031.17日目『朝の時間』


 ――――17日目

 ――――AM06:00、会議室

人狼は襲撃に成功しました。

昨晩の犠牲者は筒井惣子郎さんでした。







 ――――AM07:45、惣子郎の部屋
空太
「………………」
果帆
「……………………」
朔也
「……………………」
(俺は…………生き残ったのか)
空太
「……………………」
(…………筒井は、死んでいた。
 身体中に釘を撃ち込まれて、胸を刺されて、
 …………死んでいた)
和華
「筒井くんっ……、筒井くん……」
(乃木坂くんを狙うと思っていたのに…………卑怯だわ。
 わたしが…………わたしが…………あなたを死なせてしまったのね…………)

小桃
「和華……、しっかり」
美海
「和華ちゃん……、
 ………………………………」
(…………あたしに言葉をかける資格なんて、ないわ……)
圭吾
「……………………惣子郎」
朔也
「竜崎…………とにかく、
 筒井をしっかり、休ませてやろう…………な」
圭吾
「……………………」
空太
(…………竜崎は、親友を失って呆然としていた)
直斗
「……………………」
冬司
「……………………」
勝平
「……………………」
空太
「……………………」
(男連中は、床に倒れていた筒井をベッドに横たえた。
 そして…………開きっぱなしになっていた目をそっと閉じてやり…………、
 筒井の部屋は、開かずの間となった)
空太
「……………………」
(筒井…………生徒会長…………。
 温厚で、心配性で、クソ真面目で、…………優しいやつだった。
 そんな筒井も…………死んでしまったんだ)
和華
「筒井くんっ…………筒井くんん…………っ」
空太
「……………………」
(…………誰も、なにも喋らない。
 ……ただ、恋人を失った七瀬の、すすり泣く声だけが響いていた)





 ――――AM08:30、ダイニングルーム
果帆
「花菜…………」
花菜
「果帆…………みんな…………」
果帆
「…………サキは?」
花菜
「うん……、また、胃に来たみたいで。
 部屋で休んでるよ」
果帆
「…………そうか」
美海
「…………おかゆくらいなら食べれそうかな?
 一昨日、顔だしてくれたから……、
 そのお礼がしたいわ」
花菜
「あ、うん。……美海なら大丈夫だと思う。
 あとで一緒に行こう」
美海
「…………ありがとう」
空太
(…………こんな状況でも、腹が減ると思ってた。
 けど……果帆と白百合と佐倉がチャーハンを作ってくれたけど…………食べれそうになかった)
朔也
「空太…………無理してでも食べた方がいい」
空太
「え…………?」
朔也
「……体力は温存しないと…………な?」
空太
「…………うん」


 …………。

 ……………………。


空太
(暫く、沈黙が続いた。
 黙々とチャーハンを、作業のように口に運ぶ。
 …………味なんて、わからなかった)
直斗
「…………あのさ、ちょっといいか?」
果帆
「…………ああ」


全員
「……………………」


直斗
「あ、あのさ!
 俺、…………霊媒師なんだ」
美海
「……………………!」
(…………直斗くんが……?)
冬司
「……………………!」
(驚いたふりをしてみたはいいけど…………。
 正直、バカなんじゃないの?
 なんでこのタイミングで…………)

空太
「……………………直斗が」
冬司
「…………なんでこのタイミングなの?
 …………目黒くん、人狼だった?」
直斗
「いや、…………村人だった」
冬司
「だったら、なんでこのタイミングで言うの?
 大人しく潜伏しててよ。意味がない」
直斗
「…………意味がないってなんだよ?」
冬司
「…………普通、霊媒師ってのは、
 人狼が特定できたときに名乗り出るものなんだよ。
 …………危険に身を晒すだけだよ、無駄な行為だ」
直斗
「無駄ってなんだよ?
 目黒は…………村人だったのに、
 俺たちが殺したんだぞ……ちくしょう……」
冬司
「…………それこそ目黒くんの死が犬死になる」
直斗
「で、でも…………っ」
圭吾
「……………………」
直斗
「とにかく…………あいつ、村人だったから。
 …………それはみんなにわかっててほしくて」
朔也
「…………そうだったのか」
直斗
「……………………」
空太
「……………………」
(目黒は村人だった…………。
 誰も、直斗が本物かどうかなんて問わなかった。
 …………人狼は、まだ、3人残っているんだ……)





