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わたしたちが向かったのは、もちろんスラグホーンの部屋なんかじゃなかった。

彼がずいぶん前に見つけたこの部屋は、求める部屋を与える。そう、なんでも。

そうして、今日彼が求めたのは体が沈むほど柔らかいベッド、ただそれ一つだ。

「君をそんなに焦らしてしまっていたとは気づかなかったな。あんな男を誘うなんて」

トムは詰るような言葉を、それを言う権利を当然持っているかのように言った。わたしの恋人でも、所有者でもないというのに。

「わたし、彼を誘った覚えなんてないわ」

わたしの上にまたがるトムを見上げてわたしはそう言った。それは事実だった。彼の唇についた白い泡を舐めたのだって、無意識だったのだから。

「それなら、君は僕が思っていたより、淫乱な女だったようだ」

トムはわたしの首筋に唇を寄せ、思い切り吸い上げた。そこには赤い跡が残るだろう。誰もがそれを見て思い知るはずだ。わたしがどんな行為をしたのか。その相手は、今日デートをした男ではない。それを知っているのは他でもないオリオンだ。けれど、相手がトムだとは夢にも思うまい。トムは絶対に、そのような疑念をくれてやることはしないだろう。だってトムは、完璧なホグワーツ生なのだから。
恋人を差し置いて、他の女を抱いたりなんかしない。

オリオンはどんな顔をするだろうか、首に赤い所有の跡をつけた女を見て。彼は今日わたしをモノに出来てはいないのに。きっと、プライドを傷つけられた男の顔をするだろう。醜く歪むはずだ。

彼のハンサムな顔を思い出して、少し悲しくなった。トムがいなかったら、わたしは彼のものになっていたかもしれない。

「あの男が哀れだな。今日一日かけても手に入れられなかったものを、僕は簡単に暴ける」

トムはわたしのきていたシャツのボタンをあっという間に全て外してしまった。
寒くはないものの外気にさらされた肌が落ち着かない。思わずシャツの前を閉じようと両手で掴んだけれど、トムの杖の一振りでわたしの手首は縛り上げられ、頭の上にまとめられた。

トムの瞳は今や赤く染まりかけていた。トムの独占欲が強いのは知っていたけれど、まさかここまで怒りをあらわにするほどだとは。

わたしは彼のおもちゃだ。彼のもの以外になってはいけないのだ。

噛みつくような口づけを受けながら、トムはわたしの体を暴くようにして触れた。小さく吐息のように声を漏らしていたものの、彼の手は簡単にわたしの体を自分のものではなくさせてしまう。あっというまにぐずぐずになってしまったわたしはほとんど蕩けた目でトムを見上げていた。

「君が誰のものか言ってみろ、ナマエ」

普段ならそんな質問には答えなかった。けれど、閨の中では別だろう。

「……あなたのものよ、トム」

わたしはそう答えた。あとで後悔するめあろうことはわかっていた。彼がわたしのものになることはないのだ、永遠に。

彼はわたしの上で腰を振る、そんな姿は馬鹿げているのにどうしようもなく彼が欲しい。

ぐちゅぐちゅと、わたしの中から溢れ出たとろみが彼の動きに合わせて水音を響かせる。そのいやらしい音にまで犯されているようで、わたしは耳をふさぎたかった。

「トム、…トム、…!」

唇から自然とこぼれ落ちる彼の名前を自ら塞ぎ止めるようにして、トムは唇を重ねた。舌をねじ込み、歯列をなぞり、上顎を舐められ、そんな風に好き勝手にされることを、わたしは彼に許している。

彼はわたしの奥深くまで犯しながら、わたしの首に手をかけた。

そのまま遠慮もなく思い切り、絞める。酸素が薄くなり、頭が真っ白になるのを感じて、わたしは喘いだ。助けて、助けてと口走ったかもしれない。トムは満足げに微笑んでいた。そのまま子宮を突き上げて、トムは中に熱い精を放つ。

やっと手を離した時には、わたしは意識を失う寸前だった。唾液を垂らして咳き込むわたしを、トムはただ見下ろしていた。

いつもはそれで終わるというのに、トムはまだ続けるつもりのようで、まだ落ち着いていないというのにわたしの体をうつ伏せにした。

「トム、今日はもう……」

わたしがかすれた声でそう言うと、トムはこれ以上ないほど甘ったるい声で言った。

「僕は君をしつける必要がある。わかるだろう」

腰だけ突き出した格好で犯される、わたしはただの犬だ、きっとそうなのだ。わたしを後ろから抱きしめて耳を食み、舌を中へとねじ込んでくるトムの息は熱かった。

わたしは彼を同類だと、そう感じたけれど、違った。
彼を愛してしまったその瞬間、わたしは搾取される側へと回ったのだ。こうしている間にも、トムはあの赤毛の少女をどんな風に抱くのだろうと考える。あの少女を抱いている時、きっとわたしのことは頭の中から一切消えている。誰も愛していないからこそ、それは平等なのだ。

愛なんてものは馬鹿げている。彼の言葉を、わたしは誰よりも理解している。

この身をもってして。

嫋やかなる服従




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