浅い息を吐き、絶頂の震えが治まらないさくらの躰をかき抱いた蒼空は囁いた。 「今のは翔流の分…」 「翔流の…?」 「そう。お前を愛し抜いてせつないお預けを食らいながら、おとなしく千年待った翔流の想いが実を結んだ、千年越しの契…」 軽い口調とは裏腹に、蒼空は優しく、せつなく、愛しさに溢れた眼差しでさくらを見つめくちづけた。 「不思議な感じだけどな…。自分の中に千年前の翔流と物心ついてからの蒼空の記憶があるのはさ…」 だけど――、と蒼空はさくらに額をこつんと合わせる。 「さくらの松葉杖を作ったことも、市に一緒に行ったことも、雷の夜に抱きしめて眠ったことも、眠れなかったことも全部覚えている…」 「ああ…、翔流…!」 さくらは顔を上に向けて自分から蒼空にくちづけた。そのタイミングを外さずに、蒼空の手がさくらの後頭部に回り繋がりを深くする。 「ん…」 「ン…ッ」 唇を覆い合うように何度も角度を変えながら吐息と舌を絡ませて。息苦しくなって喘いでまたくちづけて。 「さくら、さくら…」 「そら…」 世界で一番愛しい名を呼び合うと、ほんの少しの隙間に繋がって見える銀糸。途切れる前に唇はまた重なり合ってきりがないほど触れ合い繋がる。 キスは一番神聖なもの。 本気で愛した相手にしかできないもの。 キスの意味を一番最初に教えてくれたのは蒼空だった。あの時に蒼空は愛の一歩を教えてくれていた。 本気で好きだからこんなにもキスしたい。どれだけキスしても足りなくて、それがとてもせつなくて、さくらは心の中で、蒼空の名前を何度も呼んでいる。 「……蒼空と翔流が好きすぎてつらい。どうしたらいいか……って、さっきさくらは訊いたな」 答え――と囁いて、蒼空はさくらの乳房を手のひらで包み桜色の頂を口の中に含んだ。 「あん…っ」 甘い電流が敏感を保ったままでいるさくらに走り熱い吐息が漏れた。 「翔流と蒼空、ふたり分のセックスをする。それでもまだつらかったらもっとする」 蒼空は舌を使い、桜色に色づき勃ちあがった果実の愛撫を始めた。 「なにそれ、二人分のキス……――て言って欲しかった…ッ」 こねるように揉んで、舌で舐めまわし、ときどき甘く噛んで。 胸に施される愛撫に感じ、さくらは甘い声をあげながら蒼空に抗議をするが、 「けど…、さくらの感じる顔が可愛いから……」 二人分のキスをしたくなる――と、蒼空は唇を貪るのだ。 「んん…っ」 「だって…、それしか答えは見つからない…。好きすぎてつらいってさ…」 すごい殺し文句だ――とさくらの耳元で囁いて、蒼空は今度は少し乱暴に柔肌をまさぐりはじめた。 「あぁ…、蒼空…ぁ」 「それに、俺に感じるさくらの顔…もっと見たいんだ」 秘唇の中に蒼空の指がするりと滑り込む。 「んあぁぁ…、蒼空ぁ…――」 「さくらをもっと感じさせたい…。俺だけに見せてくれるさくらの顔を見つけたい」 蒼空の指は秘唇の中を、さくらが感じて表情を艶に変えるその場所を探して流離う。 「んんあぁぁ……、やぁ…、そら…」 「好きすぎてつらいなら悦ばせてやる…。今度は蒼空の分だ…」 「いやぁ…、蒼空ぁ…、そらぁぁ……!」 付け根まで挿し込まれた中指が敏感になって震えているその中をかき回す。さくらが躰が弓のようにしなった。 「ガキの頃からお前が好きで…、キスしたいとか、抱きたい…とか、そんな妄想ばかりしてた俺の分のセックス…」 「や…だ、蒼空のえっち…。そんなこと考えて…たの?」 蒼空はさくらの中を弄りながら、天に引かれるように勃ちあがる胸の頂をちろりと舐めて、すぐ傍の柔らかい乳房をきゅうっと吸い上げた。 「あ…、あぁぁ…」 細い首筋に、震える喉元に、蒼空は所有印の朱い花を咲かせていく。 「健康な男子は…、そーゆーことばっかり考えてるの…っ」 ひとつふたつと花が増え、さくらの白い肌が蒼空の花で埋まっていった。その間にも絶え間ない指の愛撫でさくらの中は熱く溶けてしまっている。 