カゲロウプロジェクト

→カゲロウデイズ


「よっこいしょっと」


青年はその見た目に似合わぬ掛け声で、かつ、そのゆったりとした掛け声に似合わぬ動作をした。
トラックの前に飛び出した少年少女二人を両脇に抱え、前方にさらに跳んだ。危機一髪、トラックが彼らの後ろを通り過ぎ、止まった。トラックから運転手の男が降りてくる。無事全員が無傷であったため、その場に集まった人間たちもすぐに散った。


「飛び出し注意、気を付けて帰れよ」


二人の頭をぽんと撫で、青年は去る。冷めた目をした陽炎が、じっと少年少女を見つめていた。


――その後、少女のほうが、鉄柱の落下事故で死んだらしい。


「……予定調和、ってか」


見えるはずのない陽炎がざまぁみろよと笑った気がした。
そして戻ってきた妹の自室を一瞥した後、俺は同じ本を手に取る




カゲロウプロジェクト




「えっとぉ…」


モモが遠慮交じりに、二十代半ばだろう青年に目を向ける。


「この人もメカクシ団の団員…」


「じゃない」


キドの言葉にええ、とモモは声を上げる。


「強いて言うなら保護者の位置かなあ、見守り役」


彼は苦笑いしながら、この年で十代には交れないよといった。


「目はいいがな」


「目?」


こてんと首かしげたモモが彼の菫色の瞳をみる。


「僕たちの体質が通じないとでもいえばいいのかな」


カノの言葉にモモは目を丸くした。


「『見えない』状態のキドをばっちりみてたことから気付いたんだけれどね」


驚き顔のモモに彼は照れた風に頭をかいた。


「別に生きてる人間が見えたところで驚くことじゃないよー、俺には幽霊や妖怪なんかもみえちゃったりするから」


「……」


「そういう人なんだよ」


表情を一変させてどこか呆然とするモモに、カノは慣れた風に言った。



::



彼らは今まさにデパートで起きている立て篭もり事件に巻き込まれていた。


「うーん、あいつら伸しちゃったほうが楽なんだろうけれど、子供が頑張る邪魔しちゃいけないよな」





「…っつぶねー、掠るんじゃなかったのかよ」


シンタローに掠るはずだった銃弾は、あのまま向かっていれば確実に彼に当たっていた。すんでのところで櫂兎はそのことに気づき、ほとんど使えない代物と化した魔法を総動員させてずらした。結果、予定外というか予定通りに銃弾はシンタローを掠った。


それからの櫂兎の行動は早かった。気絶しているシンタローを担ぐ。それから色々一筋縄ではなかったものの騒ぎになるその場を、皆で逃げ出した






「機種変更は本人じゃないとどうしようもないからできなかったけど、カップは買っておいたよ」


小さな花模様がワンポイントでついている可愛い陶器のカップを櫂兎はみせた。


(い、いつの間に…)



::



「遊園地? 楽しんできてね」


彼は手をひらひらと振った。…ついてくる気はないらしい


「なんていうか、まあそういうとは思ってたけど」


「彼、基本放任主義っすからねぇ…」


セトは苦笑いしていった。






「ああ、ほら、櫂兎さんエネをみるのは初めてだから」


そうして櫂兎と対面した携帯の画面には、今までに見たことのないエネの表情パターンがうつされていた。疑問と驚愕の交った、その表情を。


「エネ…?」


モモの疑問交りの声を最後に、その場を沈黙が占めた。



※ 貴音のお隣さんだったはずの彼。

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飛ぶ計画
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