短編


 水と油

「空翔君さぁ……自分から言い出したんだよねえ? 何でもするって」
「……っ、……あぁ」
「どんだけコレ、やるつもりなの? 俺も暇じゃないんだけど?」
「……わ、分かってる……」

 けども、と目の前のそれを見上げ、息を飲む。
 鼻先に当たるほどの至近距離にあるのは肉色のグロテスクな性器だ。いくらトイレでちらりと見かけることはあると言えど、こんな風に間近で見たことなどなかった。
 この男のことは幼い頃から知っていたはずなのに、目の前にあるそれはまるで自分のものとは違う。直視し難いほどの視覚的暴力、それにも関わらず視線すら逸らすことができない。
 荻原空翔は、幼馴染の琴峯楓の股ぐらの間に膝をついたまま固まっていた。

 事の発端は一週間前、今年高校生になったばかりの二つ下の妹が変な男に付きまとわれていると聞いた荻原は感情のままストーカー男を成敗する。それからだ、ストーカー男の仲間に付きまとわれることが多くなり、挙げ句の果妹へのストーカー被害もエスカレート。
 そしてこのままではいけない、悪を成敗してやると突撃したのが今日。結果、返り討ちに遭いそうになったのをたまたま通りすがりのこの男――琴峯に助けられたのだ。
 幼稚園、小学校ではよく遊んでいたものの中学に上がってからは髪を染め、妙なやつらとつるむようになり次第と疎遠になっていた琴峯だったが、そんなことも関係なくストーカー男と仲間たちを成敗し、自分たちを助けてくれた琴峯に酷く感動した荻原は勢いのまま「お礼をさせてくれ、金以外のことならなんでもする」と申し出たのだ。
 琴峯はそんな荻原に対し面倒臭そうにその明るい茶髪を掻き上げ、「じゃあ」と口を開いた。

 ――じゃあ、フェラしてよ。

「っふぇ、フェラ……と言われても、俺はお前の満足するような結果を残せるかどうか……」
「声震え過ぎだし、元々童貞にテクとか期待してねえから」
「ど……ッ、なんで、そのことを……ッ!」
「そりゃ、お前見てたら分かるっしょ。フツーに。小さい頃から妹妹いもうと〜って、周りの女は眼中に無し。そんな空翔君が彼女できるわけねーじゃん?」

 気怠そうに息を吐き、荻原の頬に手を伸ばした琴峯は嘲笑う。軽薄な口調だが荻原にとっては鋭い刃物も同然だった。言葉に詰まっていると、「だーかーら」と琴峯はその頬に亀頭をびたんを押し付けるのだ。

「……っ、ぅ……!」
「嫌がらせだっての、分かる? ……別に俺は最初からお前に気持ちよくしてほしいとか思ってねーんだわ」

 荻原の硬質な短髪を後ろへ撫で付けるように触れた琴峯は「空翔君」と甘く、優しく囁きかけた。ピアス穴一つもないその耳朶の凹凸を指でなぞられ、荻原はびくりと全身を硬直させる。琴峯、と開きかけたその唇に亀頭を押し付けるのだ。

「っ、ん……」
「ほら、咥えろよ。……空翔君、早く帰って妹ちゃんに元気な姿見せてあげないと心配するよ?」
「……っ、……」

 口を閉じれば自然と鼻腔が開く。息を止めようとすればするほど息苦しなり、返ってその独特の匂いを嗅いでしまう。鼻腔から咥内、器官へと広がるその匂いに頭の奥がクラクラするようだった。
 琴峯の言うとおり、荻原には性経験はない。年頃の同級生たちと比べても性に対してあまり関心はなく、寧ろ『これはよくないものだ』とざっくりとした理由で遠ざけていた節すらあった。
 そんな荻原を知っていて、この男はこのような行動に出たのだ。だとしても、荻原にはその理由が分からなかった。
 けれど、感謝の気持ちも確かにあった。なによりいくら疎遠になっていても、いい噂の聞かない男であっても、荻原にとって琴峯は幼馴染であり、友人で――そして恩人だった。そう考えると嫌悪感は薄れた。
 唇を開き、目の前の亀頭を一生懸命咥える。亀頭全体を含めようとするものなら顎が大きく開き、息苦しかった。流石にこれ以上は飲み込めない、そう判断した荻原は息苦しさを紛らわすように咥内のそれにちろりと舌を這わせるのだ。

