少女の身体は異変だらけだった。
否ーー十五にも満たない体で魔力を取り込んだあの日から、すでに異質なものに成り果てていたのかもしれない。
それに加え、幼きこの身に数多に注がれた男達の精液が交ざり合って、それらは産み出された。
それらは、産まれるはずのない月日に産み出された。

始まりは酷い嘔気。
異様な食欲。
体の重み。
腹の中で蠢く何か。

その日、急に自身の腹に膨らみが増したと思えば、前述した全ての感覚が一気に少女を襲い、その日、その日ーー‥‥

「や‥‥いやぁ‥‥いやぁぁぁぁ!!!?」

少女は赤ん坊を産んだ。
しかも、それは一人や二人ではない。
まるで魚の産卵のように、それはーー。


ちょうど、次の地へ辿り着く前の野宿。
ミモリに隠れ、行われたそれに、彼女の身は疲労とは言い表せない程に憔悴しきった。
また、雪の大地にその身は酷く凍える。

産まれたそれらは、産声をあげない。
赤い血にまみれ、もぞもぞ雪の大地を蠢いている。
同じく、ぐったりと雪の大地に倒れた少女は、このまま死ねれば、もう何も考えなくて済む、人の心を憎悪せずに済む‥‥
そう思い、目を閉じようとしたが、ただただ、ミモリの顔だけが浮かぶ。

ここまで共に生きてきた弟。
唯一、少女だけを信じ、少女だけを愛してくれる、裏切らない弟。
そんな弟の未来を、綺麗なものにしたい。

少女は気付かなかった。
自分がとっくに歪んでいたことに。
世界中は知らなかった。
世界中に異常が溢れていることに。

でも、それでも。
これはまだ、人々がただの人で在った時代だ。

少女はよろよろと立ち上がり、蠢くそれらを置き去りにして、ミモリの元へと足を進める。

そうして数年ーー。
成長するにつれ、ミモリは周囲に目を配り、自我を持ち出した。
それは、当たり前のことである。

だが、それが、世界中を、異常の業火で焼き尽くす切っ掛けになるのであった‥‥



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