ゴーストハント
渋谷、道玄坂。煉瓦色のビル二階にShibuya Psychic Researchの看板の掛かった扉を開ける。


「ここが、幽霊やなにかが関係すると思われる不可解な現象を科学的に調査してもらえる場所だときいて」


ニコリと笑顔を向ける。相手の返事を待たず、彼は口を開いた。


「霊の見える・触れる・祓える、雑用係を雇いませんか?」


ゴーストハント




・旧校舎


「あれ、渋谷君…じゃないね」


機材を乗せた車の中ををひょっこりと覗き込んだ男の人は、あたしの知らない人だった。


「ナ…渋谷氏なら旧校舎のほうに」


「なるほど。…ひょっとして、君が例のカメラを壊した」


「うっ」


どうしてそれを知っているんだ! やっぱりナルの関係者か…!
その人のよさそうな男の人は、あたしのほうをみてクスリと笑った。


「ずいぶん可愛い助手さんだ」


お世辞だとは分かっているとはいえ、男の人に普段そんなことを言われ慣れていないあたしは慌てふためく。


「俺は渋谷君のところのスタッフの一人でね、彼に頼まれたものを持ってきたんだ」


へぇ、というか人手いるならあたしが助手する必要もないんじゃないだろうか。しかしそう言っては例のカメラ弁償なんて話になりかねないので黙っておくことにした。

彼に機材を運ぶのも手伝ってもらって、あたしたちはナルやほかの霊媒師たちのいる旧校舎のほうへ向かった。
…あれ、この人会ったときから手ぶらだったよな?





「渋谷君、頼まれていたものを…」


そう男の人がナルに近づこうとしたところを、すごい形相の真砂子が止めた。


「あなたどういうつもり?!」


「うぇっ、いやあの」


男の人は真砂子に腕を引かれて、あたしたちと離れた場所でしばらく何か話し合っていた。大して反応示さないナルをあたしはつつく


「ナル、あの人知り合いなんでしょ」


「まあ、こうなる気はしていたからな」


どういうこったい。





話から戻ってきた真砂子は呆れたような顔で、男の人のほうも少し困ったような顔をしていたが、どうやら和解(?)したようだった。


「渋谷君、話は通してくれてなかったのか」


「言ったらそれこそ意味がないだろう」


「まあそうだけどね…同業者がこんなにいるとは思ってなかったよ」


そこで男の人はまわりの人間を思い出したかのように自己紹介した。


「あ、皆さん初めまして。私、渋谷サイキックリサーチ事務職、棚夏櫂兎と申します。といっても今回お仕事のほうには関わらせていただかず、用事が済めばすぐ帰りますが。私本来事務職ですし」


にこにこと笑顔で彼、櫂兎さんがいうが、皆の視線は「じゃあなぜ来た」「用事はなんだ」といっている。その視線を華麗にスルーして彼は旧校舎をみた。


「うわー、ぼろっちい」


ほかに言うことないんだろうか。


「同業者…ってことは貴方も霊がみえたりするの? 今、霊がいるかいないかの話になっているのだけれど」


「残念ながら見えないんですよねー」


本当に残念そうに彼は旧校舎を見て言った。





彼は、巫女さん、ぼーさん、ジョン、後から来た黒田女史といくらか会話交わして、最後にナルと話をして帰って行った。結局用事はナルにだったんだろうか?


「そういやナル、櫂兎さんに何もってきてもらってたの?」


「たぬき」


「は?」


まったく、わけがわからない。






・事件解決後日


「いやー、事務の手足りてなかったから助かるよ」


「えぇ、でも私のすることありますか?」


「あるある、お茶は女の子が入れたほうがおいしい」


絶対に櫂兎さんの紅茶の淹れ方のほうがうまいと思うのだが、彼はそれを頑として譲らない。


「…あ、そういえば旧校舎の色々の時、櫂兎さんナルに何渡したんですか」


「ん? 何も渡してないよ」


「えっ」


「持っていきはしたけどね」


……彼はたまにこういう揚げ足取りのようにちょっとした意地悪することを、ここしばらくで身に染みて知った。


「自称霊の見える少女が本当に見えてるのかってことで、人畜無害なたぬきの霊を」


ああ、だからナルがたぬきって言ったわけだ。
……ん?


「霊? 櫂兎さん、見えないって」


「旧校舎にはいなかったから見えなかったよ」


にこにこと笑顔で言ってのけたぞこの人! こういうのを腹黒いというんだろうか。いや、別に黒くはないか。


「いくら無害とは言っても肩に乗せてたものだから、真砂子ちゃんがどういうつもりだーって……。年下の少女にこの年になって叱られるとは思ってなかったよ…」


そう笑いながら彼は紅茶を口にした。





・別のときに


ナルと二人でお茶してて話題は何故か超能力に。


「超能力は使えないけど魔法なら」


何気なく詠唱破棄杖なしで夢主がティーカップを湯飲みに変える。


「ぶっ」


「なんちゃって」


次の瞬間には湯飲みはティーカップに戻っている。


「な、何をしたんだ…」


「んんん? 何のことかな」


「?!??!?(←混乱中)……(←考え中)。(←結論、気のせいだと思うことにしたらしい)」

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飛ぶ計画
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