短編


 卑屈引き篭もり弟が爽やかで優秀な兄に力尽くで理解からせられる話

 昔から兄の存在が目障りだった。たかだか二年、たった二年早く産まれただけのくせに偉そうな兄が。
 俺と正反対の兄。性格悪いくせに人前では猫被ってるお陰で人を見る目がないやつらは『いい子』だなんて言ってるのだ。本当、馬鹿だ。全員死ねばいい。兄も、兄を称賛するやつらも。
 文武両道、馬鹿でクソ野郎のくせにテストの点だけはいい兄に両親は手放しで兄を可愛がる。頭も悪く人前でろくに喋ることもできない俺は人前に出すことも恥ずかしい失敗作らしい。
 いつからだろうか、俺の居場所がなくなったのは。
 家族なんて血の繋がっただけの他人だ。顔を合わせるのも嫌で、高校にも行かなくなった俺は日中部屋に篭もっていた。
 起きるのは夕暮れ時、そして寝るのは他のやつらが活動し始める朝方だった。
 部屋に閉じこもってひたすらネットをする。どうせこのまま死ぬのだろう。どうだっていい。寧ろさっさと死にたさすらあったが、俺はどうしても痛いことだけは駄目だった。……そんな自分も、なにもかも嫌いだった。

 そして今日も家族が寝静まった頃合いに飯を食おうと一階へと降りる。なるべく物音を立てないように、日持ちがよくて食えそうなものを掻払って部屋へと帰ろうとしたときだった。
 玄関口から物音が聞こえてきた。
 咄嗟に冷蔵庫の扉を閉じ、慌てて部屋へと戻ろうと階段を登ろうとしたときだった。抱えていたカップ麺がコロコロと落ち、それを拾い上げようと腰を屈めば日頃の運動不足がたたったようだ。腕の中のものを全て落としてしまう。
 ――最悪だ。
 昔からだ。俺は鈍臭く、何をやっても上手く行かなかった。こんな時間に帰ってくるやつなんて一人しかいない。早くこの場を離れたくて、泣きそうになりながらも落ちた食糧たちを拾い上げ用としたときだった。
 ドスドスと乱暴な足音が近づいてくる。焦りと恐怖で強い尿意が込み上げてきた矢先だった。

「……なんだ、倫冶お前まだ起きてたのか」
「っ、――!!」

 見たくもない顔があった。
 兄――彪十は俺の顔を見るなり人を小馬鹿にしたように笑うのだ。
 今日は新しくできた女のところに泊まるっていうから油断してただけに、よりによってこんな場面に出くわすなんて。
 兄と俺は全く似ていない。顔も、声も、体格も、なにもかも。俺が欲しかったものを全て兄が手に入れた。整った顔も、恵まれた体格も。だからこそ俺は兄と並ぶのが嫌で、視界にも入れたくなかった。
 兄から逃げるよう、落ちたなんこかのお菓子を無視して一気に階段を駆け上がろうとすれば伸びてきた腕に「待てよ」と首根っこを掴まれる。
 締まる首元。バランスを崩し、足元が滑りそうになる。心臓が止まりそうになるのも束の間、「離せよ!」と慌てて腕をがむしゃらに振り回して逃げようとするが兄は怯むどころか子供を相手にするように「おい、でけー声出すなよ」と宥めてくるのだ。兄の顔が近付き、その酒の匂いに思わず顔を顰める。

「丁度良かった。ちょっと付き合えよ、倫冶」

 何をなんて、聞かずとも兄の言葉の意味がわかった。スウェット越し、ジーンズの上からでも分かるくらい固くなった兄のものを押し付けられ全身が凍りつく。
 酒を飲んでるのか。最悪だ。親父に見つかって殺されろ。そう思うのに、兄に見つめられると背筋が凍りつく。足元が竦む。それでも、嫌だ。

「っ、いや、だ……」

 そう、精一杯の抵抗で声を振り絞れば瞬間、腹に兄の拳がめり込む。臓器を押し上げられ、さっきまで飲んでいたオレンジジュースが逆流しそうになって咄嗟に口を抑えたとき。兄はそのまま俺の肩に腕を回し、笑うのだ。

