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R団したっぱカップル
最近、独り身の団員からの視線が冷たくて痛いのは、クリスマスの夜が刻一刻と近づいてきているからだろうか。夜な夜などこかの部屋からすすり泣く声が聞こえる、だなんて噂が流れるのは毎年の事。逆に相手がいる団員たちは、お互いのデートプランを探り合っている(特に女団員)。あそこのカップルはこうだったのに!なんてクリスマス後に破局するカップルも、毎年恒例である。
冬のボーナスを資金源に、コガネデパートで手袋とマフラーを一つずつ購入する。外に出ると冷たく刺さる空気に、思わず体を縮まらせる。その隙に私を追い越した女の子の紙袋の中には、紺色の毛糸玉が詰まっていた。
手編みの……なんて子供らしいことはもう出来ないなあ、とため息をつけば、白い吹き出しが飛び出した。
ラジオ塔に負けじと自己主張をするクリスマスツリー、今年は青をメインに装飾を施しているらしい。横目でツリーを見ながらアジトの方へと戻る最中、骨付き鳥とケーキの予約を忘れていたことに気付いて、来た道を引き返す。
「あ」
「……えっ、あ、ああ」
正面にアイツの姿を確認すると、向こうもすぐにこちらに気付いた。そういえば今日お互いに休みだったっけ。思わず手にした紙袋を体の後ろに回す。なんてタイミングの悪い。
とは言え、偶然にも会えて嬉しくないわけではない。むしろ、嬉しい。久しぶりに見た冬の私服姿に目を奪われる。そういえばこの人出不精だし。冬は特に。とってもレアじゃんか。
「買い物か?」
「う、うん」
「今から戻るのか? なら俺も」
「あー……え、っと」
左に目をそらすと、クリスマスツリーが目に入ってくる。今日を除けば次の休みは、さんざん上司に嫌味を言われながらとったクリスマスのみ。ポケギアを使った予約は団のルールで禁止されているし、今日を逃したらケーキなしのクリスマスになってしまうかもしれない。
そんなことで気を悪くするような人ではないと思うけれど……本音は私がケーキを食べたいだけだ。だからといって一緒にアジトまで並んで帰るのも捨てがたい。
よし、一緒に帰って、そこからまたこっそり出かけて予約をしに行こう。そう結論がついたところで、私は口を開いた。
「ん、いいよ」
「……あれ、そういえばお前アジトと逆方向に歩いてたな。まだなんか用事?」
「えっ?」
「ああ、なら仕方ないな。わりー」
「え、ちょっ」
私が静止するのを遮るように、頭に手をやりぐしゃぐしゃと撫でられた後、アイツはアジトの方へと戻って行こうとした。無意識に振り返って伸ばした左手は、むなしく空を切った。行き場を無くした手を、頭に持ってくれば、せっかくセットした髪型が台無しにされていた。ふざけんな。
「……」
置いて行かれた苛立ちが、嫌でも顔に出てしまう。店のウィンドウに映る自分は、何とも言えない酷い顔をしていた。
本当にタイミングが悪かったんだ、最近向こうも出張続きでなかなか会えなかったのに。
(でもかっこよかっ……あー、バカバカ)
惚れた弱みだよね、と気を取り直してまずはケーキ屋へと向かう。まあ、どうせクリスマスは会えるんだし、わがままは言うまい。楽しみが増したと考えよう。プラス思考、プラス思考。
プレゼント、喜んでくれるだろうか。ニヤっと笑ってつけて見せるアイツを想像すれば、頬が緩む気がした。
期待の膨らむ12月
偶然会った理由を知るのはそう遠くない
15/12/xx
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