「……ッ、ん、ぅ……」
「………………」
「ッ、ふ……ッ」

 唾液を絡めるようにカリ全体に舌を這わせる。琴峯は息を乱すことなく、ただじっと熱心に自分の股間に顔をうずめ、性器を頬張る荻原の頭頂部を見詰めていた。
 技巧などもない、唇や頬の裏、舌、使えるもの全てを使ってただ目の前の琴峯の性器にしゃぶりついた。それでも咥内の琴峯のものは確かに先程よりも硬度を増し、咥内を内側から圧迫するのだ。
 唾液にしょっぱい味が混ざる。粘度を増し、口の中で舌を動かすたびに荻原の咥内で下品な水音がぐちゃぐちゃと絡み合う。

「っ、き、もひ……いいは……?」
「……全然よくない、てか、少しは嫌そうな顔くらいしろよ。お前ホモなの?」
「……っ、だって、おまえは……」

 恩人だから、と言いかけたとき。
 琴峯は深く息を吐き、そして荻原の頭を掴んで無理やり自分のモノを吐き出させた。ぶるりと揺れ、唾液と先走りで濡れた性器が現れる。

「あー……いいから、そういう寒いのは。昔から思ってたんだけど、お前よくそんなんで今まで生きてこれたよな」

 琴峯の言わんとしていることが分からずきょとんとしていると、琴峯はそのまま傅く荻原の腿の隙間、その股間に爪先を向ける。そして、スラックスの上からでも分かるくらい主張しているその下腹部を柔らかく靴底で踏付けた。
 荻原は、琴峯が本気で踏み潰すつもりはないのだと分かっていた。それでも男としての弱点をこうして圧迫されると自ずと恐怖が沸き立つ。

「ッ、こ、とみね……?」
「…………次はこっち。マゾで男好きな空翔君ならできるだろ?」
「……な、にを……」
「脱いでよ、ここで」

 早く、とその形のいい唇が歪み、薄い笑みを浮かべた。本心の読めない冷たい眼差しに荻原は戸惑った。

「っ、……そ、れも、俺に対する……嫌がらせなのか?」
「そーだけど? できないなら別にいいけど、一応フェラっていう約束はもう済んだんだし」
「……っ、お、お前は……俺のことが嫌いなのか? ……だから……ッ」
「あーもう、うるさいなぁ」

 困惑し、足元に縋りつく荻原に対し琴峯は苛ついたように自分の髪を掻きむしる。そして荻原の顎を掴み、その目を真正面から覗き込むのだ。

「嫌いだよ。――ほら、これで満足した?」

 あくまでも迷子の子供を諭すような柔らかな口調ではあったが、その口から吐き出された言葉は大きなナイフとなって荻原の胸を貫いた。
 少なくとも、琴峯が自分を助けてくれたのは少なからず自分のことを思ってくれていたからだと思っていた。自惚れだとしても、どれだけろくでもないやつと言われていようが琴峯の良心を信じていたかった。
 それを、琴峯の手によって自ら崩される。

「……っ、琴峯……」

 フェラをしろと言われたときよりもショックを受けている自分がいた。目の前の男が何を考えてるのか分からず、理解もできない。この男の望みは出来ることなら叶えてやりたいと思ったが、それでも琴峯にとっての願いは――。

「……やっぱいいや、さっきのナシ」

 どうすればいいのかわからず、棒立ちになる荻原に琴峯は興味が失せたように深く肩を落とした。
 そして、どういうことだ、と顔を上げた矢先だった。琴峯に胸倉を掴み上げられる。
 そのまま強い力で引っ張られたと思った次の瞬間にはすぐ目の前には琴峯の整った顔が視界いっぱいに映り込んでいた。
 一瞬、何が起きているのか理解することができなかった。唇に何か柔らかいものが触れたと思ったとき、そのままやつの口から覗く赤い舌にべろりと唇を舐め上げられるのだ。

「こ、とみね……ッ?」 

 キスをされたという意識すら荻原にはなかった。
 琴峯の言動に振り回され、脳の処理が追いつかない。目の前の男を見上げれば、琴峯は変わらない調子で溜息とともに言葉を吐き出すのだ。

「……やっぱお前、ムカつくからこのまま犯すわ」


 荻原空翔にとって、性交渉とは本来ならば好きあったもの同士、真っ当な付き合いをした上で段階を経て行う神聖な行為だった。物心ついたときから両親の手から色事というものや男女間の交友について避けられてきたのもあるが、だからこそ荻原は避けてきた。
 それを今、この男――琴峯楓によって何もかも覆され、踏みにじられている。

