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「君は賢いが、その反面馬鹿な女だ」

肌を晒して隣に眠るトムが、枕に頬杖をついてわたしを見下ろした。わたしはトムの胸板に頬を寄せてただ丸くなるだけだ。言い返しはしない。

薄暗い部屋には誰もいなかった。等しく四人部屋のはずなのに、トムが人払いをしたらしい。

「馬鹿な女だ、本当に」

トムはそう繰り返した。その吐き捨てるような言葉が、なぜかアブラクサスや、それからオリオンに重なる。

「抱いた女に向かって言う言葉?」

わたしがそう言うと、トムはわたしの肩を掴んで仰向けにした。何も身にまとっていないせいで体が全て露わになる。隠しても無駄だと言うように、トムは骨盤から脇までゆっくりと撫で上げた。

「この薄い腹に僕と同じものが収まっているなんて、時折信じられないな」

トムはわたしの足の間に体を割り込ませると、わたしの下腹に唇を寄せた。恥骨からへそまでをねっとりと舐めあげられるとたまらなくて、「ん、」と小さく声を漏らしてしまう。

トムはわたしの両方の太ももを押し開いて、まるでカエルが仰向けにされたような格好にした。わたしが抗議すると、「今更だ」と馬鹿にしたように言う。

わたしはこの体勢が嫌いだった。何もかも優位に立たれているような気がする。

するとトムは、先ほどまで彼が昂りを好き勝手に抜き差ししていたそこに、中指を差し入れて白い精を掻き出し始めた。こんなに甲斐甲斐しいのは珍しい、と思いつつも、果てたばかりで敏感なそこを不用意に弄られると、ひどく感じてしまってだめだった。

「トム、いやよ」

甘ったるい吐息を漏らしていることを自覚しながらも、足の間に体を収めて秘められたそこを覗き込みながら手を止めないトムの髪に指を差し込んで押し返そうとした。けれど、彼は止めようとしない。

不意に、彼がぷくりと主張した肉芽を指先で弾いた。わたしが思い切り体を跳ねさせてしまうと、トムはそれを可笑しそうに眺めた。

そうして、彼は股に顔を埋めると――こんなこと、滅多にしないと言うのに、そこに舌を差し入れてぴちゃぴちゃと音を立てながら舐め始めた。

「トム、ぁ、いや」

思わず彼の頭を足で挟んでしまうのを、彼は手で押し戻して開くよう固定し、とめどなく溢れ出る体液をすすった。わたしは快楽に身をよじるほかなく、ただ助けを求めるようにシーツを握ることしかできない。

あ、とひときわ高い声を上げて、わたしはあっけなく果ててしまった。びくびくと震える体が自分のものではないようだ。

「オリオンはこうしてくれたか?」

そんなわたしに、不意にトムが言った。口元が体液で濡れているのを、わたしは見た。

「……オリオンですって?」

わたしがそう聞き返すのを、白々しいと言いたげな目でトムは見下ろす。そんなわたしを詰るように、トムはわたしの胸の先に尖る突起をきゅ、とつまんだ。快楽と痛みの混じるそれに、わたしは思わず顔をしかめる。

「君のふしだらな唇で、あの男のものを咥えてやったか」

トムはわたしの唇を親指でなぞった。先ほどまで声を上げていたそこは唾液に濡れていた。

「君の胸であの男の頭を抱いてやったか?」

トムは容赦なくわたしの乳房をつかんだ。彼の手の形に合わせて簡単に歪むそれは、彼以外を受け入れたことを証明しているようだ。

「すぐはしたなく濡れるここを、彼奴も気に入っただろう」

体液と彼の白濁が混じった液体がこぼれ落ちるのを、トムはすくい上げて中へと押し込んだ。そうしてもう一度、彼のもので蓋をするように一気に突き上げる。

「あ、ああ、っ」

わたしは声を上げることしかできなかった。激しく腰を打ち付けるトムにすがりつきながら。

トムはわたしに口付けると、酸素を全て奪い取るようなキスをした。

オリオンどころか他の男に抱かれたことなど一度もないというのに、彼の言葉によってわたしはふしだらな女へと変えられてしまう。

まだ夜は明けない。

彼に揺さぶられていると、朝が来ることは永遠にないのだと、そう感じさせられる。

死した呼吸の幾許か




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