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chapter2-4

あっという間に時間が過ぎ、わたしたちははや三年生の夏休みを過ごしている。

孤児院に帰ることを最初は嫌がっていたリドルも、もうここに帰るのが板について来ているようだ。

わたしはもう孤児院でのリドルと学校でのリドル(学校のプリンス・リドルくんはトムと呼ばれがちなので、わたしもトムと呼ぶことにする)ギャップに慣れて来たのもあり、もう”トム”への気持ち悪さもなんとなく克服してしまった。人間はすぐ慣れてしまう生き物だ。

しかし、”トム”は往々にして扱いが厄介なのだ。

学校中の王子様として定着しつつあるトムは、わたしが何か気に入らないことをするとある方法でいじめをしてくる。

それは、ずばりこれだ。

「おや、ナマエ…、怪我してるよ。女の子にけがは禁物だ。見せてみて」

「ナマエ、寒くないのかい。ここにブランケットがある、貸してあげよう」

「ナマエは綺麗な髪をしているね、後ろ姿でわかるよ」

こういう歯の浮くようなセリフをわざと他の女の子に聞かせることによって、女子のやっかみを煽る作戦だ。

そのせいでわたしは”グリフィンドールのトムのお気に入り”という烙印を押され、日々スリザリン女子のねちねち攻撃を受けている。

それをにやにや笑いながら見ているリドルはさながら姑のよう。本当に勘弁して欲しい。

毎回助けてくれるのはフリーモントをはじめとするグリフィンドールの脳筋バカたちなので、わたしは組み分け帽子と脳筋バカたちに足を向けて寝られない、というわけである。

「頼むからあれはやめてよ」

学校に通っているため孤児院から出て遊ぶのを許可されたわたしたちは、孤児院から離れた涼しいマグルの図書館でだべっていた。

「あれとはなんだ。きみの大鍋にリサがカタツムリの輪切りを入れていたことかい。それとも、きみのローブの背中にマリアが人が見ると”いびきがトロール”と点滅するよう落書きしていたこと?」

全く気づいていなかった。わたしは机を叩いて立ち上がる。なんてこと!

血相を変えたわたしに対して、リドルは涼しい顔をしたままだ。頼むからトロールの鼻くそを煎じた薬を飲んで欲しい。

でも、不思議なのはだれもリドルのこの裏の顔(狡猾で、あくどい)に気づかないところだ。完璧な擬態と言っていいだろう。

むしろ、”トム”に対して心酔しているものまでいるという。きもちわるい。

「きみが僕を詐欺師だと糾弾したとしても、だれもきみを信じない状況になったわけだ」

そう楽しそうにうそぶくリドル。

別に、このタヌキを密告したいわけではないのだ、わたしは。

この姿をわたしだけが知っていればいい、と思うくらいには、この妙な関係の幼なじみに執着しているのだから。

名前をつけたら最後なの

名前があるのかもまだしらないのに。

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