いやー教室戻ったら三輪と三浦にお前らが探してるって聞いたからよー!待っててやってたのに全然帰ってこねーからどうしようかと思ったじゃねーか!

バンバン!女の子にしてはかなり強めの力で肩を叩かれる。多分この元気の擬人化みたいな女の子が『二礼ヒカリ』だろう。


「ヒカリ」
「なんだ?」
「これお礼、ファイルの」
「ファイル?なんだっけそれ、まあありがとな!」


ヒカリにお礼のお菓子を渡す。ヒカリはファイルをあげた事を覚えいないようだったが貰えるもんは貰っとくわ!と物凄い満面の笑みで受け取ってくれた。


「めっちゃあるじゃねーか!お前も一緒に食えよ!」
「うん」
「あっでも昼休み終わるじゃねーか!放課後にするか!」
「うん」
「うちの作戦室にこいよ!1人で来れるか?迎えに来るか?」


勢いが凄い。これが本当に『D組のおねーちゃん』なのだろうか。全く理解ができない。D組の人間はおねーちゃんをなんだと思っているんだろう。


「1人でも行けるけど一緒に行きたいから迎えに来て」
「、お前はアタシがいなきゃなんにもできねーなー!」


バンバンバンバン!さっきより更に強い力で肩を叩かれてしまった。けど凄く嬉しそうな顔をしている。なんというか、なんというか


「じゃあ放課後な!迎えくるから待ってろよ!」
「うん」


じゃーなー!とお菓子の袋を振り回して去っていくヒカリを眺める。米屋が隣で、な?濃いだろ?と楽しそうに笑っていたので、予想以上に。と返しておいた。

なんというか、ヒカリ。すっごい可愛くない?!何あの子!めっちゃ可愛いんだけど!!!
余りの可愛さにうあああ、と机に倒れ込むと米屋が何かを勘違いしたのかおつかれー。と頭をポンポンしてくれた。
疲れてないよ、放課後が楽しみなの。と伝えると、米屋は あらそう?それなら良かったわね、と緩く笑ってもう一度私の頭を、ぽん、と叩いた。


ーー


「なまえ!きたぞ!」
「ありがとヒカリ」
「おう!」
「糞ガキも来んのか?」
「カゲ、口が悪いよ〜。ごめんねなまえちゃん。3年の北添尋です。ゾエでいいよ」
「よろしくお願いします、ゾエ」


放課後、ヒカリが来てくれるのを待っていると、ヒカリは影浦先輩と、大柄だけど優しそうな先輩をつれてやってきた。成程、この人がゾエか。東さんよりデカイな。


「こんにちは影浦先輩」
「さっさと行くぞ」
「なんだお前ら知り合いだったのか!なまえ早く行こうぜ!多分ユズルも待ってっから!」


ヒカリにグイグイ腕を引っ張られたのでその手を止めてなんとなく手を繋いだ。凄く嬉しそうな顔をしてくれたのでこの手は二度と離さないと誓いそうになる。だめだ。新しい扉を開いてしまう。


「ユズル」
「影浦隊の狙撃手だよ。ユズルはなまえちゃんの事知ってるみたいだったけど知らない?」
「ゆずる…」
「絵馬ユズル。知らねぇならそれでも別にいーだろーが」
「絵馬くん?」
「知ってたのか?あたしが影浦隊に入れたんだぜ!」


まるで褒めて褒めて!というように胸を張るヒカリが可愛くて頭を撫でた。どこがおねーちゃんだ。妹じゃないか。
絵馬ユズル。話したことは無いけど知ってる。鳩原未来の弟子だ。そんでもって、狙撃が死ぬほど上手い中学生。鳩原が居なくなって寂しがってるからなー。とトーマがお節介を焼いている子。


「ゆずると仲良くなれるかな」
「無愛想なガキだが擦れてはねぇ。お前が喧嘩売らなきゃ仲良くできんだろ」
「影浦先輩の下なのに擦れてないんだ」
「殴られてえか糞ガキ」


影浦先輩が腕を上げて威嚇してくる。私がよく辻に対してする奴だ。影浦先輩がやるとなんだか可愛い。によによしながらそれを眺めているとべちっ、とデコピンをされてしまった。


