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「へえ、やれば出来るじゃないですか。」

そう言って、ランス様はフンと鼻を鳴らした。最初っからこれくらいの出来だったら尚良かったんですけどねぇ。と、嫌味を加えるのを忘れない辺り、私も中々嫌われているなぁと感じる。

「・・・で。」

手に持っていた報告書をデスクにぱさりと置いたランス様が、目線を私に向けた。鋭い二つの目の奥に、小さく私が映っているのを見て、不思議な気分になる。

「何でしょうか」
「誤魔化さなくて良いです。誰かに手伝ってもらったのでしょう?」
「・・・・・・。」

お前が一人でここまでのレベルの報告書を作ったというのなら、私は逆立ちでアジト一周したって構いませんだなんて言いながら、ランス様は私を見下すように笑った。
彼の中で私は何処までも仕事が出来ない人間らしい。まあ、否定は出来ないのだけれど。

「ラムダ様に・・・手伝って頂きました。」
「ラムダに?」

私が口を開いて本当のことを告白すると、大方したっぱの同僚にでも頼んだのだと思っていたのか、ランス様はぽかんとした顔をした。



あの後、ランス様との話が終わったラムダ様は、本当に私を手伝ってくれた。誤字脱字の指摘。文の組み立てや報告書を書く上でのコツのようなモノを、1から根気強く教えてくれたのだ。・・・と、言っても。ほとんど、90%以上彼の力で出来の報告書になってしまったけれど。
そして、報告書が出来上がったときに、私に向けたラムダ様の優しい笑顔と優しい言葉に、私は彼への感情をようやく知った。こんなに優しくして下さっているラムダ様が、好きになっているのだと。



話を元に戻すと、相変わらずランス様は呆けた顔をしていた。(何というか、・・・間抜け?)
いつものランス様らしからぬ表情に、逆にこちらが呆気に取られていると、彼はすぐに意識を取り戻したらしく、わざとらしくゴホンと咳払いをした。

「・・・・・・・・・ああ、そういう事ですか。分かりました。」
「?」

何やら勝手に独り合点して、自分の中で何かの結論をつけたらしいランス様は、私を一目して小さくため息をついた。どうしたというのだろう。私は相変わらず、ランス様の考えてらっしゃることが理解できずに小首を傾げていたのだが、

「ああ、もう良いです。」

と、私に部屋から出て行くように、わざわざ手でチョイチョイとドアの方へ手の平を振るランス様。それに逆らうこともせず、私はドアの方へと歩き出した。・・・やっと、この詰めた空気から開放される。最後までそれを悟られないようにして、ドアノブに手を触れた瞬間に。上司の「あ、そうだ」という言葉に、私は停止を余儀なくさせられた。

「あなたは私の部下ですから一応忠告しておきます。・・・あの男に惚れるのはやめたほうが良いですよ」

背中に投げかけられた言葉に、私の胸がドキリと跳ねる。
(ランス様は、私の気持ちに気づいている。)
それと同時に、不快感も生まれた。
(ラムダ様を、悪く言うなんて。)

リゼがくるり、後ろを向いてランスと目を合わせること2秒。彼女がロケット団に入団してから初めて見せた、反抗交じりの笑顔と一緒に、挑戦的な言葉がランスの部屋に響いた。

「私が、ラムダ様の事を好いている事は認めますけど・・・それをランス様に兎や角言われる筋合いはありません」
「!」
「・・・し、失礼します!」

脱兎の勢いでランス部屋を飛び出して走り出したリゼ。上司に向かってあんな態度を取ってしまった後悔で一杯一杯だったが、それでもどこかに、言い返せて良かったと、好いた相手への気持ちを確かめる自分も居た。



二杯は酒酒を飲む
(だって、もうどうしようも無いくらいに好きなんです)



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10/11/20


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