羽化に唇 ▽▽▽ ( UNION / GARDEN )

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 セックス中あまり声をあげたがらないこいつをとろっとろに蕩けさせて、甘ったるい喘ぎ声が我慢できずに半泣きになっているのを見るのが好きだ。別に泣かせたいわけじゃねえんだけど、気持ちよすぎて泣いてもらえるなんて男としては嬉しいだろ、やっぱり。
「ふ、ぁ、おく……んっ」
「んー、やっぱり全然変わってねえと思うけどな」
 腹筋を撫で回すと遼夜はくすぐったそうに身をよじった。自分は裸にひん剥かれているのに俺はまだ一切脱いでいないという状況が相当恥ずかしいみたいで、さっきから腕で顔を覆ってしまっている。それでも抵抗をしないのはこいつの愛だ。もしかすると今は、罪悪感みたいなものがあって余計におとなしいのかもしれない。
 まあ、ちょっとしたお仕置きの一環だから恥ずかしがってくれた方が俺としては嬉しいんだけどな。
 お仕置きっつっても酷いことも痛いこともしたくないから、今日はじっくりたっぷり時間をかけて泣くほど気持ちよくなってもらおう、ついでに恥ずかしいことたくさん言ってもらおう、と目論んでいる。俺が服を脱いですらいないのはそれが理由だ。下手に突っ込むと絶対俺が先にバテる。情けないがどうにも覆せない事実である。
「っぁ、う」
「いつまで顔隠してんの」
「うう……だって」
「顔ばっか隠してると他のガードが甘くなっちまうぞ」
 言うが早いか、まだお行儀よくしている遼夜の乳首の周りを撫でてみる。まだ核心には触れていないのに、それでも体温の高い体はびくっと跳ねた。
「っ、おく」
「ん? ちょっと触っただけなのにそんな感じる?」
「ふ、……っんん、」
 遼夜の唇が震えた。焦らすように撫でると、徐々にそこがふっくらとしてくる。やがて完全に先端が飛び出してきて、目の前にあるのは見るからに触ってほしそうなエロい乳首だ。いつ見ても最高。神に感謝。
「そ、そんなに見ないで……くれ」
「大丈夫、見るだけじゃなくてこれからたくさん触るから」
「ひ、っぁ、おく、んんぅ……っ」
 じわじわと、乳頭の周りで円を描くように指を動かす。中心部分にはまだ触れない。遼夜の腕にぎゅっと力が入るのが分かった。焦らしてるだけでこれって、かなり刺激に弱くなっているらしい。まあ全部俺のせいなんだけどさ。俺のせいっつーか、俺の手柄。
「なあ、ここ触ってほしい?」
「っ……そ、れは」
 目を逸らされてしまった。んー、まだ駄目か。
 俺は遼夜の脚の間に入り込む。「遼夜、脚ちょっと開いて」無理強いはしないのがモットーと言えば聞こえはいいのだが、俺が遼夜に無理強いできることなんて殆ど無いのだった。人間の脚、重すぎる。いや、十二、三キロだろうから持ち上げられるっちゃられるけど……ずっとは無理だな。
 歯がゆく思うことはそれなりにある。つっても遼夜は遼夜で、一切言い訳できなくて恥ずかしいんだろう。本当は嫌だけど半ば無理やり……みたいなシチュエーション不可能だからな。俺がこいつを犯すのはこいつもその気になっているときだけだ。要するに、今だって遼夜は自分の意思で俺に脚を開かないといけないということである。
 案の定、遼夜は真っ赤になりながらもおずおずと脚を開いてくれた。正直もう何百回と見てると思うんだけど、恥じらいを忘れないところが最高。十年二十年経ってもこういう反応してほしい。
「さんきゅ。こっち触るからな」
「んっ……ぁ、は」
 少量のローションを手に垂らして遼夜のものを握りこむ。ゆっくりと扱いていけば、くち、くち、と粘度の高い音が耳を刺激した。時折乳首の周辺にちょっかいをかけるのも忘れないように。すると、ほんの少し乳首に爪の先が擦れただけでも、俺の手の中で性器がびくっと反応するようになってくる。あー、やばい、興奮してきた。きっちり着込んだ洋服が鬱陶しい。早く脱いでしまいたい。
「は、ぁ、んん、っ……ぅ」
「お前のここ、触るたびにびくってしてる」
「んッ……おく、どうして脱がないんだ……?」
「だって、こっちの方が恥ずかしいだろ」
「あ、あくしゅみ……ふ、ぁっ、もう」
 抗議の声を聞き流しつつ手の動きを激しくしていく。泣きそうな喘ぎ声は徐々に噛み殺せなくなっているようだ。きゅ、と袖口を握られて、きっと早く脱げという意味だったのだろうが今日はちょっぴりおあずけさせてほしい。俺はもう全然怒ってはいないけど、お仕置きという言葉の響きはそそられるものがあるから。
