなので信じてみよう。米屋と再び3年の階へ向かう。


『北添先輩』のクラスに辿り着くと『水上先輩』が声をかけてくれた。わぁ関西弁だ。米屋もあんまり親しくはないのか、米屋にしては割としっかりとした敬語で事情を話して『北添先輩』の行方を聞く。『水上先輩』は、なんや面倒なことしてんなあ。と緩く笑ってから、顎に手を当ててちょっと黙った。


「そういう事なら、2年B組に行ったらええ」
「んえ?」「なんで?」


2年B組。私たちのクラスだ。米屋と目を合わせて、こてんと首を傾げる。


「灯台もと暗し、って知っとるか?」


灯台もと暗し
答えや肝心な事は意外と身近にある事。だ。

それなら2年D組に向かうべきだと思うのだが、水上先輩は、いいから黙って教室帰り。と私達の背中をポン、と叩いた。因みに水上先輩は3年C組らしい。何故『北添先輩』のクラスにいたのだろうか。


「なんで俺らの教室なんだろーなー」
「どうする、関西ノリとかだったら」
「ウケるな」「ウケる」


ここまで付き合ってくれた米屋に袋の中を漁ってラムネをあげた。これは『仁礼ヒカリ』へのお礼だが大丈夫、バレんバレん。
そーいえば今日あったヤツら全員ボーダー。なんと。京介は玉狛のヤツで〜。人見さんは〜。と昼休みに出会った人達の説明をしてもらいながら教室へ戻る。D組の前を通ったが敢えて中は確認しなかった。


「これで本当に居たらウケるなー」
「ねー」


昼休み潰してごめんね。別にいいじゃん?楽しかったし。米屋は男前だ。顔もよく見たらイケメンだし。昼休みも残り5分。実は私も楽しかった。
がらり、辿り着いた自分達の教室の扉を開ける。


「おー!おせーぞお前ら!なにしてたんだよ!!」


ニカ!と笑った元気な女の子が私の席に座っていた。
多分だけど、恐らくだけど、水上先輩は凄い。


私のもとは明るし


マエ モドル ツギ

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