「はぁ、ん、んん……」
孝成さんの指が二本、おれの中に入っている。最初の頃と比べたら慣らすのはかなりスムーズになってきたと思うけど、やっぱり今でも指を挿入してすぐは違和感がある。だからそういうとき、おれは孝成さんの表情に集中することにしている。中を傷つけないようにと妙に真面目な顔でおれのお尻と向き合っている孝成さんを観察していると、なんとなく圧迫感も違和感も薄れるのだ。おれって単純。
「もう一本大丈夫そうか？」
「んんっ、ん、うん……だい、じょうぶ。ね、孝成さんはだいじょうぶ……？ はやく挿れたい、でしょ」
「俺は我慢のできる男なんだよ」
「うー、がまんしないでよぉ……」
つい湿っぽい声になってしまって、孝成さんは笑っておれにキスしてきた。「悪い、語弊があった。我慢っつーか、お前が痛かったりつらかったりするのが嫌」孝成さんこそイけてないからつらいはずなのにそんなことを言う。中に入ってくる指が増えてお腹の奥がきゅんってした。たまんない。
じりじりとした気持ちで腰が揺れる。思わず穴の辺りを指先で広げてしまった。まだだめ？ もういいんじゃない？
「あんまエッロいことするなよな……」
「ぁっ、あ、だってぇ……は、んぅ」
「痛かったらちゃんと痛いって言えよ？」
おれの精液でどろっとしている穴に孝成さんのものが宛がわれた。期待で胸がいっぱいになって、息が詰まる。
「ひ、ぅ、ぁあ……！」
「っ……じゅん」
「はぁ、ぁ、んっ、たかなりさんっ、ぎゅってして……」
抱きかかえられてゆさゆさと揺さぶられて、おれは心底自分の体型に感謝した。もし孝成さんより背が高かったら、体重が重かったら、こういうことはできなかったかもしれないから。おれは孝成さんにこうやってされるととっても嬉しいから。
「潤っ……じゅん、きもちいいか？」
「うんっ、きもちいい……ふ、ぁ、ぁああ、あぁ」
よかった、って小さく呟いた孝成さんの表情が面白いくらいに得意気な顔だったからおれも嬉しくなる。孝成さんも気持ちいい？ って聞いてみた。答えは期待していた通り。またひとつ幸せになる。
「孝成さん……っ、おれのなか、だして、っぁ」
おれの中で孝成さんのものが一層大きく膨らんだ気がした。ね、そのまま出して。それで、めんどくさいかもしれないけどお風呂の中で優しく綺麗にして。おれのこといっぱい触ってよ。
脚を孝成さんの胴体にがっしりと巻き付けておねだりする。叶えてくれるだろうなっていうのは表情を見れば分かった。
だって孝成さん、今すごく甘い顔してる。
「っひ！ ぁ、ああっ」
「今のは……っ狙って煽っただろ？ じゃあ俺が乗っても、いいんだよな」
「んっ、ぁああ、いい、いいよぉ……きもちい、っあ、いく、もうっ」
俺も、と耳元で囁かれた瞬間、中で熱いものが弾けるのが分かった。ぐちゅぐちゅと更に滑りのよくなるおれの中。一滴も残さず搾るような抜き差しで、腹につきそうなくらいに勃っていたおれのちんこも熱を解放する。
「――ッ！ うあ、ぁああ……っ」
ちかちかと視界に星が舞ってるみたいだった。激しい快感の波が引いて、おれは孝成さんの様子を窺うべく顔を上げる。
「……結局俺たち二人とも我慢できなかったな」
「へへ……そうだね」
お互い照れ笑い。しあわせ。この後一緒にお風呂入れたらもっとしあわせ。そんなことを思っていたんだけど、ふと視界に入ったものにおれは思わず大声をあげた。
「あーっ！ こたつ！」
「え？ うわっ！ う、うわあ……」
こたつ……こたつ用の布団が……見るも無残な姿に。主におれの精液でべっとりだった。すっかり忘れてたけどここはベッドの上じゃなくてこたつなのだ。これはもう手洗いの後クリーニングかな……。
「……孝成さん、ごめんなさい。汚しちゃった」
「なんだよ。お前のせいじゃねえだろ」
「でも、しばらくこたつ使えないよ……？」
せっかく孝成さんが買ってくれたものだから、クリーニングに出している間だけとはいえ使えなくなってしまったのが悲しくてそう言うと、なんだか想像していたよりも明るい声で返される。
「別にいいって。それに」
「それに？」
「あったかくなりたいならここもおすすめだぜ。結構体温高いぞ、俺」
ドヤ顔で自分の膝の上を叩く孝成さん。下半身裸だから全然締まらない。でも、そういうところが大好き！
「孝成さんがあったかいのは知ってるよ。冬場とか一緒に寝るとすごいもん」
「温めておきましたってやつだよ。ほら、風呂いくぞ」
「……一緒に入ってくれるの？」
「当たり前。中も綺麗にしような」
わーい、って思わず言いそうになってしまった。だって、おれがやってほしいなって思った通りになったんだもん。手を伸ばすと、孝成さんは変な掛け声をかけておれのことを抱き上げてくれた。
「腰、気を付けてね……？」
「いや、まだいけるだろ。……いけるよな？」
笑い合ってお風呂場へと向かう。こたつには悪いことしちゃったけど、また綺麗に洗って使うからこれからもよろしくね。
あ。もちろん、おれのことあったかくしてくれるのは孝成さんがいちばんだよ。