「―――あぁぁ…、蒼空ぁ――」 仰け反り眉根を寄せて甘く名を呼ぶさくらの顔は妖しく艶めかしく、 「――さくら…!」 蒼空はさくらの細い腰を引き寄せて猛りを一気に挿し入れた。 「ひゃぁ…ん、あぁぁ……ッ、蒼空…っ!」 「もっと…、もっと聴かせてその声…。俺に、感じて…!」 さくらの膝の裏に腕を入れ、脚を大きく開かせた真ん中を蒼空が激しく突く。 「あぁぁ、あぁぁん…っ、蒼空…、はげしい…ッあ…、あぁぁ…!」 さっきとはまるで違う激しい攻め。さくらは蒼空の両肩に両手を乗せて、嵐のように激しく繰り返される抽送を受け入れて揺れる。 「ああっ、あんっ、やぁ…!」 「さくら…!さくら…!」 蒼空。 蒼空。 蒼空――。 激しく揺れながらさくらは心で何度も呼ぶ。 あの時、蒼空が女の人と一緒にいるところを見て胸が苦しかったの。 キスしていると思って悲しかったの。 どんな時も傍にいてくれると思っていた蒼空を遠く感じたことが寂しかったの。 それを恋や愛だなんて思っていなかったけれど、翔流に出逢うまで愛がどういうものか分からなかっただけ。 きっと、ずっと一番大好きだった。 水風船を釣ってもらった子どもの頃から、誰よりも蒼空が好きだった。 でも、それは当たり前のこと――。 さくらは桜の転身。 千年の昔に翔流を愛し、人となって翔流に出逢える時を幾星霜も待っていたのだから。 「蒼空…、蒼空ぁぁっ」 「もっと呼んで、俺の名前…。呼んで求めて……」 蒼空はさくらの奥を激しく突いて際まで引き抜いてまた挿れて突きあげる。 「蒼空…、蒼空ぁ……っ」 「さくら…、俺の…さくら…っ」 「あ……っ、はあっ、ああ……ああっ、あぁん、ああ……」 余裕なく弄られる乳房、口と舌で弄ばれる頂、快楽の拷問のような愛撫と激しい抽送。蒼空の分は荒々しくさくらを乱す。 だが、蒼空が口にすることはさくらへの愛ばかり。気が狂いそうなほどの快楽の荒波に投げ出されているのに、さくらが溺れているのは愛。蒼空の、激しい愛。 「うぅ、ん……はあ……っ、ああぁ……っ!あっ、……ん、あぁんっ……!」 惜しむことなく甘声をあげ、濡れて啼くさくらを蒼空は壊れるほど激しく突き上げた。 「あぁぁん…、ふぁぁうぅぁ…、あぁん…、あぁ…っ」 「さくらが可愛すぎて愛しすぎて…、おかしくなりそうな俺は、どうしたらいい…っ?」 「…抱きしめて…!」 「りょうかい…っ」 蒼空はさくらの上体を抱き上げて向かい合い、力いっぱい抱きしめた。 「んぁぁぁ…――っ」 さくらは両脚を宙にまっすぐ投げ出し、絶対に離れたくないと言わんばかりに蒼空の首にぎゅっとしがみつく。 「こ…、答え――いっぱい抱きしめて…。キスして…!ずっと捕まえていて!!」 「あたりまえだ。もう二度と放すもんか……!」 千年前の記憶がなくても、ふたりが出逢い愛し合うのは定められていたのだから。 そして、そう定めたのは深い愛。互いをなによりも愛しいと想う心。 「放さない…。絶対に…!」 「蒼空…!」 向かい合った体勢のままふたりで揺れて。 熱く激しく揺れて揺らして。 「もっと…、ん…、もっと…、来て――!私に…来て……!」 「―――くっ…!さく……らっ」 蒼空を感じる。 さくらを感じる。 抱き合って愛しい存在を伝え合い、揺れて揺れて揺らして揺らして。押し寄せる悦楽がさくらを高い場所へと押し上げようとしている。 震え熱るさくらの肌は蒼空が咲かせた花が咲き乱れる桜の色。上体を仰け反らせ宙で脚を引き攣らせるさくらは開いた花。 ――さくら、さくら。 誰かが呼んでいる…? 「さくら、さくら…!」 「あぁぁ、あぁぁ…、ふあぁぁん…、う…、ああぁっ、蒼空ぁぁ――っ」 愛してる――と叫ぶと同時に蒼空は花の中に勢いよく精を放ち、さくらは蒼空の想いをその身の中に深く深く呑みこんだ。熱い精が躰の中を勢いよく奔っていく。 ――あぁ…、頑張ってたどり着いて…。 ふいにそう願ってしまったことが、後になってものすごく不思議だった。 |