「お前結構言うなー!おもしれぇな!カゲ!」
「ただの糞ガキだろ」
「ごめんね?痛くなった?」
「地味に痛い」


ヒカリに背中を叩かれ、ゾエがおでこを撫でてくれる。影浦先輩のデコピンより背中の方が痛い気もするが、まあ良い。言うほどの痛さでは無い。


「カゲも糞ガキとか言っちゃダメだよ」
「糞ガキだろ。遊んで遊んでって感情ぶっ刺してきやがって」
「遊んで遊んで…」
「ぶは!遊んで欲しいのか!」


あ、遊んで遊んで、だと。そんな感情をぶっ刺してしまっていたのか、なんだこれ、死ぬほど恥ずかしい!!ヒカリにあたしはいっぱい遊んでやっからなー!と満面の笑みで言われる。お、おねえちゃん!!そう言って抱き着くとお前はアタシがいなきゃなんにもできねーなー!と、満足そうに抱き締め返してくれた。


「女の子同士は可愛いね」
「女の子じゃなくてガキ2匹だろ」
「可愛いってとこは否定しないんですね」


もうバレてしまっているのなら仕方ない。と遊んで遊んで攻撃を仕掛けると頭をぐわし!と掴まれてしまった。でも別に痛くない。もしやこれが、師匠の言っていた「懐に入れた人間にはとことん甘ぇ」ってやつだろうか。それならば、嬉しい。


「カゲと仲良く出来る子がいてゾエさん嬉しいよ」
「そーだなー、ほらゾエ、飴やるから泣きやめよ」
「ありがとーヒカリちゃん」


ぐわんぐわん揺らされながらゾエとヒカリが話している声を聞く。影浦先輩18歳のくせにゾエに心配されてやんの〜と感情を飛ばすと更に頭をぐわんぐわん揺らされた。よ、酔う!


「あんま調子乗ってっと辻に言うぞ」
「何を?」
「お前が加賀美と今に言ったこと」


な、何故それを…!あわあわと震えていると影浦先輩が楽しそうに笑う。あの後店にあいつら来たんだよ。そんでお前と辻の話した。ど、どこまで聞きましたか?大体全部。
ぎゃあああ、と顔を覆って蹲る。大体全部だと?それって、恥ずかしすぎるじゃないか。そんなの、死ぬしかない。


「なまえちゃん、どーしたの?」
「こらカゲ!なまえに何言ったんだよ!」
「別になんも言ってねーよ。なあ」
「言われてない言われてない!!だからお願い何も聞かないで触れないで!!!!」
「お、おう?」


ぎゃあああ!!と手をブンブン振って会話を終わらせる。ヒカリとゾエは少しだけ引いていたが、影浦先輩は凄く楽しそうにガハハ、と笑っていた。この野郎
立ち上がって背伸びをする。影浦先輩の耳元に口を寄せると影浦先輩は少しだけ屈んでくれた。優しい


「ちなみに誰が、知っていますか」
「あー、鋼と」
「声が大きい!!」
「お前の声の方がでけぇわ!!」


べちん、とおでこを叩かれて首根っこを掴まれる。そのままグッと引っ張られて耳元に影浦先輩の顔が近付いてきた。
鋼と加賀美と今だけだよ、ポカリは帰ってた。ほ、ほんとに?なんで嘘つくんだよ。村上先輩誰かに言う?あー、言わ、ねえだろ。自信もってよ!あいつぽやっとしてっから。分かるけど!
ヒカリとゾエに聞こえないように、お互いの耳元に口を寄せあってこしょこしょと話をする。
ゾエとヒカリは話の内容が全く気にならないようで、ニコニコしながら私達を見ていた。


「仲良くなれて良かったなー」
「本当だね。ヒカリちゃんが良い子だから。良い子の周りには良い子が集まるね」
「褒めたって何にもでねーぞ!ほら、グミやるよ!」
「わあ、ありがとう」


なんだか不安でいっぱいだけれど、ヒカリとゾエが可愛いので影浦先輩の手を引いて二人のところに駆け寄る。ヒカリが内緒話は終わったかー?とニコニコしながらラムネをくれた。影浦先輩にはミルキーをあげていて似合わなくて笑った。


「そういえば、そろそろ準備しなきゃね」
「あー、もうすぐか」
「「なんの準備?」」


ゾエと影浦先輩が言う"準備"の意味がわからなくて、ヒカリと顔を合わせて首を傾げるとゾエが、パーティーだよ。と教えてくれた。


「楽しそうだな!」
「2人も来たらいいよ。カゲん家でやるし」
「おーいくいく、なんのパーティーだ?誰かの誕生日か?」


それならプレゼント買ってやんねぇとな!と楽しそうなヒカリおねーちゃんの頭に影浦先輩の手が優しく乗っかる。おお、これは、とことん甘ぇ、の頂点だ。多分


「誕生日じゃねーよ。お疲れ様会みたいなやつだ」
「お疲れ様会?」


「もうすぐ帰ってくるからね、当真くんが」


楽しみだね。ゾエが笑った。


動き出す


マエ モドル ツギ

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