「海馬くんはどんな花が好きだと思う?」 自分の分だけ書き終えた日誌を横に差し出しながら私は白く美しいドラゴンを思い浮かべた。 「私はね、海馬くんは百合の花とか好きだと思うな。白くて華やかで、いい匂いがする大輪のお花」 枯れるのが早いのだけちょっと難点なんだけど。遊戯はガーベラとか好きそうかな。でもきっと、道端に咲いてるかわいい花とかも好きだと思う。まあ遊戯の場合は誰かに踏まれて潰れたお花でも嫌いにはならないと思うので何が好きとか考えても意味はなさそうだけど。 そこまで言ってやたらとおしゃべりになっていることに気がついて一度呼吸する。私が黙ると隣の机で日誌の上を走るペンの音だけが響く。 「カードは花でさ、デッキは花束に似てると思うの。組み合わせは数で表現できないくらいたくさんあってさあ、人が自分の思う美しさで作るんだよね。何もしなくてもそのままでも綺麗なんだけど、やっぱり大舞台でパッとみんなに見られて咲く姿が一番美しく見えるんだよ」 手で花びらを表現して見るけれど、見ているのか見ていないのか同意は全然帰ってこない。仕方がないので返答が返ってくるように疑問形を投げかける。 「ねえ海馬くん、どう思う?どんな花が好き?」 「ペラペラとよく喋る」 「私のことじゃなくてさぁ」 もっと教えてよ海馬くんのこと。学校で見かけることがウルトラレアな同級生を机に突っ伏して見上げると海馬くんは横目で私を睨んで日誌を私の頭の上に置いて立ち上がる。あーあ。
2024/02/06 19:52 (YGO)
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