さくら、さくら | ナノ





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第三部 11 千年越しの契

 蒼空はさくらの目を見つめながらゆっくりと躰を床へ押し倒した。
「いいか――?」
「……もう、押し倒しているくせに…」
 蒼空はさくらの上に半身を重ね、重なっていない方の乳房に衣の上から手を添えている。
「千年、待った…」
「………うん」
 翔流の空気を纏う蒼空の手が襟の隙間から素肌の中へ滑り込んでいくが、さくらはどこかせつなそうに蒼空を見つめた。
「どうした…?」
 心配気に覗き込む蒼空の優しい眼差しを受け、さくらの瞳はみるみるうちに曇り、涙がはらはらと零れる。
「さくら…?」
 翔流に触れて欲しい。翔流とひとつになりたい。心からそう願っていたのはさくらだって同じだ。
 なのに。
「私は…、」
 翔流が待ってくれた夜のままのさくらではない。
 千年前からずっと心の中で叫んでいた。変わってしまった自分を翔流が知ったらもう、触れてくれないだろうと恐れていた。涙はとめどなく溢れ、さくらは翔流の、蒼空の顔を見ることができない。
「さくら……」
「私…、私…」
「……なにも言うな」
 蒼空はくちづけでさくらの唇を塞ぎ、手が襟を開いたさくらの衣を肩から下へずらしていく。腰ひもを解き、袴を取り去り、少しずつさくらの素肌を晒していきながら蒼空は言った。
「……千年も前のことだろ…?」
「蒼空…?」
「そんな大昔のことを気にするほど、俺の器は小さくない」
「でも……!」
 白く華奢な肢体に形の良いふたつの乳房、くびれた腰、そして二本の美しくしなやかな脚が蒼空の眼前に現れる。
「今、俺が見ているさくらはこんなに綺麗だ…」
 白い乳房を蒼空はゆっくりと揉みしだき果実のような頂を口に含んだ。
「ん…っ」
「それに、あまい…」
「蒼空…」
「さくらの全部に触れたら、きっともっと甘くなる…」
 蒼空の手は胸から首筋、そしてまた胸へと撫でまわり、わき腹から大腿、内股へと優しい手つきで移動していく。
「俺はさくらに逢うためだけの種になった。そして、さくらにたどり着くまで千年、旅をしてきた…」
 指が秘唇に触れて。
「あ…っ」
「千年といったら百年の十倍。百年だって十年の十倍。それぐらい長い時間、さくらに逢うためだけに旅してきた俺にとって…」
 さくらの中に侵入させた指をそろりそろりと蠢かせ。
「あぁ………っ」
「さくらさえいれば、それでいい…」
 とろとろと溢れる蜜を指に絡めるように愛撫して。
「んん……、ああぁぁ…っ」
「俺に感じてくれれば…、それで…」
 蒼空自身がゆっくりとさくらの中へ――。
「ああぁぁ…んんん――」
「……さくらとひとつになれれば…」
 心も躰もひとつに。
「愛してる、さくら」
 蒼空の唇が優しくさくらの唇に重ねられた。
「ん……っ」
 今、さくらの中にいるのは世界で一番愛しい人。千年の時を旅して、さくらを見つけてくれた奇跡の人。
「だから泣くことはない…。もっともっと俺が教えてやる…」
 ただただ愛する想いを伝え合う交わりをな…、と囁いて、ゆっくりと波間を漂う船のように蒼空は動き出した。
「あぁ…、蒼空…っ」
 蒼空の言葉が嬉しくて。
 蒼空の何もかもが大好きで。
 蒼空とひとつに繋がっていることが幸せで。
 愛しくて愛しくて愛しくて――。
「……おしえて…、蒼空…ッ」
 さくらは蒼空の首に両手を巻きつけ、引き寄せ、くちづけた。唇をぶつける勢いで激しく激しく蒼空の唇を求めれば、蒼空ももさくらを求めて舌を絡める。
 深く深くくちづけて。
 深く深く繋がり合って。
 千年前に叶えられなかった想いを、千年分の想いをぶつけ合う。
「なにを…知りたい…?」
 蒼空は乳房の柔らかな感触を弄び、首筋に唇を這わせながら優しい抽送を繰り返す。ふわふわと快感の海を漂わされて、さくらは愛の真ん中誘い込まれていく。蒼空に余計な言葉はなく、ただただ触れて揺れているだけの手が唇が舌が蒼空自身が、愛している愛していると囁いてくれているようで。
「あ…んぁ、あぁあぁぁ…、んぁ…、そらぁ…っ」
 白く痺れてゆくさくらの頭の中には、翔流と過ごした愛しい日々の情景が浮かんでいた。ひだまりのような毎日の中で、少しずつ少しずつ想いを育て気づいた時には愛が止まらなくなっていた。
 息をすると同じぐらい自然に愛し合って伝え合って、そして離れ離れになった…。
 さくらに生まれて初めての愛を教えてくれた人。さくらを愛してくれた人。生まれ変わって、千年も旅をして、ちゃんと見つけてくれた――、
「蒼空が…、翔流が…、好きすぎてつらいの…っ。どうしたら…いいの…?」
 ぽろぽろと涙が自然と零れて来て。
「さくら……っ」
 蒼空のくちづけが雨のようにさくらにに降り注いだ。
「ああ…、さくら…、さくら……っ」
 何度重ねても足りない。どうすれば満たされるのか分からない。穏やかに繰り返されていた抽送がだんだんと激しくなっていく。
「ああぁぁ…ッ、んぁぁ…ッああぁぁぁ――」
 蒼空の汗が飛び散る。
 たくましい蒼空の匂いは、抱き上げてくれた、額をこつんと合わせた、抱きしめてくれた翔流と同じ。
「あぁぁ……、かけ……る……っ」
「さくら―――ッ」
 昇りつめてゆく途中でさくらが見たのは、長い黒髪をひとつに結んだ翔流。さくらの中にいて、さくらを揺らしているのは蒼空に重なる翔流。
「ん…あぁぁ…か…け……るっ」
「さくら……!」
「あぁぁ…ッあぁぁん…、ああぁぁ……――」
 さくらが高く細く甘い声を嬌げて白い躰を震わせたとき、千年越しの愛の人は一気にさくらの最奥を突いてその動きを止めた。
「受け入れてくれ…さくら。千年のッ」

 ――愛。

「――あぁぁ、……好き…よ…っ、大好き―――!」
 せつない甘声がさくらから零れ、翔流の、蒼空の愛が灼熱の中で弾けていった。








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