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Chapter1-4

それから、わたしとリドルは常に一緒にいるというわけではないものの、二人でいる時間はだんだんと増えていった。

「あなたはその高慢ちきなところを直さないと友達できないわよ!」

わたしがそういうたびにリドルはそっぽを向くけれど、わたしたちだけに現れたこの不思議の力について話すときだけは、彼の目にきらきらと年相応の輝きが見られた。

リドルは、確かにわたし以外の子たちに対しては力を使って怖がらせていたりしたけれど、根っこの部分では面倒見のいいところがあるのではないかとわたしは踏んでいた。

普段はわたしがどうなっても知るもんか、という顔をしているのに、わたしがつまずくと反射的にそれを受け止めるし、次からそこを歩くときはわたしを注意深く見つめるのだ。

気づかずにやっているのかもしれないし、もしかしたらそれが彼にとっての当たり前のマナーなのかもしれないけれど、他の子たちから悪魔やらなんやら散々言われている彼のそんな一面に、わたしはなんだかくすぐったい思いを抱いているのだった。


ある日、恒例となりつつある通り昼食後の時間をリドルと過ごしていると、エイミーとデニスがパッとわたしの手をとってそのまま引っ張った。

「何?どうしたの?」というわたしの問いかけを無視してエイミーの部屋までわたしを連れていった二人は、内緒話をするようにしてわたしに耳打ちする。

「ビリーの兎は、トムがやったんだ」

「トムとビリーが喧嘩しているのを見た、ナマエのことで」

「ビリーは、トムへナマエに近づくなって言ったんだ」

「そうしたら兎がやられた。あいつは恐ろしい悪魔だ。もう近づくな」

代わる代わるそう言う二人に、わたしは目が回る思いだった。何が何やら。

「あのね、エイミー、デニス。

確かにリドルは見た目も冷たそうだし、中身もぶっきらぼうなところがあるけれど、わたしにひどいことをしたことはないし、悪いことをしているところを見たことはないわ。

きっと誤解よ」

二人は不服そうに黙り込んだ。

そんな中に、まさに話の中心だったリドルがバタン!と思い切り音を立てて扉をあけて入ってきたものだから、何もしていないわたしまで飛び上がってしまった。

リドルはわたしの手を先ほどの二人のように思い切り引くと、無言でエイミーの部屋から連れ出す。

「あのねえ、わたしはおもちゃじゃないのよ!あっちへ行ったりこっちへ行ったり…」

わたしの抗議を知ったことじゃないとでも言うように背中で受け流すリドルは、わたしたちがはじめて会話をしたベンチでやっと止まると、最初のようにハンカチをひいて座らせた。

まだ怒りやら興奮やらが混ざった感情が落ち着いていないようで、リドルはいつもより色の白い顔を上気させ、息も早かった。

わたしはいうべき言葉も見つからず(いや、言いたいことはたくさんあったけれど)、何となくリドルに掴まれていた腕をさすりながら沈黙を守っていた。

すると、リドルは珍しく言い澱みながらも口を開いた。

「きみは僕のものだ」

リドルが唐突に言ったのはそんな言葉だった。

彼が幼子のように―もしかしたら、年より幼く見えたのは、これが初めてだったかもしれない。

そんなわけで、言葉にというよりその必死さに胸打たれてしまったわたしは、「わたしはものじゃないわよ!」という言葉を飲み込んだ。

そもそも、「わたしはいつからあなたのものになったのよ!」という大前提があるのだけれど。

でも、女の子ってきっと、はじめて「僕のもの」って言われたときは言葉を失ってしまうものなのだ。

わたしたちはそれきり、ミセスコールが「トム・リドル!ナマエ・ミョウジ!夕飯の時間よ」と叫ぶまで黙ったままだった。

ぬかるみに沈む子羊たち

わたしたちに言葉を教えたのはだれ。

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