「倫冶。俺今すげー気分いいんだよな。わかるだろ?」
「……っ、ぅ゛、え゛……」
「お前がいい子にしてたらお兄ちゃんがいいもんやるよ」

 そう笑いながら今度はケツを乱暴に掴まれる。布越しにケツの割れ目に指を這わされ、血の気が引いた。「な?」と囁きかけられる。自分がどんな反応したのかすらもわからない。
 落ちた菓子を拾った兄はそれを俺の腕に戻し、そのまま上機嫌に鼻歌を歌いながら自分の部屋と向かうのだ。
 ――最悪だ。最悪だ。最悪だ。
 逃げることもできた。自分の部屋にさえ飛び込んで鍵を掛ければいい。けれど、肩を掴む兄の指はちょっとやそっとじゃ離れそうにない。そもそも俺の力と足では兄から逃げることすらも不可能だろう。

 ――兄の部屋。俺は兄の部屋に来たことは初めてではない。昔は毎日のように入り浸っていた。
 けれど物心をついてから兄と話すことがなくなり、全く足を踏み入れることはなかったのだが――こうして最近また兄の部屋に足を踏み込むようになったのだ。
 きっかけなど、思い出したくもない。


「っ、ぁ゛……っ、ふ……っ」

 枕にしがみつき、顔を埋める。背後から覆い被さってくる兄に腰を掴まれ、ひたすら女のように犯されるのだ。
 ここ一週間、ほぼ毎日兄に犯されてきたアナルは初めて兄に無理矢理犯されたときに比べてすんなりと受け入れるようになっていた。それが嫌で、嫌で、泣きたいのにそれとは裏腹に兄の太く勃起したペニスで乱暴に犯されるだけであっという間に何も考えられなくなる。

「……っ、倫冶、お前また痩せたな。いい加減もっと食えよ、抱き心地最悪なんだよお前」
「……っ、ご、め゛っ、んなざ……ぁ゛っ、い、そ、ご……っ、ぉ゛……ッ」
「……っ、代わりに感度いいのはいいけど、こんな貧相な胸の感度よくてもなぁ?」
「ッ、ひ、ぅ」

 腰を掴んでいた兄の分厚い掌が胸を這う。そのまま尖った乳首をぎゅうっと抓られれば、挿入されていた下腹部に力が篭もった。

「っ、ぁ、あ……ッ」
「あ、倫冶君ここ弄られながら犯されるの好きなんだ?……っ、すげー締りよくなった」
「ッ、ち、が」
「違わねえだろ」

 伸びるほど引っ張られたと思えば、今度は円を描くように優しく撫でられる。雑で乱暴な愛撫なのに、兄の愛撫に慣れた体はその指の動きだけで全神経が乱される。食いしばった歯の奥。たらりと涎が溢れ、枕にしがみついた。

「っ、ふーッ、……ぅ、ふ……ッ!」
「……ッ、は、かわいーなあ倫冶……」
「ッ、……ッ!!」

 酔っている兄はしつこい。
 枕に顔を埋めた俺の背中、くっつくようにベッドへと腕をついた兄。その拍子に更に奥まで太い性器が刺さり、堪らず跳ね上がる。そんな俺を押し潰すよう、短いストロークで体重を掛けるようにずんずんと奥へ奥へと亀頭でキスしてくるのだ。
 口を開けば悲鳴が出てきそうで怖かった。俺は堪えるように枕に爪を立てる。
 兄はそんな俺の項に唇を押し付け、そして吸い付くのだ。

「っ、ぅ……ッ、ふ……ぅ……ッ!」

 兄弟でこんなの頭がおかしい。正気の沙汰ではない。分かっている。わかってる。おかしいのは兄だ。知っている。だから俺はおかしくはない。おかしいのはこいつだけで。

「ッ、ぁー……ッ、そろそろでそう」
「っ、っふ、ぅ゛……ッ!」
「っ、倫冶ァ、逃げんなよ。お兄ちゃんの精子、ちゃんと奥まで飲めよ、なあ」

 手首を掴まれ、頭を枕へと押し付けられる。息苦しさに耐えきれず、腰が浮く。兄はそんな俺の下腹部をがっちりと掴んだまま、更に激しく腰を打つのだ。
 そして俺の視界が白く染まるのとほぼ同時に熱が膨れ上がり、溢れ出した。腹の奥、注がれる精液の感触に胃が満たされていく。動くことなどできなかった。兄の荒い呼吸を聞きながら、俺は視界が狭まっていくのを感じた。