「ん、ぅ……ッ!」

 気付けばソファーに踏ん反り返る琴峯の膝の上に向き合うような形で座らされ、咥内を舌でかき回されていた。
 粘膜という粘膜中を琴峯に舐られ、侵食され、塗り替えられる。それが恐ろしくて、それ以上に先程琴峯の性器を咥えたことで口の中に残った残滓を琴峯自身に味わせることに躊躇い、拒もうとするが力の差は大きかった。
 昔は体格差はなかった。力の差もそうだ。それでも今は、華奢に見えてがっしりと筋肉のついた腕で腰を抱かれれば立ち上がることすらできず、後頭部を掴まれ、更に奥深く喉奥まで舌で犯された。呼吸すらもままならず、陸にも関わらず溺れそうになる荻原を琴峯は鼻で笑う。

「口の中くっせえ……ッ、よく好きでもないやつのチンポフツーに舐めれるよな。俺なら絶対無理、やっぱおかしいよ、お前」
「っ、ふーッ、ぅ゛……ッ! ひ、ぅ、」

 キスに気を取られている間にベルトを引き抜かれ、あっという間に下着ごと脱がされ下半身を露出させられる荻原。無駄のない引き締まった下腹部とは言えど、あまりにもその姿は間抜けに思えて恥ずかしかった。必死に隠そうとする荻原に口元を緩めた琴峯はそのまま剥き出しになった臀部へと手を降ろしていく。
 硬く筋肉質な尻の肉だが指を沈めれば程よく弾力があり、その揉み心地のあまりに次第にその手付きは荒々しいものとなる。

「っ、こ、とみね……ッ」
「……ッ、……」
「っ、は、ぅ……ッ!」

 尻の割れ目を大きく開かれ、硬く口を閉じた肛門が剥き出しになる。
 自分でも見たことのないような場所を琴峯に見られ、そして弄られている。それが酷く恐ろしく、それと同時に背徳感を煽られた。
 琴峯は荻原の口に指をねじ込み、その咥内に溜まった唾液を絡み取る。そのままちゅぽんと音を立て、糸を引いて抜かれたそれを肛門へと押し当てた。硬く、骨張った琴峯の指は唾液を潤滑油代わりにして窄みへと埋め込まれていく。

「……ッ、ふ、ぅ……ッ」

 渇いた内壁を引っ張るような痛みに堪らず喘げば、琴峯は笑った。琴峯は苦しがる自分を見て楽しんでいる。何故琴峯が自分のことをそれほどまでに嫌ってるのか荻原には理解できない、それでも少しでも気が紛れるのなら、それが恩返しになればいいと思って堪えた。

「ッ、は……ッ、く、ぅ……ッ」

 最初は入口と、その付近の内壁を解すように中を捏ねられ、揉まれ、広げられた。腰が震え、奥歯を食いしばって耐えようとするが自然と目の前の琴峯にしがみつくような形になってしまう。
 嫌がられるかもしれないと思ったが、琴峯は何も言わない。それどころか、二本目の指を入れるのだ。
 痛みよりも息苦しさの方が勝った。薄暗い部屋の中に自分のうめき声と下腹部からの濡れた音が響く。ぬちぬちと音を立て、丹念にほぐされる。
 最初は苦痛しかなかったが、それでも呼吸の仕方や力の抜き方を覚えればそれ以外にも気を向けることはできた。

 この男の元へ来て、どれほどの時間が経過したのか荻原には何もわからなかった。
 気付けば中を蠢く指は二本から三本へと増え、指の付け根まで咥え込むようになった下腹部は琴峯の指の動きを鮮明に感じ取れるようになったほどだった。臍の裏側を捏ねられると脳の奥からどろりとした熱が溢れ、たまらず声が漏れた。指の出し抜きに耐えきれずに小刻みに痙攣する下腹部、勃起したままの性器が痙攣に合わせてぶるぶると震え、内腿に当たる。

