着いた先は海上。櫂兎は思いっきり漂流していたところ、地元漁師らしきおじさま方に拾われた。
「陸地が近くて本当に運がよかったな、にーちゃん。こりゃ、日頃の行いがよかったんだ」
「あはは…」
本当に行いがよかったなら、妹はすぐに見つかっているに違いない。
ONEPEACE
着いた陸地、そこでいきなり目にした三人の子供の正体にばっちり気付いてしまった櫂兎は、頭をおさえた。
「あーだめ辛すぎて泣くから」
彼らは、幼い日のルフィ、エース、そしてサボだろう。他人の不条理な生き死にに、櫂兎は今まで目をつむっていた。きっとこれから、俺は彼を、彼らを見殺しにする。
「どうした兄ちゃん」
急に立ち止まった櫂兎に、漁師の一人が心配そうに声をかけた。
「いえ、何でもありません」
櫂兎はいつもの笑顔を意識しながら、漁師のあとを追いかけた。
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「へえ、妹探して島々を?」
「ええ、旅してたんですけど、船は壊れちゃいました」
物凄く大嘘である。所持金もないため、漁師の一人が面倒みてくれると言い出した。優し過ぎるだろう。お言葉に甘えまくって、しばらく滞在させてもらうことにした。
……で、俺は今。何故か三人組にいい遊び相手…というかおもちゃにされていた。
(関わらないって決めてたのに――ッ!)
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まあ、そんな気はしていた。俺が戯れ仲良くなった子供見殺しにできるわけもなかった。こっそりサボたち就航前の船に乗り込んでいた俺は、天竜人から襲撃されだしてすぐにサボを抱き上げ海に飛び込み逃げたのだ。
そんな櫂兎は今、またしても漂流中だった。サボも同じく、ぷかぷか空をみながらあてもなく浮いている。
「……櫂兎が何でいるんだよ、それに船はッ」
「……」
櫂兎はその問いには答えず、ただつないでいた手を更にぎゅっと握った。
「なーサボ、俺がお前の書いた航海日誌よみたいって言ったのは覚えてるよな」
「……うん」
「楽しみにしてるからな」
そう聞いたのを境にサボは暗闇に意識を沈め、目が覚め起き上がったときの視界は一変していた。
「おい坊主、生きてるか」
「へっ?」
知らぬ男の顔。知らない船の上。木の板の感触。男はここは革命軍の船だと言った。
(一体どういう――?)
「あっ、あの、おれと一緒にもう一人…」
男が、横に首を振る。サボは茫然とした。
「……読むの楽しみにしてるんじゃないのかよ…ッ」
叩きつけた拳がじんじんと痛んだ。
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数年後、再会したサボにも、エースにもルフィにも、櫂兎はカンカンに怒られる羽目になるのでした。
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