 初めて兄に犯されたのは、暴力の延長線だった。
 いつものことだ。帰ってきた兄が俺の部屋に無理矢理入ってきたのだ。
「たまには家から出たらどうだ。母さんも心配してるぞ」なんて兄貴面して言い出すものだから酷く腹立ったのを覚えてる。
 誰のせいだと思ってる。あんたが居なきゃよかった。あんたのせいで人生がめちゃくちゃだ。死ね。……多分、そんなことを言ったのを覚えてる。とにかく、兄に説教されるのが嫌なのと俺のテリトリーを兄に侵食されるのが嫌だった。
 そのときだった。俺が兄に殴られたのは。
 それまで俺は兄と喧嘩したこともなかった。兄はいつも笑って許してくれたからだ。だけど、今回は違った。床の上、腰を抜かした俺は目の前の兄をただ見上げていた。兄は、見たことのない顔をしていた。

「お前、何様だ?家に金も入れねえで、学校に行くのは嫌だって引きこもっては母さんや父さんにも文句垂れて、今まで黙っててやったが……お前俺に対してなんだその口の聞き方は」
「……ッ、ぁ……」
「努力もしねえで文句ばっか垂れる。なんの役にも立たねえお前みてえなやつが一番腹立つんだよ、倫冶」

 二発目は腹だった。兄の膝で蹴られた体はまるでボールのように跳ねた。重い一発に堪えきれずに蹲りえずく俺の前髪を掴み、顔を上げさせられた。霞む視界の中、あまりの恐怖で兄の顔を見ることができなかった。

「謝れよ、倫冶。撤回しろ」
「っ、ふ、ざけんな……こん、な゛ッ!!っ、ま、た……殴り、……や゛、待ッ……ひ、ぐぅ゛ッ!」

 頬を殴られた瞬間、どこかの血管が切れたのかどろりと鼻の穴から鼻血が溢れる。殴られた視界が霞み、全身が熱くなった。痛い。鼻も、肋骨も。どこかの骨が折れたのではないか。そう思うほどの痛みだった。
 俺は舐めてた。兄は俺を殺す気はないと思っていた。ただ脅すだけなのだろう。そう思っていたが、俺が反抗的な態度を取れば兄は容赦なく俺を殴るのだ。顔は腫れ、顔を濡らすのが鼻血なのか涙なのかすらも分からない。
 もう殴られたくなかった。兄が腕を動かしたとき、俺は慌てて顔を覆った。

「っ、ご、めんなひゃ、も゛ぉ、あやまる……からッ、な、ぅ゛らないれ……ッ」

 じわりと熱くなる下腹部。痛みすらも感じなかった。これ以上は本当に死ぬ。脈打つ鼓動の間隔が短くなり、このまま心臓が停まってしまうのではと思えるほどだった。泣きながらごめんなさいと腫れた咥内、もごもごと謝罪をすれば兄は俺の腕を乱暴に掴み、そして俺の顔を上げさせた。
 そのときだった。目の前に兄の腰がきたと思った矢先、兄は膨らんでいたそこからペニスを取り出した。広がるのは野郎の匂いだ。初めて見た他人のものに、おまけに自分のものとは形からなにまで違う。子供の腕ほどある太く隆々とそそり立つペニスを唇に押し付けられるのだ。

「しゃぶれよ、倫冶。……お前みたいなやつでも、俺が少しくらい役に立ててやる」

 俺の血で赤くなった指で頬を撫でたたときの兄の目は今でも覚えている。あれが、あの男の本性だったのだ。ナイフを首筋に当てられたような感覚だった。拒むことはできず、俺は切れた口の中、自ら兄のペニスを咥えたのだ。
 その日からだ、俺達の関係は大きく変わった。その日の内に兄にアナルを犯される。あまりの痛みに泣き叫べばまたケツを叩かれるのだ。それが嫌で、俺は必死に声を殺した。
 母親も父親も兄の性格に気付いてない。前々から兄はモテていたが、特定の相手と長続きすることはなかった。今ではその理由がよくわかった。
 兄は気まぐれに俺を犯す。今夜だってそうだ、あまりにも身勝手なあまり女に嫌がられたのだろう。だから、その代用品に俺を使うのだ。