「っ、ふーッ、……ッ、ぅ、……ッ、ん……ッ、ぅ……ッ」
「……」
「ッ、ん゛、ッ、ふ、……ッ、ぐ……ッ」

 耐えなければならない。琴峯のためにも。
 なるべく不愉快にはさせたくなかった。琴峯が何をしたら喜ぶのかわからない、それでも自分の声を聞くと琴峯は嫌がるのではないかと必死に手の甲を噛んで声を殺した。
 勃起した性器からはどろりと先走りが垂れていた。琴峯の服を汚さないようにしたかったが、己の体を律することができるほどの余裕も経験も自分にはなかった。カクカクと琴峯の腹部に腰を押し付けてしまいそうになり、必死に腰を離そうとするが背中へと回された琴峯の腕がそれを許さない。琴峯にしがみついたまま、何度目かのに絶頂を迎える。びりびりと腰が震え、どろりと先走り混じりの精液が琴峯を汚した。

「……ッ、は、……ふ……ッ」
「…………」
「っ、こ、と……みね……」

 力を入れることすらできなかった。ぐったりとしているところを琴峯の腕に抱き抱えられる。包み込むような琴峯の体温に安堵したのもつかの間、散々指で解されぽっかりと口を開いたままの肛門に指とは比にならないほど硬く嵩を張った亀頭を押し当てられるのだ。
 男女の性行為すらも知らない、男同士で性行為ができることなんてもってのほかだ。まさかそこにと驚く暇もなく、琴峯は荻原の腰を掴み、己の性器の上に座らせた。
 声を上げることすらもできなかった。目を見開き、近所のようにぱくぱくと口を開閉させる荻原はあまりの圧迫感、そして衝撃に堪らず琴峯にしがみついた。琴峯はそんな荻原に満足そうに目を細め、息継ぎの暇すら与えぬとでもいうかのように下から思いっきり突き上げるのだ。

「――ぁ゛ッ、ひ……ッ!」

 びくんと大きく仰け反り、逃げようとしていた荻原の腕を手綱のように引っ張り更に奥へと亀頭を埋め込む。筋の浮かんだ荻原の腹部がびくんびくんと痙攣する。目を見開いたまま息すらできないと藻掻く荻原に、琴峯は唇を重ねた。
 キスというよりもそれは捕食に近い能動的なものだった。薄皮に覆われたその唇に歯を立て、唾液も酸素もまとめて奪い取る。脂汗を滲ませ腕の中で痙攣する荻原を捉えたまま、性急に、本能のまま琴峯は荻原を犯した。
 いつもの笑顔も、真っ直ぐな瞳もない。生理的な涙を滲ませ、やめてくれと頭を振ってしがみついてくる荻原は正しく琴峯が求めていたものだった。

 琴峯楓にとって、己が油ならば荻原空翔は水のような存在だった。
 幼い頃からこの男とは本能的に合わないことを琴峯は理解していた。
 まずあまりの暑苦しさが嫌いだった。過干渉も許せなかった。それを伝えても、荻原は何一つ理解しない。荻原のような鈍感で厚かましい人間が嫌で、琴峯はわざと荻原が自分から遠ざかるように己から作り変えた。
 荻原が嫌いなものになれば、この男も自分に近付いて来ないはずだと思ったからだ。
 なんだってよかった、この男がいなくなるなら。そして思惑通り、中学に上がれば周りの人間はがらりと変わる。そこに荻原の姿はなくなっていた。

「ッ、ぉ゛、ッ、ふ、ぅ゛……ッ!!」
「アハッ、汚え声……豚みたいに鳴くじゃん、なあ空翔君……ッ!」
「っ、ひ、ぃ゛ぐ……ッ!!」

 打ち込む。腰を叩き付ける度に荻原の体は大きく反応するのが面白くて、堪らなくて、夢中になって琴峯は荻原の奥の奥まで亀頭で貫いた。この挿入してから既に何度か絶頂を迎えているのだろう、痙攣の収まらない内壁に性器を締め付けられる感覚は琴峯を余計昂ぶらせた。

 荻原が自分と違う人種だと分かっていた。だからこそ余計、許せなかった。自分だけ綺麗な顔をして、何も知らない顔をして手を差し伸べてくる荻原が。
 ――だから、数人に囲まれている荻原を見たとき、酷く興奮した。
 最初は助けるつもりなどなかった。ほんの少し、魔が差した。お礼など最初からほしくもなんともない、意味なんて為さないのだから。

