016.4日目『たこ焼』


空太
(この日、朔也が村人であることが証明された)





 ――――PM11:20、ダイニングルーム
美海
「いえーい、たこ焼き器見付けたー!」
和華
「今日はみんなでたこ焼きパーティーしましょう」
空太
「なにそれ楽しそう」
小桃
「そうだね(にっこり)」
空太
(おぉ…………佐倉の笑顔が眩しい)
勝平
「それは男の仕事だな」
惣子郎
「そうだな。
 今までのねぎらいも兼ねて、今日は俺たちがやろう」
圭吾
「いえーいぱーりなーぃと!」
結翔
「ぱーりーぴーぽーーー!!」
空太
(やっぱこいつらバカだわ)





 ――――PM14:00、朔也の部屋

「…………それで?」
朔也
「…………」

「お前はなにを見た。なにを知った」
朔也
「…………これだ」

「新聞と…………この写真は……」
朔也
「初日、金庫に入ってた。
 それで、裏面に」

「…………『閖白えりか』か。
 それでお前は調べたわけだな」
朔也
「ああ。
 …………書斎を調べた。古い新聞が山のようにあった。
 そのほとんどが…………10年前のとある事件のことだった」

「……繭見沢一家惨殺事件だな」
朔也
「…………ああ。
 それで、調べている内に、この新聞に顔写真が載ってた。これは……」

「そうだ。…………美海と、菫谷だ」
朔也
「…………お前は知ってたのか?」

「…………知ってた。一年ほど前だ。
 ネットサーフィンをしていて、偶然だった。

 俺はな、すぐに美海を問い詰めたぜ。
 美海は、泣いてた。そして全てを語った。
 そして俺は、永遠に美海を守ると誓った」
朔也
「…………なぜ俺に言わなかったのか……は、野暮な質問だよな」

「…………」
朔也
「なぜ『白百合美海』として生きている?
 この辺りの事情は…………」

「全部、話す」
朔也
(そうして、アキラは全てを語った。

 美海……えりかの兄が、恋人の家族を昂太以外皆殺しにしたこと。そして、実の両親にも手をかけたこと。
 経路はわからないが、事件の前にえりかを知り合いの暴力団に預けたこと。事件後、昂太も同じところに引き取られたこと。
 閖白えりかは十字架を背負う意味も込めて『白百合美海』の名を与えられ、墨谷昂太は名前をすこしもじって『菫谷昴』の名を与えられたこと。
 二人とも、戸籍がないこと…………。

 被害者遺族である菫谷と、加害者家族である美海が一緒に生活していたこと。
 美海が現在独り暮しをしていること。
 菫谷が…………異常なまでに美海に執着していること。
 ……美海は組織での立場が弱く、所謂、…………裏ビデオへの出演等で体を売られていたこと。全部、全部だ)

朔也
「美海は、…………そんなものを抱えていたのか」

「そうさ。
 ……で、お前は、それでも美海のことが好きだと言えるか?
 それとも…………軽蔑するか?」
朔也
「…………初めは戸惑ったさ。
 けど、…………美海は、美海だって言う結論に至った。
 軽蔑なんかしない。…………できない」

「そうか……」
朔也
(…………半年前の、この言葉を思い出した)


 俺、美海と付き合うことになったんだ――



(アキラは知らないだろう。一瞬、殺したいほどお前を恨んだことを。
 けど……親友が彼女と付き合うことを決めた理由は。…………彼女が俺ではなく、アキラを選んだ理由は、こんなところにあったんだ。
 …………だから)
朔也
「…………お前も、同じ結論に至ったんじゃないのか」

「そうだ。兄貴が人殺しだろうとなんだろうと、
 …………不特定多数の男に体を売られていようと、
 …………それでも、美海は、美海だ。俺がずっと好きだった美海なんだ。
 美海は、俺が守る。…………お前には悪いけどな」
朔也
「…………お前は本当にそれで良かったのか?」

「ああ。
 …………美海の事情を知った俺は、なんとか組織の長に話をつけようとあの手この手で奔放したよ。
 けど、会ってみたら意外に人情深い人でな。
 美海には、苦しい思いをさせて悪かったと言っていたよ。
 ……あと、十分稼がせてもらったとも」
朔也
「…………結局はそれか」

「まあ、元々高校を卒業したら自由にさせてやるつもりだったらしい。
 戸籍も、『白百合美海』として登録できるよう、なんとか裏から手を回しているそうだ。
 ……今は体を売る仕事はしていない。美海は、解放されたんだ。

 …………いいか。朔也。
 『閖白えりか』はとっくに死んだんだ。あの日、兄が事件を犯したあの日に、とっくの昔に。
 …………美海とはもう、関係はない」
朔也
「…………ああ」

「…………これからも、普通に接してくれるか?
 …………なにも、なかったかのように」
朔也
「…………もう少し時間はかかるかも知れない。
 けど、約束する。お前も美海も、俺にとっては大切な存在だ。
 今までとなにも変わらない。
 …………そして、この話は誰にもしない」

「…………サンキューな」
朔也
「ああ」

「…………はあ、正直、安心したよ。
 お前とはとことん気が合うな」
朔也
「……そうだな」
(俺も…………全て打ち明けてくれて、逆に気持ちが楽になった)

「ほっとしたら腹が減ったな。
 …………今は何時だ?」
朔也
「……まだ、3時前だな」

「……飯はまだか」
朔也
「そうだな」

「…………」
朔也
「…………」

「…………くく」
朔也
「くふふふ」

「くははははは」
朔也
「はははははは」






空太
(今日はアキラが襲撃される役を買って出た。
 明日も、何事もないだろう)





――――4日目、終了



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