 気付けば自室のベッドの上だった。
 立ち上がろうとすれば、下着すら身に着けていない下腹部からどろりとしたものが溢れ出す。

「……ッ、クソ……」

 悔しさと痛みで溢れる涙を拭い、俺は掴み取ったティッシュで雑に中出しされた精液を拭った。
 なにがいい子だ、あのクソ野郎。これがいいもののつもりか?
 結局飯を食う気にもなれず、俺は最悪な気分を誤魔化すために再び布団に飛び込んだ。
 ただでさえ疲労していた肉体だ。間もなくして深い眠りへと飛び込むことになる。
 そして次に目を覚ましたのは、兄が部屋にやってきてからだ。乱暴に開かれる扉に飛び起きる。
 兄にはあの日、部屋の合鍵を奪われた。俺が内鍵をかけようと、兄だけは無視して外から鍵を開けることができたのだ。したがって、俺の部屋に自由に出入りできるのは兄しかいない。

「なんだ、また寝てたのか?」
「っ、な、に……」

 出ていけ、と言いたいのを堪えた。逆らえば殴られるとわかったからだ。痛いのは嫌だ。何日も顔が腫れ上がり、食べるのも離す事も困難になるのは嫌だった。

「何って、様子見に来てやったんだよ。……さっき白目剥いて死んでたからな」

 言いながら、どかりとベッドに腰を掛けてくる兄は俺の腰に腕を回す。筋肉質でがっしりとした腕が怖かった。この腕に殴られる痛みを知ってるからこそ、余計。

「っ、……大丈夫……だ……別に……」
「さっきは悪かったな。……俺もちょっとやり過ぎたわ」

 言いながら、腰から背中を撫でられる。
 至近距離で顔を覗き込まれ、ぞくりと腹の奥が震えた。ああ、と思った。この男は、と。
 俺は、あんたの女ではない。ましてや、優しくされたいなども思ってない。それなのに、兄の態度から分かった。

「……倫冶、まだ頬腫れてるな」
「っ、ん、ぅ……あ、別に……これは……も、痛くない……」
「ここも切れてるな」
「っ、に、いちゃ……」

 あまりにも自然な動作で頬を撫でられ、そのままむに、と唇をなぞられる。こんなことをされて喜ぶはずがない、頭では分かってるのに兄に触れられるだけで体が反応するようになってしまったのだ。最悪なことに。
 膝を擦り合わせ、必死に股間が反応してるのを隠す。裾を掴んで、ぎゅっと手を握り締めたとき、兄に唇を舐められた。

「っ、待、……ッ、ん、ぅ……ッ」

 ちゅ、ちゅ、とまるで可愛がるようなキスを唇から痣の残る頬へと落とされる。全身が泡立つほどの優しいキスだった。気持ち悪くなって吐き気がした。この男は、本当に俺を女の代用品にしてるのだ。そう知らしめられてるようで、怖かった。

「……っ、ん、にい、ちゃ……ッ、ぁ、ん、……ッ」

 未だ異物感の残る尻を揉まれ、息が浅くなる。裾の下の己のものが持ち上がるのがわかった。痛いのは、嫌いだ。……優しくされるのは、もっと。

「ん、ぅ……ッ」

 胸に伸びてきた掌に、薄手のシャツの上から乳首を探り当てられる。骨張った指先で執拗に転がされ、乳輪ごと柔らかく揉まれればあっという間に両胸の乳首は人目でわかるほど突き出すのだ。

「っ、は、んむ……」

 唇を貪られながらも平らな胸を弄られる。……挿入されるよりもまだ負担が少ないので耐えられる。が、兄に触れられすぎて明らかに乳首が肥大してるのが自分でも分かっていた。服の裾を持ち上げられ、そのままするりとシャツの中へと入ってきた兄の指はカリカリと乳首を引っ掻き、執拗に虐めるのだ。