 遼夜がイく寸前に手を緩めると、もう長い付き合いなのでそいつは俺の意図を察してくれた。「ううう……会えないなんて言わなければよかった……」とぶつくさ言っている。よく分かってるじゃねえか。悲しくなるから控えてくれよ、そういう発言。
 イく寸前まで性器を扱いてやめるのを繰り返していると、やはり何度も寸止めされるのはきつかったようで。隠さず「悪趣味……」って顔をされた。声に出されなかった分だけさっきよりマシかもしれない。
「俺が満足したらイかせてやるから」
「は、ぅっ……んん、そんなこと、言われても――ひっ! ぁ、ばかっ……そこは」
 触るのを控えていた乳首をちょんちょんとつつく。硬くなったそこを手のひらで転がすようにすると、こりこりした感触が伝わってくると同時に遼夜の首筋が勢いよく反った。
「やっ、ぁあ、あ、っ」
「は、すげえ感じてんじゃん……可愛い」
「っはぁ、ぁ、ぁんん……おく、おくっ……」
 口をはくはくとさせて悶えている遼夜。うーん、喉仏から鎖骨にかけてのラインが好き。
「っぁ、……は、ぅぅ、もうむり……」
「まだ体力余ってるだろ? いけるいける」
 そんなことを言いつつ、乳頭を指の腹でさすると小さく悲鳴があがる。やんわり俺の手から逃れようとするけど、決定的な抵抗は無い。もしかするとそろそろ体に力が入らなくなってきた頃合なのかもしれないなと思う。だったらこのまま続行だ。
「逃げんなって」
「ゃあぁぁっ、ぁっ、らめ、ひ」
「ん、可愛い」
「ひぁっ、ぁ、ぁー……ぁあ、あぅぅ」
 ちょっと眉根を寄せた表情がやらしくて好きだ。乳首はふっくらと赤く熟れていて、しゃぶってもいいかななんて考える。だってなんかうまそうじゃん。流石にそこまですると怒られそうだが。
 優しく撫でていたそれをぴんっと指で弾くと、「ひぅっんっ」なんて鼻にかかった声が漏れた。ちょっと強めに指先で挟んで、それに反応した遼夜の足がベッドシーツを擦るさまを楽しむ。既に下を触る手は止めているのに萎えていないから気持ちいいのだろう。ふ、と乳首に息を吹きかけると、まさかこの程度の刺激ですら感じてしまうとは思っていなかったのか、小さく声をあげた後にいよいよ泣き出しそうな顔になってしまった。
「は、ぅ、……も、やめ」
「ここひくひくしてる。感じすぎてつらい?」
「ぅあっ……! ぁ、も、ほんとにむり……ひっ!? っ――!」
 乳首を口に含んで甘噛みすれば、遼夜の体がぐっと前傾する。唾液をたっぷり口の中で擦り付けた。足の指が丸まって、涙混じりに制止の声があがる。正直かなりエロい。
「ゃあぁぁ……あ、っ、ん」
「きもちい?」
「ん、く、イけない……イけないからっ、もう、」
「……気持ちよくなかった?」
「ゃっちがっ、あぁああ、ひぅっ、も、ぅ、んん……」
 節のしっかりした指が俺の手に絡む。あー、もう、気持ちいいのにイけそうでイけなくて頭おかしくなりそうなんだろうな、って思うと興奮する。
 赤くぽってりと腫れた乳首を指でくにゅくにゅ弄ると、泣き喘ぐ声がいっそう高くなって気持ちが昂るのを感じる。蕩けた表情に誘われるように再び乳首に吸い付き舌で擦る。特に感じやすい右の乳首を爪先で優しく引っ掻くようにするとひときわ甘い声があがった。シーツを足の裏で掻き毟って、遼夜は最近少し伸びてきた髪を乱れさせる。
「ひぁっ、ぁ、あ"ー、つめ、やぁあ……」
「んっ、ぢゅ、きもひい?」
「ゃああぁあ……っんぅ、も、きもひ、から、ぁああ、もうやめ……っひ、ん」
「なあ、お前のエロい乳首こりっこりになってんの分かる? 舌で触るとびくってしてめちゃくちゃ可愛い」
 泣きながら首を横に振っているのを見るとつい意地悪をしたくなってしまう。散々いじくりまわして真っ赤になった乳首は俺の唾液のせいで水気を吸ってぷるぷるつやつやしていた。つんと尖った乳頭がいやらしい。
「っ、おく……」
「ん?」
 息も絶え絶えに俺の服の裾を掴むそいつ。吐息のような声は小さすぎて、俺はその口元に耳を寄せる。
「……っも、ちゃんとさわって……くれ、おねがいだから……」
 中がさみしい、と遼夜は言った。
 それはおそらく、遼夜にとって精一杯の「挿れて」だった。

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