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048.22日目『人狼の勝利』
「…………っ、空太!」
「……っ」
「なんでっ、なんで信じてくれないんだよ!
あたしは……あたしはっ!
人狼なんかじゃない! ないのにっ!」
「っ……っ……!」
「…………果帆。
…………もう、やめて」
「空太……っ!!」
「…………っ、
…………ごめん、果帆。
やっぱり俺……俺……、白百合を信じるよ」
「……空太…………」
「……………………」
(…………俺は、果帆に投票した。
……これは…………賭けだ。
正直、俺はもう、どっちでも良かった。
生きたいとか、死にたいとか、もうそんな感情すらもあやふやだった。
でも…………ひとつだけ、確かなことがあった。
俺はやっぱり、果帆のことが、好きだ。
迷う時間はかかってしまったけど、やっぱり俺、果帆のことが好きなんだ。
でも…………もし、果帆が人狼だったら、なにもかも果帆ひとりに背負わせてしまうことになるんだ。
…………そんなことさせやしない。
…………不器用で、本当は誰よりも優しい君のことだから、そんな過酷な使命、背負わせはしない。
果帆…………君が村人なら、一緒に死のう。
もし君が人狼なら…………苦しみは、これで、終わりだよ)
「……………………。
………………………………。
…………っっ!!」
「っっ!!」
「白百合!!」
(果帆は白百合に掴みがかった。
その美しい頬を殴りつけると、白百合のカーテンのような艶やかな髪がさっと果帆に纏わりついた)
「…………果帆!!」
「っ! 美、海……っ!」
(白百合は果帆の首を締め付けた。
……白百合と果帆はほぼ体格差はないけど、すこしだけ、白百合の方が小柄だ。
果帆も、白百合の首に手を伸ばした。
俺は…………俺は…………)
「…………ぐ、ぐぁああああああああああああああああああ!」
「きゃああああああああああああああああああああああああ!」
(二人は同時に倒れ込み、気絶した。
…………俺はスタンバトンを片手に握り締めていた。
二人に電流を浴びせたんだ…………。)
「……………………」
(折り重なるように倒れている二人を引き離した。
…………そして、俺は、…………果帆に馬乗りになると、
その細い首を、締め付けた)
「くぁっ……っか……く、…………空、太……」
「ごめんね、果帆。…………ごめん」
「……かっ、……ぁ…………ぅ、っか……かはっ」
「果帆…………」
(果帆は涙を流していた。
そして、…………10分ほど、そうしていただろうか。
果帆は…………すでに事切れていた。
それでも俺は、彼女の首を絞め続けた。
果帆……果帆…………果帆…………。
…………ごめんね。…………君が好きだったよ。
やっぱり君のことが…………誰よりも)
「…………果帆」
(俺がそう呟いた瞬間だった。
ぶちっと、なにかが裂けるような音が身体に響いた。
…………首が、熱い。
あの……絆創膏を貼られた首が)
「っ――――――――!」
(視界が赤い。
…………俺は果帆の上に倒れ込んだ。
俺が最後に見たのは、白い天使のような眼差しで俺たちを見下ろす、白百合だった……)
………………。
……………………。
……………………。
おめでとうございます。
人狼の勝利です。
……………………。
そのまま、死体安置所までお進み下さい。
……………………。
「……………………」
(あたしは、本堂くんと果帆を見下ろした。
…………泡を吹いて死んでいる果帆。
…………鮮血を撒き散らして死んでいる本堂くん。
二人は目を開けたままだった。
…………あたしは、せめてもと、二人の目を閉じさせてあげた。)
「……………………」
(…………さあ。行こう。生きていこう。
そして…………みんなの仇を打つのよ)
「…………絶対に忘れないわ、みんなのこと。
みんなの死を、あたしは背負って生きていく」
(あたしは…………死体安置所へ続く扉を開けた)