「に、いちゃ……ッ、そ、こばっか……」
「ずーっと触っときゃいい加減胸膨らむかと思ったけど、全然だな。……でかくなんのはここだけだし」
「っ、ぁ……ッ!」
「乳首摘まれるの好きだよな、お前。今度クリップでも買ってきてやろうか」

「ここ用の」と楽しそうに笑いながら兄に乳首を捏ねられ、堪らず腰を浮かすがすかさず捕まえられ、そのまま兄の膝の上に載せられるのだ。
 そして大きな掌で両胸の乳首を撫でられる。片手で、それも雑に触れられただけでもびくんと反応してしまうのが酷く恥ずかしかった。
 腰に当たる兄のものが更に大きくなるのがわかった。また挿入される。それが嫌で、俺は咄嗟に背後の兄のものに触れた。

「あ、なに?」
「……っ、ぉ、れも……する……」

 そう、震える声で呟けば、兄は目を丸くした。それからすぐ、発情しきった目で俺を見据えるのだ。その視線にぞくりと背筋が震える。腰が熱くなった。

「へえ、倫冶君はなにしてくれんだ?」

 いやらしい笑みを浮かべ、兄は俺から手を離した。
 兄に長時間体力の限界まで好き勝手されるより、さっさと満足させて部屋から出ていってもらいたいというのが本音だった。
 俺は兄の上から降り、そのまま兄の足元に膝をついた。そして、兄のジャージに手を伸ばす。テント張ったそこから勃起した性器を取り出した。相変わらずグロテスクだと思う。太い血管が這う肉色のそれに唇を寄せ、半ばやけくそにその裏筋に舌を伸ばした。

「っ、ふ……ん、む……ッ」

 唇で吸い付きながら、舌先でちろちろと太い血管をなぞる。エロ動画の見様見真似だ。最初の頃は下手くそだと兄に散々殴られたからネットで調べたのだ。……実践するのは初めてだった。しょっぱくて、青臭い。どうしても匂いを嗅ぐのが嫌だったが、背に腹は変えられない。下手くそなりにカリの溝や尿道など、弱そうなところを重点的に責める。兄はそんな俺を見ていたが、やがておとなしくしてるのに飽きたようだ。伸びてきた爪先が股座に潜り込む。そのまま柔らかく股間を踏まれ、息を飲んだ。

「続けろよ」

 止めたら殺すぞ、とでも言わんばかりの態度だった。くにくにと性器を押し潰され、もどかしい快感と恐怖で板挟みになりながらも無我夢中で兄の性器にしゃぶりついた。自分の唾液に混ざって、兄の先走りも段々濃くなってくる。
 そろそろかと思い、亀頭から唇を離そうとしたときだった。兄に後頭部を鷲掴まれる。瞬間、喉の奥までペニスを咥えさせられるのだ。

「ん゛ぅ……ッ!!」
「っ、は……あいっかわらず狭いなお前の喉」
「ぅ゛ッ、ふ……ッ!!」

 藻掻く俺を無視して兄はそのまま俺の喉ちんこ目掛けて腰を打ち付け始めるのだ。吐き気と息苦しさに収縮する喉の刺激に興奮してるのか、更に口の中で大きくなる兄のものに顎が外れそうになる。
 唾液が絡む。呼吸がまともにできず、涙が溢れた。兄はずっと笑っていた。とうとう喉奥に射精され、受け止めきれなかった俺はその場で咳き込んだ。鼻の穴からも溢れる精液、咥内いっぱいに広がる青臭さと粘つくそれを必死に吐き出そうとすれば顎を閉じられ「全部飲み干せ」と言い出すのだ。俺は泣きながら唾液で精液を飲み込んだ。
 一度抜けば終わる、そう思っていた俺が甘かった。咽返る俺の尻を撫でるように下着ごと脱がしにかかる兄に息を飲む。

