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したっぱの男は、その視線を隣に座る後輩の腰に落としていた。別に、彼女に欲情しての視線ではない。ある1つの疑問からだった。

――確か、リゼのポケモンはサンダースだけだったはず。

したっぱに支給されるズバットや、女のしたっぱに人気のアーボにさえ目もくれずに、ただ、ただサンダース1匹を鍛え上げているのは、先輩であるしたっぱの男は勿論の事、他の団員の中でも有名な話だった。
しかし、今現在、彼女の腰にはモンスターボールが5つ。

「どうされましたか、先輩……あ、私のきつねうどん食べたいとか」
「違ーよ」
「仕方ないですね、口をあけてください。サービスに一本だけ差し上げます」
「だから要らねーよって言ってんだろチビ助。」

頭の上に掌を乗せ、グイグイと下向きに力を入れる。「ぐぎぎ」と妙な声が聞こえてきたかと思えば、「身長が更に縮む!」と心底嫌そうな顔をするリゼの顔があった。このまま続けてやっても良かったのだが、じたばたと暴れられると鬱陶しいので仕方なく腕を上げてやる。俺様って優しい。

「うどんじゃなかったら、何なんですか」
「いや、お前いつの間にそんなにポケモンゲットしたのかなーって思ってよ」

ホラ、それそれ。とリゼのダボダボした団服の、丁度腰あたりを指で指す。俺の指をたどったリゼは、ああと短く声を漏らした。

「先輩今まで気付いてなかったんですか? これ、貰ったんですよ。」
「は、貰った?」
「はい」

「誰に?」と聞く前に、彼女は一つ一つをそっと食堂のテーブルに置いた。上から照らす照明の光が、傷一つ無い艶やかなモンスターボールに綺麗に反射する。きっと、大切に扱っているのだろうと男は自分のモンスターボールを見た。イロイロな所にぶつけて来たせいか、傷やヘコミが目立つ。
突然、リゼが一つのボールを持ってボタンをカチリと押したので、男はギョッとした。
そこの張り紙にも『ポケモンは ボールの中へ!』ってデカデカと書いてあるというのに。

「馬鹿お前絶対に出すなよ!? 俺まで連帯責任で被害被るじゃねーか!」
「いやいや、先輩も見てください。このズバットとか凄いんです」

聞いちゃいねえ!と苛々するしたっぱの男は、大きくなったボールを眺めてうっとりするリゼを放って食堂を後にしようとした。…のだが、既に彼女の左手が自分の右腕をガッチリと掴んで離さないので、色々と諦めて話半分に彼女の話に耳を傾けることにする。

「このズバットはですねー、アポロ様から貰ったんです」
「は、え……アポロ様から!?」

古株とは言え、したっぱのしたっぱとも言えようリゼが、今やロケット団を引っ張る存在のアポロ様に貰い物をしたとは酷く驚いた。俺の反応に満足したらしいリゼは、ボールを宙にふわりと浮かせるのだった。禁止されているのにも拘らず。



Four episodes



10/08/18
15/03/18 修正

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