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Chapter3-4

結論から言うと、わたしはマートルの事件について、リドルではないと考えることにした。それは、信じることではなく、考えるのをやめることだった。

わたしがそうダンブルドアに告げると、ダンブルドアはそれをわかっていたように、しかし残念そうに「きみがそう考えるなら、私は何も言わんよ」と答え、紅茶とともに出したフィナンシェを口に運んだ。

「きみは、来週末のダンスパーティーに、トムと出るのかね」

ふとダンブルドアが世間話のように問いかけたのは、何年かに一度行われる、クリスマスのダンスパーティーのことだった。そのダンスパーティーが開かれる年は、みんなクリスマス休暇に家に戻らず、ドレスロープを準備してパートナーを連れ立って参加するのだ。

「うーん、わかりません。特に誘われていないので、いかないか他の子と行くかなのかも」

「ではきみも参加しないのかい」

きみのドレス姿は是非見たいものだ、とダンブルドアが小さなさざめきのような笑い声とともに言う。彼は、彼があの孤児院に来た時からわたしにとって、そしてダンブルドア自身にとっても親代わりのようにあたたかくわたしを見守ってくれていた。

「じゃあ、わたしの相手がいなかったら、ぜひ一曲エスコートしてください。そのあとわたしは壁の花になってやけ酒の代わりにかぼちゃジュースをあおるから」

「なんと!わたしでいいなら何曲でもきみを連れて踊るが、それはかなわんじゃろうな。きみにお迎えが来ておる」

振り向くと、ダンブルドアの部屋の前に影があった。心当たりはある。

「ああやって立ってるくらいなら入ってくればいいのに。わたしたちのトム坊やはシャイみたいですね」

わたしがそう言うと、ドアの外の彼に聞こえないようにダンブルドアはぐっと声を落として、ほとんど小さいつぶやきのように言った。

「私とて、あの孤児院のベッドに座る、世界のすべてを敵に回しているかのように尖ったちいさな男の子を、ほの昏い世界に落ちた殺人鬼とは思いたくないのじゃ。きみが、彼に愛を教えてくれたらいいのだけれど」

そう言ってダンブルドアは、軽くウインクをした。

「何を言ってるんだか!わたしとリドルはそういうのじゃないです」

わたしは軽く憤慨してみせたけれど、頬がピンクに上気したのは隠せず、結局くすくすと笑うダンブルドアから逃げるようにして部屋を出ることになった。

「どうしたんだ、そんなに慌てて」

聞き耳を立てていたくせにそうやって偶然を装うリドルに、ぷいと顔を背ける。

「なんでもないわよ、トム坊や!」

「僕は確かにきみにトムと呼べと言ったが、そんな呼び方は許可してないぞ!」

「あら、キスした時の言葉なんてきちんとしたお願いに入らないわ、リドル」

わたしがそう言い返すと、女の子に普段囲まれているくせにリドルは初心に口をつぐんだ。わたしはあなたがスリザリンの金髪や赤毛と付き合っていたことを知ってるのよ!

「…ナマエ、僕はきみになら、トムと呼ばれてもいいと思っている」

そうしおらしく言うリドル―もとい、トムに、わたしは昔から甘いのだ。

「…トム。これでいいんでしょう」

「それでいい。そして、きみのダンスパートナーはもちろん僕だ。グリフィンドールの間抜けたちに誘われても、決してオーケーしないように」

「あら!そんな強引な誘い文句でわたしを口説けると思ってるの?これだけ長い付き合いだっていうのに」

わたしがつんと腕を組んで言うと、トムは眉間に手をやってため息をついた。やれやれ、とでも言いたげなその態度にわたしが思い切り噛み付いてやろうとした瞬間、その場に跪いてわたしの左手をとる。

「かわいいお姫さま、僕と踊ってくれ」

そう言い切るとわたしの手の甲にそっとくちびるを落とした。こういうのをどこで覚えてくるんだか、と思うけれど、そういえば彼は普段はこういうキャラなのだった。

言い返すのもバカらしくなって、「はいはい、よろこんで」と返す。


結局、ダンスパーティー当日はトムのエスコートで赤いパンプスを履いて行ったものの、女子たちの恐ろしい目線に終わるまで耐えなければならなかった。

猛毒をポケットにいれて

猛毒はきみの嘘。

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