「いっ、や゛、だ、今日は、も……」
「あ?なんか言ったか?」
「ッ!!」

 腕を上げる兄に全身が竦んだ。「まさか、無理なんて言わないよな」と笑いながら圧を掛けてくる兄に堪らず俺はこくこくと頷き、俺は自分から腰を持ち上げる。

「っ、い、れて……ください……俺の、ここに……ッ」
「さっすが、お前は出来のいい弟だな……ッ!!」
「っひ、ぃ゛……ッ!!」

 慣らさずにねじ込まれるペニスに一瞬全身が浮いた気がした。腫れ上がったナカは擦られるだけで酷く感じるほどだった。痛みよりもあまりにも強い刺激と圧迫感に頭が真っ白になる。

「倫冶、お前は昔から物覚えが早かったな……っ、なんでも吸収して、俺の言うこともちゃんと聞いて……っ」
「っ、ぁ、う゛ッ、ひ……ッ!」
「……っ、ああ、俺は嬉しいんだよ、またお前とこういうふうに仲良くなれるのが、なあ、倫冶……っ!」
「ッ、ぁ、にいちゃ、」

 目の前、覆い被さって犯してくる兄はそのまま俺の唇を塞ぐのだ。挿入される舌に必死に答える。殴られたくなかった。怒られたくなかった。兄は、俺が従順なときは優しかった。だから、媚を売る。兄の舌に絡め、その逞しい背中に腕を伸ばす。結合部、深々と突き刺さったペニスはびくんと跳ね上がるのが分かった。
 興奮するように舌を更に絡ませる。隙間ないほど唇を貪られ、体重を掛けるように腰を打ち付けられれば何も考えられなかった。腹の奥からせり上がる熱に飲まれ、激しいピストンに振り落とされないように兄の背に足を回した。

「っ、倫冶……お前は……ッ」
「っ、は、ぁ゛……ッ!、ぅ、……ッ!ひ、ぎ……ッ!!」

 兄の呼吸が浅くなる。痣ができそうなほど強い力で腰を捉えられ、更に乱暴に腰を打ち付けられれば声すら上げることができなかった。執拗に杭のようなペニスでナカを犯される。突き当りだと思っていたそこをどすどすと突き上げられ、堪らず兄の背に爪を立てた。悲鳴とともに唾液が垂れる。突破られる。死ぬ。喉からペニスが出てくるんじゃないか。その恐怖と快感に頭が麻痺し、気付けば水のような精液が勢いよく己の腹部に溢れていた。

「っ、倫冶、倫冶……ッ!!」
「に、いちゃ……ッ、む、ん、ッ、ふ、ぅ……ッ!」

 どちらともなくキスをする。その間も挿入は止まらない。兄の激しい挿入に堪えきれずに痙攣する下腹部、そして何度目かの絶頂を迎えたとき。腹の奥に熱が溢れた。
 そのまま体を強く抱き締められる。隙間からどろりと溢れる熱。兄は荒い呼吸を整えるよう、ただ俺を抱き締めていた。

 ◆ ◆ ◆

 兄に抱かれてからどれほど経つだろうか。

 兄のせいでなにもかもが変わった。弄られすぎた胸は絆創膏で隠さなければならないほど過敏になり、そして女の乳首のように腫れ上がる。
 自慰だってそうだ。アナルにものを挿入しなければまともに射精することもできない。それどころか、射精しても兄に犯されていたときのような刺激を覚えることもできなかった。物足りなさと虚しさだけが支配する。それなのに、アナルだけは兄を求めて疼いていた。
 兄は無事何事もなく高校を卒業し、志望していた都内の大学へ受かった。その機に上京し、一人暮らしをするという兄。
 ようやく俺はあの男から解放されるのだ。――そう思っていたのに。

「ほら、いいところだろ。こっちは俺の部屋でリビング、んで寝室。……あと、お前の部屋はここな」

 何故、こんなことになってるのだろうか。
 笑いながら新しく住む予定の部屋を案内する兄。既にいくつかの家具は入れ込まれたあとだった。
 俺の肩を抱いたまま、兄は鍵付きの俺の部屋の扉を開いて笑うのだ。
 兄は俺の溢れる涙を舐め取り、「そんなに嬉しいのか」と笑っていた。
 嬉しくない。こんなの。嬉しくないのに。寧ろさっさと解放してくれ。そう思うのに、俺の意思を無視してこの口は「うん」と答えるのだ。

 おしまい

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