「はっ、つばさく……ッ、ん、ッ、ふ、ははッ、やば……っ、その顔妹ちゃんに見せらんないねえ〜〜?」
「っ、はーッ、ぁ゛ッ、ふ、……ッ、ぅ、……あ゛……ッ」
「空翔君分かる? ……ここ、臍の裏側、ここをさぁ……チンポのカリでこぉ〜やってゴリゴリって引っ掛けてやると死ぬほど気持ちよくない?」
「あ゛ッ! ぁ、あ、いやだ、ことみ゛ね……ッ、ぅ゛、ふ、ぅう゛……〜〜ッ!!」

 どちらのものかともわからないほどの体液が飛び散る。それでも無視して、荻原の前立腺を集中して刺激する。いやいやと子供のように頭を振る荻原の顎を掴み、そのまま唇を塞げばその汚い喘ぎ声もくぐもった悲鳴へと変わった。
 舌を絡め、逃げようとする後ろ首を掴む。舌の付け根ごと捉えれば逃れられない。口を閉じることすらできず、とろりと唾液を垂らす荻原の目は焦点が合っていない。そんな荻原を見て、初めて琴峯は目の前の男が愛おしく思えた。
 舌の裏側の粘膜をなぞれば荻原の中は自分を締め付けてくる。拒もうともせず、それどころか拙いながらも必死に応えようとしがみついてくる姿は滑稽で、可愛い。それを死んでも口にするつもりはない。
 呼吸が上がる。己の射精が近付くのを感じ、琴峯は更にピストンの間隔を狭めた。混ざり合う吐息。恐ろしいほどお互いの体温が高くなっている。それでも嫌ではなかった。

 ――もしかしたらずっと、このときを待っていたのかもしれない。
 汚れを知らないこの男を、自分の手で汚すことを。
 咥内、声を上げる荻原に舌を噛まれながらもぼんやりと琴峯は考えていた。

「……ッ、零すなよ」

 小さく囁きかけたときだ。どくんと大きく脈を打ち、荻原の体内奥深くへと射精しながら琴峯に己の血を飲ませた。


 ――数日後。

「ッ、ぁ……ッ、こ、ことみね……ッ、」
「……空翔君さあ、お前、いつまで経っても成長しないよなぁ?」
「っ、そ、んなこと……ない……ちゃんと、練習したんだぞ」
「……ふーん? その割に全然上手くなってないけど? それってただ浮気しただけだろ」
「……っ、う、浮気は……してない、ネットでその、映像から学びを得ようとしただけで……」
「…………はぁ」
「な、なんで溜息吐くんだ……?!」

 あれから琴峯のおかげか、嫌がらせも妹に対するストーカー行為もぴたりと止んでいた。
 琴峯は別に何もしていないと言ったが、荻原には分かっていた。こうして琴峯と一緒にいることが抑止力になっているのだと。
 普段から素行がよくない琴峯だが、それでもやはり根は昔と変わらずいいやつなのだと荻原は確信していた。
 だから、こうして琴峯に呼び出されては体を弄ばれようとも、道具のように犯されようとも、性処理道具として使われようとも抵抗はなくなっていた。
 そして前回のように琴峯にフェラを頼まれたのだが、相変わらずもたつく荻原にとうとう琴峯の痺れがキレる。鼻を摘まれ、呼吸を止められそうになった矢先開いた口にそのまま性器をねじ込まれる。顎が外れそうなほどの質量にぎょっと目を見開けば、目の前、琴峯は笑っていた。

「……見て勉強したってなんもなんねえよ、それなら俺で練習すりゃいいじゃん?」
「っん゛ぉ、゛ッ、ごぶッ」
「そーそー……ッ、歯ぁ立てないように優しく可愛がれよなぁ?」
「ん゛……っぶ、ッふ、ぅ……ッ」

 そうゆるく喉の奥へと性器を突き立てるように腰を動かす琴峯。その度に口の中で唾液と先走りが混ざり合い、泡立ち酷く吐き気を催したが、荻原はそれを必死に堪えて受け止めようとした。
 普段凛とした荻原が自分の性器を頬張り、不細工に歪める。そんな荻原の顔を見てると、琴峯は己が満たされているのが分かった。

 水と油。それでも、どろどろに汚れきった汚水ならば。
 嗚咽の度に性器全体を締め付けられ、琴峯は吐息を漏らす。そしてピストンの速度を早め、そのまま苦痛で顔を歪めた荻原の喉奥に射精した。
 一滴も零さないよう、必死に喉奥へと落とす荻原を見詰め、琴峯は一人ただ笑った。

「――またよろしくな、空翔」

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