短編


 ごめんね、兄さん

「兄さん、泣かないで。兄さんはダメな人なんかじゃないよ。兄さんは優しすぎるんだ。でもその優しさが重く感じる人がいて、ただ彼女がその一人だったってだけだよ。兄さんのせいじゃない、誰のせいでもないんだよ。だから、兄さんが気にする必要はないよ。でも、無理だよね。兄さんは優しいから考えて、悲しんで、背負い込んでしまう。だったら、僕の胸でいっぱい泣いて。女の子みたいな胸はないからちょっと硬いかもしれないけどね。……うん、よしよし。兄さんはよくやったよ。本当。兄さんに愛された彼女さんは幸福者だよ。羨ましいな。ふふ、兄さん子供みたい。可愛いね。あ、ごめんね兄さん。そういうつもりで言ったんじゃないんだよ。僕、嬉しいんだ。こうやって兄さんと一緒にお話できるのが。最近一緒にいる時間減っちゃったからさ、うん、ちょっとだけ寂しかった。実はね、ちょっとだけ安心してるんだ。兄さんと彼女が終わってしまって。こんなこと言ってごめんね兄さん、でもね、これから兄さんが女の子と遊びに行ったりしなくなると思ったら嬉しいんだ。兄さんが女の子と一緒にいると思ったら胸がぎゅーってなってね、なんだか辛くて、ふふ、こんなのおかしいよね。わかってるけど、うん、兄さんたちが別れたって聞いてこんなに安心してる。ごめんね、兄さん、嬉しいんだ。ごめんね、性格悪くてごめんね。兄さん。僕、こんなに嫌なやつになっちゃった。ごめんなさい。兄さん、兄さん。
彼女さんの言ってた新しい恋人って僕のことなんだ」

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