本当の嘘つきは私でした


「‥‥師匠、それどうするの」

今から二十年前、メモリーはユーズと共に、人間同士を意図的に殺し合わせたりしながら日々を送っていた。
ユーズはメモリーが腕に抱えている赤ん坊を横目に見る。

「いや、なんだ。俺の力は死者の魂を色んな形に変えれるわけじゃん?自分自身も作れたりすんのかなーって」
「はあ?馬鹿馬鹿しい。師匠が二人とかキモすぎる」
「言うじゃねーか。まあ見てろよ、退屈だし色々やってみるし」

ーーそれから数日後。

「出来たぜユーズ」
「‥‥」

見せられたのは、この前とは違う赤ん坊。
それは今、おぎゃあ、おぎゃあと産声を上げていた。しかし、

「それが師匠?ただの赤ん坊じゃない」
「一応、俺の細胞だ色々詰め込んだんだけど‥‥まあなんだ。成長しなきゃわかんねーよなー。ってなわけで、お前これの面倒見ろよ」
「‥‥はぁ?」

メモリーは作ったそれを、ユーズに放り投げる。
変わらない日々、変わらない旅路。
そうして数年。

経過を見るのに飽きたメモリーは、その辺の道端に自身のクローンを捨て置いた。
クローンは、子供は物心ついた頃、一人で生きた。
一人で生きて、子供から少年となり、いつしかシステルと出会った。
名前も何もなかった少年は、

「ロス、ロスなんてどうかしら?どこかで聞いたことのある名前なの」

そう、システルから名を与えられた。

ロスとなった少年は、後に、皮肉にも自身の中に眠る細胞の姉、シャイと出会う。
お互いがお互いを知らぬまま共に旅をし‥‥


「‥‥終わったみたいだな」

恐らく、クルエリティとアブノーマルが居るであろう雪の街に聳え立つ城の前に、ロスと囚人、フェイスが立ち尽くしていた。

「あ?何が終わったんだよジジイ」
「あいつらが、アブノーマルやら俺の過去を見終えたってことさ」

そう答えてロスは城に背を向け、

「なあ、囚人」
「なんだよ」
「‥‥いや。‥‥システルのこと、アブノーマルのこと‥‥クルのこと‥‥お前に全部、押し付けちまうかもしれないが、お前が頼りだ。本当に、頼んだぜ」
「‥‥んだよそれ、急に」

言われて囚人は目を丸くする。

「‥‥もうすぐシステル達がここに来る。俺はあいつらを案内するからさ、先に行っててくれるか?囚人、フェイス」
「なあ‥‥」

囚人はロスの肩を掴み、

「お前さ‥‥本当はジジイだろ。ロスの意識なんざ、僅かなんじゃないか?」
「‥‥」

言われてロスは、

「ロスには悪いことしたなぁ‥‥お前は消えないとか言って、この体を貰っちまってさ」
「‥‥」
「だが、あいつの意志はここにある。だから、俺はロスでもあるのさ」

そう、ロスーー否、メモリーは皮肉気に笑う。

「‥‥お別れしなきゃいけない子がいるんだ。だから、先に行っててくれよ‥‥囚人」
「‥‥」
「どうせ、俺らはあいつの夢の中で生きてんだ。全部終わったら皆、消える。だが、それでもお前は家族の為に行くんだろ?」
「当たり前だ」

囚人は頷き、

「‥‥早く追い付いてこいよ、ジジイ。フェイス、行くぞ」
「う、うん」

そうして城へと駆けた。
一人になったメモリーは白い息を吐き出す。
アブノーマルが保てなくなった世界は、歪に赤く赤く染まり、崩れていこうとしている。
先に世界が、夢が終わってしまったら‥‥
もはや自分達は何も為せないまま消えていくしかないのだ。
だから‥‥

「‥‥だから、来てくれると思ってた」

メモリーは顔を上げ、目の前に立つ少女を見つめて悲しそうに笑う。

「ロスさん‥‥じゃないんですよね。あなたは‥‥ミモリさん」
「よせよ、俺は、メモリーだ。‥‥ええっと‥‥ヴァニシュ‥‥ちゃん」

少女は、ヴァニシュはニコッと微笑んでくれた。
メモリーは、苦笑しながら涙を頬に伝わせた。


・To Be Continued・

空想アリア



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