 ――――PM14:15、空太の部屋
空太
「…………果帆」
果帆
「うん…………?」
空太
「…………なんかさ」
果帆
「…………うん」
空太
「なんかさ…………俺、今日、
 人狼にやられる気がするんだ」
果帆
「…………なんで」
空太
「いや、勘だけどさ。
 ……白百合も、勝平も、七瀬もさ、恋人が人狼にやられてさ。
 …………三日連続でカップルの片割れじゃん。
 …………ってことさ……、残るカップルって、俺らだけじゃない?」
果帆
「…………バカか、お前は。
 お前かあたし、殺すメリットが人狼にあると思う?
 …………あのな、人狼は、
 村人と確定してる朔也か、直斗か、竜崎を狙いたいはずなんだ。
 この三人は票が集まらないからな。
 だから、カップルばかりってのはたまたまで…………。
 てゆーか、うん、大丈夫だよ。襲撃は、とりあえず」
空太
「…………そうなのかなあ」
果帆
「そうだよ。…………それより、問題は投票だ。
 今のところ、美海とサキが占い師を名乗り出てて……、それに、直斗が霊媒師だって暴露した。
 …………直斗が村人と確定してるのは確実だから、たぶん、本当に霊媒師なんだと思う。
 あと、空太と勝平も、一応村人として美海とサキに宣言されてるから…………投票はされないと思う。
 と…………なると。
 今日の投票では、佐倉か、七瀬か、花菜か、小田切か、…………あたしだ」
空太
「そんな…………果帆…………」
果帆
「言っとくけどあたしは村人だぞ。
 …………大丈夫。空太が心配することなんかない、なにも」
空太
「…………俺は絶対に、果帆に投票なんてしないからっ」
果帆
「…………あんたさ、昨日、誰にも入れなかったろ。
 …………そーゆーの、…………ずるって言うんだよ。
 もうみんな覚悟を決めたんだ。
 空太も…………覚悟してくれ、頼むから」
空太
「…………ごめんね。
 確かに…………ずるかったよな。
 汚いところみんなに押し付けて、俺だけは綺麗なままでいたいなんて……」
果帆
「…………ああ」
空太
「…………でも、捨てきれないんだよ。
 誰も殺したくないって気持ち……。
 それって…………そんな、責められることかな?」
果帆
「…………責められることじゃない。
 …………でも、実際あたしらはもう、…………目黒に手をかけてるんだよ」
空太
「…………っ、うぅ」
(…………急に、涙が出てきた。
 果帆は驚いた顔で、俺を見詰めた)
果帆
「…………空太………………。
 ………………っっ、くっ」
空太
(釣られて…………果帆も泣き始めた。
 果帆の涙を見るは、二度目だった。
 俺は果帆を引き寄せた。
 …………今の俺たちには、傷を舐め合うことしかできなかったんだ……)






 ――――PM15:00、美海の部屋
美海
「…………ねえ、朔也。
 …………ひとつ、聞いてもいい?」
朔也
「ん…………どうした?」
美海
「……どうしてあたしのそばにいてくれるの」
朔也
「…………言わないと、わからないか?」
美海
「……………………」
朔也
「美海…………俺が守るよ。必ず」
美海
(……あたしはゆっくり首を振るった)
「……あたし、頼りないかもしれないけど、
 こう見えても、辛抱強いのよ?
 だから…………平気」
朔也
「また強がり?
 …………強がっちゃうのは、いかにも美海らしいけど、な」
美海
「……………………」
朔也
「……………………」
美海
「……世の中に、必ずとか、絶対なんてない。
 だからね、朔也。
 …………あたしを信頼しすぎちゃダメ。
 …………あなたはもっと、自由になるべきよ」
朔也
「…………それは俺が決めることだよ、美海。
 …………美海にとっては、迷惑なのかもしれないけどな」
美海
「…………迷惑だなんて、そんな……」
朔也
「なら、…………俺の好きにする」
美海
「…………朔也」
朔也
「美海…………好きだよ、昔からずっと、ずっと。
 俺じゃアキラの代わりはできないけど、それでも、そばにいるよ」
美海
「…………ダメ。あたしに囚われないで」
朔也
「…………なにをそんなに拒むんだ?」
美海
「朔也には…………あたし、幸せになってほしい」
朔也
「…………君を少しでも癒せたら、それが一番の幸せだ」
美海
「…………キザなこと言うのね。
 …………アキラみたい」
朔也
「…………親友だからな」
美海
「…………あたしね。
 朔也に…………みんなには言えないこと、たくさん抱えてるよ?
 あなたが思ってるような、あたしじゃない。
 それは、あたしが一番よくわかってるの」
朔也
「…………どんなことがあろうとも、美海は美海だろ?
 それ以上でも、それ以下でもない。
 …………抱えてるものも含めて、……美海だろ?
 いいんだ。俺が好きなだけだから」
美海
「朔也…………でもあたし、あなたに答えられないよ」
朔也
「…………それでも、いいんだ」
美海
「……………………盲目ね」
朔也
「いいだろ、盲目だろうと、なんだろうと。
 …………自分に素直に生きたいんだ」
美海
「…………アキラと同じこと言うのね」
朔也
「…………だから、親友だから」
美海
「……………………」
朔也
「……………………」
美海
「……………………」
(…………朔也はあたしを抱き締めた。
 血の臭いが染み付いた、あたしの体を……)




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